ラジオ業界は厳しい?現状とデジタル化による今後の動向について

このページのまとめ

  • ラジオ業界は、CM枠を広告主に買ってもらうのが基本の収益構造
  • 市場規模は、ピークだった1991年(2,406億円)のおよそ半分程度にまで落ち込んでいる
  • ここから右肩上がりになることは難しく、ゆっくりと衰退していくと予想される

ラジオ業界は厳しい?現状とデジタル化による今後の動向についてのイメージ

本記事の執筆者

田野幸伸(たの・ゆきのぶ)

LINE株式会社 BLOGOS編集長/ラジオディレクター/ファイナンシャルプランナー
1977年東京生まれ 明治大学政治経済学部経済学科卒

「ラジオ業界について詳しく知りたいけど、どこから手をつければいいのかわからない」「ラジオ局で働くために必要なスキルや知識は何だろう?」といった悩みを持つ方も多いでしょう。この記事では、ラジオ業界の現状や職種、求められるスキル、そして今後の動向について詳しく解説します。

この記事を読めば「ラジオ業界の基礎知識」「ラジオ局の種類と役割」「求められる人材像」「業界の現況と未来予測」などがわかります。ラジオ業界でのキャリアを具体的にイメージできるようになりますので、ぜひ参考にしてください。

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目 次

ラジオ業界とは?

リスナー(聴取者)に向け、音楽やパーソナリティの軽快なおしゃべりなど、耳で楽しめるコンテンツを発信しているのがラジオです。この数年で、インターネットでラジオが聞けるWEBサービスやアプリ(民放が運営する『radiko/ラジコ』や、NHKが運営する『らじる☆らじる』など)が登場。Amazon EchoやGoogle Homeといったスマートスピーカーからも聴けるようになるなど、時代の波に乗って変化しているラジオ業界について紹介します。

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ラジオ局の種類と役割

ラジオ局は大きく分けてキー局とローカル局の二つに分類され、それぞれ異なる役割と特徴を持っています。以下で詳しく解説します。

キー局

キー局は、ネットワーク系列の中核を成す放送局を指します。自社制作の番組を全国の系列局に配信し、幅広いリスナー層に多様なコンテンツを提供しています。キー局は番組制作の中心的な役割を担い、スポンサー広告料の分配管理も行います。

一般的に、高学歴や専門的なスキルを持つ人材を求めており、就職難易度は非常に高いといわれています。

ローカル局

ローカル局は、キー局から番組を受け取りつつ、地域に特化した独自の番組制作や報道活動も行う放送局です。地域に密着した情報やエンターテインメントを提供することで、地域のリスナーとの距離を縮める役割を果たしています。

ローカル局は、地元での就職を希望する学生にとって魅力的な選択肢です。キー局ほどの競争はありませんが、就職には依然として十分な準備と努力が必要です。地元や特定の地域での就職を希望する学生には、ローカル局への就職が適しているでしょう。

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ラジオ業界の業態

ラジオ業界は、多様な職種と業務が組み合わさることで成り立っています。以下では、ラジオ業界の内部構造と現場での具体的な職種について解説します。

放送局の内部構造

放送局は、その役割ごとにさまざまな部署に分かれています。

主な部署には、広告主にCMを販売する営業部、番組編成を担当する編成部、ニュースを扱う報道部、番組制作を行う制作部、スポーツ番組を管理するスポーツ部、電波を発信し中継車を運用する技術部、デジタル配信や番組ホームページを管理するデジタルコンテンツ部(名称は各局で異なる)、そして番組イベントを手がけるイベント部などがあります。

都市部以外では、ラジオとテレビの兼営局が多く、異動によりラジオの仕事だけでなくテレビの仕事も担当することがあります。

番組制作の現場

番組制作は主に制作会社やフリーのディレクターによって行われます。

社員はプロデューサー(P)として参加することが多いです。通常、番組はディレクター(D)、音声を調整するミキサー(MIX)、台本を書く放送作家、アシスタントディレクター(AD)、そしてパーソナリティの5名体制で制作されます。

しかし、予算削減の影響でADがいなかったり、ディレクターが台本を作成したりすることも。また、録音番組や地方局ではミキサーがいない場合もあります。

ラジオ業界の収益モデル

ラジオ業界の基本的なビジネスモデルは、CM枠を広告主に販売することです。最近では、放送外収入の強化が急務となっており、イベントの開催や番組グッズの販売、ラジオショッピングにも力を入れています。多様な収益源を確保することで、安定した運営を目指しています。

ラジオ業界では、これらの多様な職種が連携し合い、魅力的な番組制作と情報提供を行っています。各職種はそれぞれの専門性を活かしながら、リスナーに価値あるコンテンツを届けるために尽力しているといえるでしょう。

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ラジオ業界で求められる人材とは

ラジオ業界は、創造性やコミュニケーション能力などが求められる仕事であり、向き不向きがはっきり分かれる業界です。ここでは、ラジオ業界で求められる人材の特徴について解説します。

高いコミュニケーション能力

ラジオ業界では、言葉を通じて情報を伝えることが中心となるため、リスナーに響く言葉選びや表現力が非常に重要です。リスナーが番組に引き込まれるかどうかは、言葉の使い方次第です。

また、番組制作はチームで行うことが多く、プロデューサー、ディレクター、パーソナリティなど多くのスタッフと協力して一つの番組を作り上げます。そのため、社内の人たちと円滑にコミュニケーションを取る能力は必要不可欠でしょう。

柔軟性と適応力

ラジオ業界は、急速に進むデジタル化やリスナーの嗜好の変化に対応しながら、常に新しいコンテンツを提供する必要があります。視聴者のニーズは日々変わっていくため、新しいトレンドに敏感で、常に学び続ける姿勢が求められます。

固定されたやり方に固執せず、柔軟に対応できる人が活躍しやすい環境。さまざまな状況に迅速に対応し、新しいアイデアを積極的に取り入れることが重要です。

創造性とアイデア力

ラジオ業界では、斬新な番組企画やコンテンツの制作が求められます。リスナーを引きつけ、楽しませることができるクリエイティブな発想が必要です。リスナーの興味を引くためには、他のメディアにはない独自の視点や新しいアイデアを形にする能力が求められます。

クリエイティブなアイデアを持ち、それを具体的な形にする力がある人は、ラジオ業界で大いに活躍できるでしょう。

ストレス耐性と冷静さ

ラジオ業界では、緊急ニュースの対応や生放送中のトラブルなど、予期せぬ状況に直面することがよくあります。そうした状況においても、冷静かつ迅速に対応する能力が求められます。ストレスの多い環境でも冷静に判断し、行動できることが必須です。

特に、生放送中のアクシデントに対応する際には、パニックにならずに冷静に対処する力が求められます。番組制作においても、スケジュールの遅延や予算の変更などに柔軟に対応できる忍耐力が重要です。

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ラジオ業界の現状

ラジオは聴取率の低下が止まらず、国民の「ラジオ離れ」が進んでいます。NHKの「テレビ・ラジオ視聴(リアルタイム)の現況」によると、ラジオ全局における週間接触率は33%を記録しており、1週間においてラジオを聞く人の割合も下方傾向にあります。

また、年齢別でみると、13〜19歳は16~20%、20代は12%に対して、30代は20%前後、40代は25~30%前後、50代は男女ともに30%以上、60代は43~52%以上と、年齢層が高いユーザーによって支えられているメディアというのが現状です。

参照元
NKH放送文化研究所
テレビ・ラジオ視聴(リアルタイム)の現況

電通の「2018 年 日本の広告費」によると、ラジオ広告費はここ数年横ばいをキープしているものの、2018年は1,278億円。「外食・各種サービス」が前年に続き減少したことを受け、3年ぶりにマイナス水準となりました。この金額は、ピークだった1991年(2,406億円)のおよそ半分程度にまで落ち込んでいます。

パソコンやスマートフォンでもラジオが聞けるようになりましたが、radikoのユーザー数も5年以上伸び悩んでいます。radikoの有料会員は増えているものの、リーマンショック以降、現場からは明るい話題を聞いたことがありません。これは新聞や雑誌なども含めたレガシーメディア全般に言えることです。

参照元
電通
日本の広告費

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ラジオ業界の今後の動向

ラジオ業界は、近年広告費の下げ止まりが見られるものの、今後の右肩上がりの成長は期待しにくい状況です。ローカル情報の発信源として一定の需要はあるものの、メインユーザーの高齢化が進むにつれて、徐々に衰退していく可能性があります。

特に注目されるのは、2019年3月に民放連が総務省に求めたAMラジオ放送の廃止とFMへの一本化です。これは、営業収入の大幅な減少と、放送設備の維持・更新が困難な状況を背景にしています。この制度改正が実現すれば、2028年度までに民放のAM放送が消滅する可能性が高くなります。

一方で、ラジオが生き残るための新たな手段として、Amazon EchoやGoogle Homeといったスマートスピーカーを活用した音声コンテンツの展開が考えられます。現在でもスマートスピーカーで聴くことができ、これにより新規リスナーの開拓が期待されています。

スマートスピーカーの普及とともに、ラジオ業界がデジタル化に対応し、新たなコンテンツやサービスを提供することで、再び注目を集めることができるかもしれません。

このように、ラジオ業界は今後、従来の放送形態に依存せず、新しい技術やデバイスを活用して進化していくことが求められています。新たなリスナー層の獲得と、時代に合ったコンテンツの提供が鍵となるでしょう。

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インターネット社会においてラジオ業界が今後取っていく戦略

インターネットの普及により、競合コンテンツが増えすぎたラジオ。1日24時間しかない中で、「リアルタイムで放送するから番組の時間に合わせて聞く」というスタイルは限界が来ています。

過去放送が聞けるサービスもありますが、期間は過去1週間のみ。検索したらすぐに欲しいコンテンツを発見できることが当たり前の世代には、不便なメディアとなってしまっています。

一方で災害時の情報発信やマスメディアにはできないローカル放送など、ラジオにしかできない役割もあり、一定の需要は今後もあるでしょう。今後は増えすぎたラジオ局の統廃合が進み、スリムな経営でメディアとしての寿命を延ばしていってくれることを願います。

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ラジオ業界に就職したいあなたへ

ラジオ業界に興味を持ち、「どのようにキャリアをスタートすれば良いのか分からない」と悩んでいる方もいるでしょう。ラジオ業界は、多様な職種やスキルが求められるため、正しい情報を集めて準備することが重要です。

ラジオ業界で興味がある方には、キャリアチケットがおすすめです。キャリアチケットでは、ラジオ業界の最新情報や、必要なスキル、具体的な職種の詳細を丁寧に解説し、あなたのキャリア形成をサポートします。

ラジオ業界で働くためには、業界特有の知識やスキルが必要です。自分一人で悩まずに、プロのアドバイスを活用して、夢に向かって第一歩を踏み出しましょう。

キャリアチケットでは無料で相談を受け付けているため、ラジオ業界でのキャリアを目指す方は、ぜひキャリアチケットに相談してください。

番組制作会社については「番組制作会社はきついって本当?仕事内容や向いている人の特徴を解説」も参考にしてください。

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本記事の監修者

淺田真奈(あさだまな)

大学時代は接客のアルバイトを3つかけもちし、接客コンテストで全店1位になった経験をもつ。新卒では地方創生系の会社に入社をし、スイーツ専門店の立ち上げからマネジメントを経験。その後、レバレジーズへ中途入社。現在はキャリアチケットのアドバイザーとして、学生のキャリア支援で学生満足度年間1位と事業部のベストセールスを受賞し、リーダーとしてメンバーのマネジメントを行っている。

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