プラント業界の現況・今後の動向について

このページのまとめ

  • プラント業界は各種のプラント(工場設備)の建設に関わる企業
  • 最近ではプラントオーナーがデジタル化を進めており、業界では効率化への対応が急務
  • 日本国内のプラント需要はさほど大きくなく、今後の市場の中心は海外
  • ITやAIに強い人材の確保が業界の課題の1つ
 

本記事の執筆者

宗 敦司(そう・あつじ)

2001年よりプラント・エンジニアリング業界専門誌「エンジニアリング・ビジネス(EnB)」編集長。「原発プラントは儲からない」を電子書籍にて出版。週刊エコノミスト等経済誌等にもプラント業界関連記事を提供している。

 

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プラント業界とは

プラント業界は、発電や石油精製、石油化学、製鉄、都市ごみ処理・清掃工場など各種のプラント(工場設備)の建設にかかわる企業です。

エンジニアリング会社や各種機械メーカー、機器の計測やコントロール機器を扱う計装制御メーカー、土木建設を行なうゼネコン、プロジェクトを組成する商社、建設工事やメンテナンス工事を手がける工事会社など非常に幅の広い業種がプラント建設に関わっています。

まずエンジニアリング会社は、プラントの設計(Engineering)、機器や資材の調達(Procurement)、建設(Construction)のいわゆる「EPC」を手がける会社です。プラントオーナーからプラントの仕様を与えられ、それに適合したプラントを予定通りのスケジュールやコストで建設する、プロジェクト・マネジメント能力が重要となる企業 です。


なかでも専業大手と呼ばれる3社(日揮、千代田化工建設、東洋エンジニアリング)は、海外プロジェクトの受注が6~8割となっており、Shellなどのオイルメジャーや、産油国の国営企業などが大きな顧客です。これらの顧客は、石油価格の動向や製品の需給バランスを見てプロジェクト実施を決定するので、石油価格がプラント受注量に影響してきます。

機械メーカーでも三菱重工業やIHIなど大手の各種メーカーは、発電や製鉄機械、都市ごみ処理設備などでEPCを手がけています。一方コンプレッサー(空気圧縮機)やポンプ、計装制御などのメーカーは、エンジニアリング会社や、時にはプラントオーナー(発注者)から直接注文を受けて機器を製造・納入します。ゼネコンは建設工事をメインにしていますが、国内の医薬品工場などでEPCを手掛ける部門もあります。


商社はプラント建設プロジェクトの各種手続き業務を担当するほか、最近では自ら国内外で事業出資者となってプロジェクトを構築し、事業収益を得るということも増えてきました。
 

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プラント業界の現状

一般社団法人エンジニアリング協会がまとめている「エンジニアリング産業の実態と動向(エンジニアリング白書)」の2018年版によると、業界全体の年間受注額は約16兆円、このうち国内が約14兆円。海外が約2兆円の見通しとなっています。
また、2017年の実績としては、以下のグラフのとおりです。
 

国内受注額にはゼネコンのビル建設や土木工事などプラントと直接関係ない受注額が含まれており、その分を差し引くと国内プラント受注額は約5兆円規模となります。この水準は過去数年、あまり変化していません。


海外のプラント建設プロジェクトについては、上記の他に日本機械輸出組合による海外プラント・エンジニアリング(PE)成約実績調査があり、2017年度の海外受注は約141億ドルの規模。2010~2014年度は200億ドルを超えていたので、今はやや減少していますが、エネルギー価格値上げに伴う新規大型投資が期待され今後は再び受注拡大が期待されています。

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自然災害などの教訓を生かしデジタル化が進む

最近のプラント業界では、特にアメリカのプロジェクトで損失が相次いでいます。ハリケーンや長雨などにより工期が遅れたことのほか、アメリカの技術労働者の不足と給与の高騰によるコスト増加が主な要因となっています。しかし今後は、経験を活かし労働者の確保の仕方や効率的な工法の導入などをしていくことで、こうした損失も出なくなっていくでしょう。

また、最近ではプラントオーナーが運転・保守のデジタル化を進めており、エンジニアリング会社に対しても設計データの提供を要求しているほか、プロジェクトの効率的な遂行への要求が高まっており、これらへの対応が急務となっています。
 

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海外を中心にプラント業界の需要は高まる

現在、国内のプラント建設需要はさほど大きくありません。国内では電力関連や都市ごみ処理設備、医薬品製造工場、特殊化学品などに限定されます。今後も日本国内のプラント需要は大きくならないと見られており、今後の中心市場はやはり海外 です。

当面、アメリカの安いガスを原料とした化学プラントや、液化天然ガス(LNG)プラントなどの需要は続くと見られています。一方アジアや中東地域では、経済の向上に伴って電力プラントや鉄道などの交通システムの需要があります。また国際エネルギー機関(IEA)の予測からも石油やガスなどのエネルギー需要は今後も拡大が見込まれるため、石油精製、石油化学、LNG関連などの分野でプラント建設需要が見込めます。

しかしアジアや中東では韓国や中国といった、コストの安いエンジニアリング会社と競合するようになっており、受注が厳しくなっています。そのため、品質重視の顧客による、国際競争入札にならない特命プロジェクトをより多く取り込んで行く必要があります。

幸い、オイルメジャーは日本のエンジニアリング会社を高く評価しており、韓国や中国と競争させることはしていませんので、こうした顧客をより増やしてこうとしています。

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業界の垣根を超えた展開を

プラント業界もプラント建設だけの業界から脱しようとして色々な取り組みをしています。例えば水素サプライチェーンの構築、再生可能エネルギーへの事業投資、さらにはプラントの運営・メンテナンス支援サービス事業の拡大などです。

特にプラント運転支援では、AI(人工知能)を取り込んで、プラント運転のビッグデータから、最適なプラント制御を導き出すほか、最適なタイミングでのメンテナンス、部品の交換時期の特定、プラントの事故やトラブルを未然に防止する予防保全などのサービス提供も開始されています。

デジタルトランスフォーメーション(※)は、エンジニアリング業務にも適用されつつあり、業務の効率化や、より早い段階でのリスク把握などリスク低減の試みも始まってきました。

海外プラント建設プロジェクトは、案件によっては1兆円を超える大規模なものもあります。このような巨大プロジェクトでは1%の赤字でも100億円の損失となります。このリスクをすべて1つの会社で請負うことは、会社の存続にも関ります。従って巨大プロジェクトでは海外の有力なエンジニアリング会社との協業がこれまでより重要となってきます。

また高度デジタル化への対応も不可欠となっています。プラント設計データを、運転に活用するために必要な標準化も進められています。これらへの対応も今後の課題で、設計だけでなく、ITやAIに強い人材をいかに確保していけるかは、今後の業界の課題の一つ といえるでしょう。

※デジタルトランスフォーメーション
新しいデジタル技術を活用することによって、新たな価値を生み出していくこと

 

 

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本記事の監修者

淺田真奈(あさだまな)

大学時代は接客のアルバイトを3つかけもちし、接客コンテストで全店1位になった経験をもつ。新卒では地方創生系の会社に入社をし、スイーツ専門店の立ち上げからマネジメントを経験。その後、レバレジーズへ中途入社。現在はキャリアチケットのアドバイザーとして、学生のキャリア支援で学生満足度年間1位と事業部のベストセールスを受賞し、リーダーとしてメンバーのマネジメントを行っている。

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