テーマパーク業界の現況・今後の動向について

このページのまとめ

  • テーマパーク業界の市場規模は伸びている
  • 大型テーマパーク、地方遊園地ともに業績は安定しているといえる
  • 大型テーマパークの伸長、インバウンド需要で今後も業績は上向いていく

本記事の執筆者

清水群(しみず・ぐん)

株式会社スマイルガーディアン代表取締役。テーマパークコンサルタント株式会社オリエンタルランド、株式会社ユー・エス・ジェイという日本の2大テーマパークをそれぞれ運営している企業で10年間、接客や機械メンテナンス、部品設計、安全管理、各部署の業務改善などを担当。中小企業診断士を取得後に独立、テーマパークや遊園地のコンサルテーションだけでなく、大阪市トップランナー事業コーディネータとして中小企業のハンズオン支援などを実施している。

 

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テーマパーク業界の構造と収益源

テーマパーク業界の業態は、大きく以下の3つに分類されます。

A)年間の集客が1,000万人以上の大型テーマパーク
B)集客が数十万人から100万人規模の遊園地
C)遊園地の中でも宿泊施設やアウトレットモールなど併設している遊園地

さらにB)の業態は遊園地をメイン事業としている企業の遊園地だけでなく、電鉄会社もしくはその子会社がサブ事業として運営している遊園地があります。

テーマパークや遊園地の収益源は、入場料、アトラクションの乗り物券、物販、飲食が大半を占めます。各テーマパーク、遊園地によって比率は大きく異なりますが、入場料と乗り物券で売上の5割以上、場合によっては8割を占めるところもあります。ここにロッカー代、駐車場代などの細かい売上が加算されます。

 

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統計データから見たテーマパーク業界の現況

経済産業省の特定サービス産業動態統計によると、2000年以降のテーマパーク業界の売上、入場者はおおむね右肩上がりで増加しています。

出所:帝国データバンク

大きく伸びている2001年と2002年に関しては、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンや東京ディズニーシーのオープンの影響が大きく、同じく大きく伸びている2012年以降は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンやよみうりランドのV字回復と関連しています。

大型テーマパーク以外も7割は黒字企業で堅調

では大型テーマパーク以外の地方遊園地などの企業の実態はどうかというと、多くは緩やかに微増もしくは横ばいとなっています。

帝国データバンクの実態調査によれば、2017年は前年比で増収した企業は32.1%だったのに対し、減収した企業は41.2%と減収企業が増収企業を上回ってはいるものの、増収と横ばいを合わせれば約6割の企業が減収を免れているのが分かります。
また、全体の7割以上が黒字です。

このように年によってやや収益に波はありますが、それでもテーマパークは安定的に収益の生み出せるビジネスモデルであると言えるでしょう。

 

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テーマパーク業界が抱える課題

テーマパーク業界の課題としては、以下の2点が挙げられます。

少子高齢化による市場縮小、難しくなっていく従業員確保

テーマパーク業界の課題は、少子高齢化による市場規模縮小です。テーマパークの多くはファミリー層がメインターゲットですが、少子高齢化の進行によりテーマパーク業界が得意とするターゲット層の市場規模が縮小しています。

また、少子高齢化の影響は顧客の減少だけでなく、テーマパークではたらく従業員の確保にも及んでいます。施設拡大に伴う人材確保、とくに学生など若い世代の確保が難しく、人手不足に悩んでいるテーマパークが数多くあります。

地方遊園地は設備投資に経済的制約も

また、大型テーマパークが新アトラクションの増設など積極的に設備投資を行っている一方で、売上が10億円規模程度の地方の遊園地にとって、何億円もの投資が必要なアトラクションを新設することは決して簡単ではありません。これらの遊園地は、このような経済的な制約の中でどのようにリピーターを獲得するかが課題となっています。

 

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テーマパーク業界の今後

業界全体では東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパンのエリア拡張によって業界全体の数字は間違いなく伸びていくはずです。さらに2020年の東京オリンピックや2025年の大阪・関西万博などインバウンド(※)の増加も見込まれるため、しばらくは集客しやすい環境も続くかと思います。

※インバウンド:外国人の訪日旅行のこと。

地方遊園地は、限られた投資の中でいかに効果的なイベントを実施し、地域住民のリピーター化、そしてどれだけのインバウンドを取り込めるかがカギとなるでしょう。

ライバルはテーマパーク以外の無数の「娯楽」

ショッピングモール、スマホなどのゲームといったすべての娯楽はテーマパーク業界のライバルであり、脅威となりえます。最近はVR(バーチャル・リアリティー)を導入するテーマパークも増えてきていますが、いまやVRは自宅やゲームセンターなどでも気軽に体験することができるため、ただ「VRが体験できる」というだけではなく、テーマパークならではの強みを活かす工夫が必要でしょう。

リアルな「人」がいることの強みを活かす

テーマパークはゲームなどと同じく非日常的な世界観を提供する娯楽です。しかしゲームと違うのは、テーマパークには現実空間で従業員という「人」がいるということです。そして、それこそがテーマパークの強みでもあります。

だからこそ、エンターテイメント的なショーやライブ感を重視したイベントなど、「人だから提供できる娯楽」のクオリティの向上がテーマパークには必要であり、そのためにも「人の教育」を強化していくことが今後ますます重要になってくるでしょう。

 

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テーマパーク業界ではたらくことを目指す人へ

テーマパーク業界を目指す人には、テーマパークに遊びに行ったときに、ぜひ働いている従業員の方に声をかけてみてほしいです。

たとえば、従業員に乗り物の場所やお勧めの飲食店などを質問したりしてみましょう。そのとき、従業員がどのような言葉遣いをしているか、身振り手振りはどうか、ほかのサービス業と比較してどのような違いがあるのか、そしてその違いは何を意図しているのか。

これらを正解・不正解関係なく考えてみてほしいです。

 

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本記事の監修者

淺田真奈(あさだまな)

大学時代は接客のアルバイトを3つかけもちし、接客コンテストで全店1位になった経験をもつ。新卒では地方創生系の会社に入社をし、スイーツ専門店の立ち上げからマネジメントを経験。その後、レバレジーズへ中途入社。現在はキャリアチケットのアドバイザーとして、学生のキャリア支援で学生満足度年間1位と事業部のベストセールスを受賞し、リーダーとしてメンバーのマネジメントを行っている。

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