半導体商社業界の現状・今後の動向について

このページのまとめ

  • 半導体商社は、半導体のみを売るのではなく、組込みシステムやEMSなど機能の多角化を進めている
  • ソフトウェア企業やSI企業、商社同士でM&Aを行い、自社の技術力や営業力を強くしている
  • 半導体市場には、ICAC5(IoT、Cloud、AI、Car、5G)が加わり、新たな需要を創造する

本記事の執筆者

西山正茂(にしやま・まさしげ)

電波新聞社入社後、全国の支局勤務を経て現在、編集本部に在籍。これまでの担当分野は家電流通、全国地場企業、家電(AV、白物家電)、住宅設備など。現在は半導体・半導体商社、FA・製造設備、電気・電子計測など取材範囲は多岐にわたる。日本国内のみならず海外取材も多い。

半導体商社業界とは

「半導体メーカーと電気・電子機器メーカーの中間商流を担う」半導体はさまざまな電気・電子機器に用いられ、かつてのアナログと呼ばれた時代からデジタル社会への転換をもたらしました。私たちの暮らしや産業も、今や半導体によって便利さと豊かさを享受していると言っても過言ではありません。

半導体商社は、半導体メーカーから半導体製品を仕入れて電気・電子機器メーカーに販売する中間商流の役割を担っています。

半導体は用途によってさまざまな種類があり、電気・電子機器メーカーにとっては、1社の半導体商社に発注すれば、複数メーカーの半導体製品がそろう便利さがあります。

半導体商社は、かつては半導体製品や電子部品のみを扱っていましたが、半導体の単価が下がったことで半導体単品ビジネスでは成長が望めないことから、事業の多角化や扱い製品の拡大、さらには中間商流から機能を拡大してきました。最近は「組込みシステム(Embedded System)」と呼ばれる半導体とソフトウエアを組み合せてシステムで販売したり、電気・電子機器メーカーの生産を受託する「EMS(Electronics Manufacturing Service)」事業、さらには生産に用いる工場設備や産業用ロボットの販売など、機能の多角化が進んでいます。

また中国や東南アジア、更には欧米にも営業拠点を設けて事業のグローバル化を進める商社も増え、日系の海外進出企業のみならず、現地ローカル企業に向けたビジネスの拡大に取り組んでいます。
こうした商社機能の拡大の伴ない半導体商社を「エレクトロニクス商社」と呼称するケースも増えています。

半導体商社の現状

2014年から2016年にかけて半導体メーカーのM&A(合併・買収)が進みました。
NXP、Avago、Freescale、Linear、Freescale、Linearなど世界の半導体大手がM&Aを積極的に行い、この流れは現在も続いています。M&Aにより、企業規模を拡大し、グローバル市場での競争力を高める狙いがあります。

半導体メーカーのM&Aを受け半導体商社も経営統合に乗り出し、日本ではマクニカと富士エレクトロニクスが2015年4月に経営統合して「マクニカ・富士エレホールディングス」を設立。UKCホールディングスと加賀電子の統合も持ち上がりましたが、最終的な合意には至らず、UKCはバイテックホールディングスと経営統合し2019年4月から新会社「レスターエレクトロニクス」を立ち上げます。

半導体商社間に加えて、それぞれの商社はソフトウエア企業やSI(システムインテグレーター)ベンチャー企業など、自社の技術力や営業力を強化するためのM&Aを続けている現状にあります。

日本の半導体メーカーは家電製品全盛のころにはシステムLSIなどで優位性を発揮してきましたが、パソコン、携帯電話はじめデジタル製品普及に伴ってコスト競争力を失い、現在では世界ベスト15に入るのは東芝メモリー1社という状況です。

半導体商社のシェアは、世界では1位アロー・エレクトロニクス(米、年間売上高約3兆円、)2位アヴネット(米、年間売上高約2兆円、)3位WPG(台湾、年間売上高約2兆円、)と続きます。

これに対して日本の上場半導体商社の2018年3月期売上高では1位マクニカ・富士エレホールディングスが約5,040億円、2位丸文3,480億円、3位UKCホールディングス3,014億円と続き、以下は3,000億円台、特に2,000-1,000億円に集中しているのが特徴です。

上場半導体商社23社の売上高は電波新聞社調べで約4兆3,000億円(2018年3月期実績)。2018年3月期は為替も安定して推移したことから一部を除いて増収増益を計上し、中には過去最高業績を更新した商社もありました。

2019年3月期は中国経済の減速の影響を受け減収減益見通しの商社が大半を占めています。

※電波新聞社調べ

半導体商社最近の動き

半導体商社の近年の動きを、事業多角事例を下にみていきましょう。

事業多角化事例1(自動車関連)

半導体商社は成長分野への取組みとして、自動運転など自動車の電子化に伴うオートモーティブ分野に成長の軸足を移しながら、車載向け新規商材の発掘や先進のアプリケーションの提案に力を入れています。
たとえば最大手のマクニカは、成長を加速する新たな取り組みとして自動運転、AI、IoT分野を強化し、自動運転プラットフォーム搭載実証車両「MacniCar」の販売から、自動運転システムキット、センサー、ソフトウェアまで自動走行向けトータルソリューションの提供に取り組んでいます。

また丸文は車載強化の一環として、海外製車載向け高性能マイクロコントローラーの販売を開始。菱電商事は、車載OSを手掛けるべンチャー企業に出資するといった動きも見られます。

事業多角化事例2(EMS/Electronics Manufacturing Service=電子機器の受託生産)

消費者のニーズは多様化し、商品のライフサイクルも短くなっています。たとえばスマートフォンでも春夏秋冬に新モデルが発売されています。このため製造業では、生産を急速に立ち上げる必要性が高まり、新たな設備投資を抑えるため、EMSを活用するケースが増えています。製造業におけるEMSの役割はますます重要に重要になってきています。

半導体商社も半導体ビジネスの延長線上でEMS事業に乗りだしています。
加賀電子、UKCホールディングス、東京エレクトロンデバイス、飯田通商(未上場)などがこの事業に取り組んでいます。加賀電子の場合、中国、東南アジア、東欧、南米など世界各地に工場を設け、売り上げの約3割をEMS事業で占めるまでになっています。

事業多角化事例3(産業用ロボット)

人手不足や工場自動化(スマート工場化)を背景に産業用ロボットの需要が広がる中で、半導体商社も新規商材の一つとして同ロボットの扱いを始めています。

菱電商事、立花エレテック、カナデンと言った半導体商社はFA(ファクトリーオートメーション)機器を扱っていますが、その一環で産業用ロボットを扱い、販売実績を伸ばしつつあります。

たとえばカナデンの場合、タイに合弁のエンジニアリング会社を設立し、タイを中心にASEAN市場で、産業用ロボット事業を拡大しています。

半導体商社業界の今後

半導体商社は、中間商流にあって顧客である製造メーカーなどには便利な存在であることは今後も変わりはありません。
半導体メーカーは「商権(販売する権利)」を商社の実績に応じて、他社に変更することもドラスティックに行います。突然売り上げが数100億円単位で変動することもしばしばです。

ネット販売も今後ますます増えてきており、中間商流の存在に対する議論も出始めています。「半導体単品の販売だけでは生き残れない」という点で半導体各社経営トップの考えは一致しています。

経営統合、事業のグローバル化、成長分野に向けた新規商材の発掘と拡充、EMS事業の拡大、IoTやAIを踏まえた技術力の強化など、さまざまな課題をどのように対応していくかがこれからの市場競争に勝ち残るカギと言えます。

半導体市場はこれまでのパソコンや携帯電話だけのシングルドライバーで引っ張っていた時代から、牽引者にICAC5(IoT、Cloud、AI、Car、5G)が加わり、新たな需要を創造する、と言われています。これらマルチドライバーをどのように自社の経営戦略に取り込むか、各社それぞれに独自性のある取り組みで成長を模索するものと予測されます。

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