スーパーマーケット業界の現状・今後の動向について

このページのまとめ

  • スーパーは扱う商材によって目標とする利益率が違う
  • 市場規模は、ここ数年約13兆円の前後を推移している
  • 顧客ニーズの変化に、誠実に対応することが重要

本記事の執筆者

渡貫 久(わたぬき・ひさし)

中小企業診断士として、経営全般の相談や中長期経営計画の策定支援を専門分野として経営支援を行っています。特に、食料品小売業の経験が長いことから、食品系のマーケティング・販売促進・販路開拓・商品開発を得意分野としています。チェーンストア在職中には4年間、人事採用担当を経験しています。

 

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スーパーマーケット業界の種類について

スーパーマーケット業界には、食品を中心に販売する食料品スーパーマーケットのほかに、食品に加えて衣料品などの日常生活で必要なもの全般を取り扱うGMS(※)があります。食料品スーパーマーケットの中には小型のスーパーマーケットであるミニスーパーや、品揃えにこだわった高級スーパーなどもあります。そのほか、低価格で商品を販売するディスカウントストアや、お客様のご自宅まで商品をお届けする宅配スーパーなどを含めたものが、主要なスーパーマーケットの業態となります。

※GMS
“ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア”の略称。総合スーパーマーケットで、日用品、食品、衣類、雑貨など幅広い商材を販売している小売業態のこと。

就職先として考えた場合、それぞれ店舗の規模や取扱商品が異なりますので、業態の違いをしっかりと意識して業界研究を行うと良いでしょう。一消費者として、いつでも生の職場を見学できるのがスーパーマーケットの特徴でもあります。どのような施設で、どのような売場で、どのような商品が、どのような方法で販売されているのか、また、どのような人が働いているのか、などを調べてみると、就職活動の参考になります。

 

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スーパーマーケット業界の利益構造

どの業態も商品を仕入れ、仕入れ値を原価とし、原価に見込みの利益を乗せた「売価」で商品を販売することで収益を得ています。取り扱う商品やカテゴリーにより、見込まれる利益=利益率が異なるので、取り扱い商品の構成比によって収益モデルは異なります。

例えば、青果部門は比較的利益率は低く設定されますが、加工度の高い鮮魚部門や精肉部門、惣菜部門の利益率は高く設定されています。

出所:統計・データでみるスーパーマーケット

しかし、鮮魚部門や惣菜部門は当然ながら加工するための人件費が多く必要となるので、利益率が高ければ必ずもうかるというわけではありません。これら加工を行う部門については、適切な原価管理と人件費管理、売価設定などが収益を確保するポイントになります。

また、衣料品などの非食品部門は利益率を高く設定していますが、バーゲンや特売などで安売りをすれば収益は低くなります。先ほどの鮮魚部門や惣菜部門なども、売れ残って値引き販売や廃棄処分してしまえばロスになり、最終的な利益は少なくなります。

利益率の高い部門と低い部門、人件費が多い部門と少ない部門、ロスの多い部門と少ない部門などを効果的に組み合わせ、集客と利益を両立させるのが収益を上げるポイントです。

「値入率(ねいれりつ)」という言葉を覚えておいたら良いと思います。値入という言葉そのものは、「商品の販売価格を決める」という意味になり、値入率は「あるべき売上」に対する「あるべき利益の割合」になります。売上100円に対して、80円が原価であれば20円が利益になりますから、「値入率は20%」ということになります。ただし、実際の商売ではこの通りにならず商品が売れずに値引きしたり、廃棄したり、つまりは「ロス」が発生することになります。そうなると「あるべき売上」「あるべき利益」よりも、「本当の売上」「本当の利益」は少なくなります。「あるべき利益」の割合である「値入率」に対して、「本当の利益」の割合を「荒利(粗利)率(あらりりつ)」と言います。「値入率」という言葉は、小売業では頻繁に使いますので、覚えていて損はないでしょう。

 

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スーパーマーケット業界の現況について

日本全体が少子高齢社会に突入したことから、市場に対しては「人口減少により激化する競争への対応」「今後も増加する高齢者への対応」が大きな課題になることは間違いないでしょう。

また、店舗運営については、「働き手が減少する中での人材の確保」が大きな課題となります。これらは、どこの業界でも共通するテーマになりますが、スーパーマーケットという、消費者が直接利用するうえに利用頻度が高く、また、店舗運営に多くの人手がかかる業界特性から考えると、ほかの業界よりもインパクトが大きく、対応が急務になります。就職活動を行ううえでは、就職先として検討している企業が「これらの課題にしっかりと対応できているか」という視点でも見てみると良いでしょう。

スーパーマーケット業界について、いろいろと業界研究する際に活用できるWebサイトとしては、業界団体が公表している「統計・データでみるスーパーマーケット」というホームページがあります。全国の食品スーパーマーケットや総合スーパーマーケットから収集したデータが集計され、公表されていますので、信頼性も高く、データの内容も詳細です。就職先として、スーパーマーケットの中でもどのような業種を選ぶのか、また、部門の特性はどうなのかなど、さまざまな視点で参考になると思います。

 

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スーパーマーケット業界の今後の動向について

小売業の動向を見てみると、この数年にわたって百貨店などの市場規模が大幅に減少しているのに対して、スーパーマーケット市場は一定の規模を維持しています。経済産業省の商業動態統計によると、百貨店の売上高は平成3年の約12兆円をピークに、平成29年には約6兆5千億円まで激減していますが、スーパーマーケットについては年度ごとの波はあるものの、約13兆円の前後をキープしています。

出所:経済産業省 - 百貨店・スーパー商品別販売額及び前年(度、同期、同月)比

また、スーパーマーケットの商品販売額の内訳を見ると、衣料品については減少傾向ですが、飲食料品については緩やかに増加を続けており、衣料品なども扱う総合スーパーマーケットよりも、飲食品を主に扱う食品スーパーマーケットは比較的安定した業界と言えるでしょう。しかし日本の人口が減少する中で、同業他社との競争が厳しくなることは間違いありません。

 

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スーパーマーケット業界の脅威と対策

スーパーマーケット業界全体としては、前述した課題の時にも書いた「人口減少」「高齢化」が最大の脅威になります。ライバルとの競争に勝つためのアクションに取り組むことが重要になりますが、今後は具体的に「社会環境の変化にどのように適応していくか」ということを戦略や戦術に落とし込むことが必要になるでしょう。

現状、人口が減少していながらも世帯数は増加傾向にあります。これは世帯を構成する人数が減少しているということになりますが、当然、世帯当たりで購入する量は少なくなってきます。高齢者の方と言っても「健康な方」「健康に問題のある方」「仕事をしている方」「仕事をしていない方」「独り暮らし」など、多様なライフスタイルの方が存在します。

これらの社会環境の変化を見据えながら、「適切な量で購入できる」「適切な形態で購入できる」「適切なタイミングで購入できる」「適切な品質のものを購入できる」「適切な情報を得ることができる」といった基本的な顧客ニーズに誠実に応えること、それを実現可能な戦略や戦術に落とし込むことが求められるでしょう。

また、拡大を続けているインターネットを中心とした通信販売が大きな脅威になることは間違いありません。企業自身がネット通販などに参入する方法もありますが、ネット通販などではなかなか利用し難い生鮮品や惣菜に力を入れること、そして料理提案や接客などにも力を入れ、「実際にその店に行きたい」と思っていただける店づくりも求められるでしょう。

これらは「できて当然」のことでありますが、実際にはなかなかできないことでもあります。社会の変化に適切に、そして誠実にお応えする。就職先選びには、それができる企業かどうかを見極めることも大切です。

 

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本記事の監修者

淺田真奈(あさだまな)

大学時代は接客のアルバイトを3つかけもちし、接客コンテストで全店1位になった経験をもつ。新卒では地方創生系の会社に入社をし、スイーツ専門店の立ち上げからマネジメントを経験。その後、レバレジーズへ中途入社。現在はキャリアチケットのアドバイザーとして、学生のキャリア支援で学生満足度年間1位と事業部のベストセールスを受賞し、リーダーとしてメンバーのマネジメントを行っている。

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