半導体業界 の現状・今後の動向について

このページのまとめ

  • 世界の半導体市場規模は3年連続過去最高を更新している
  • IoT、5G、自動運転などの要因で、半導体の需要は拡大していく
  • 日本はIoT、5G、自動運転などに使用されるアナログIC、パワー半導体に強みがある

本記事の執筆者

横井圭子(よこい・けいこ)

エレクトロニクス関連の業界紙「電波新聞」記者。主に半導体や通信分野を担当する。

 

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半導体業界とは

スマートフォン(スマホ)やPC、ゲーム機、テレビなど私たちの身の回りにあるエレクトロニクス製品にはすべて「半導体」が入っています。

半導体とは、本来は物質の電気伝導性を示す性質そのものを指す言葉で、スマホなどに搭載されているのは正しくは「半導体を使った電子回路(半導体デバイス)」です。しかし近年は製品そのものを半導体と呼ぶことが一般的になっています。



半導体には、プロセッサやメモリー、アナログICなど複数の種類があり、PCなどの電子機器がスムーズに動作するための重要な役割を担っています。

たとえば、プロセッサ(CPU)は人間の頭脳に相当し計算処理を行います。メモリーは情報を記憶する役割を果たします。このほか通信用や、電源用、ディスプレイ駆動用、イメージセンサーなど多岐にわたり電子機器の高性能化や小型化、低消費電力化に大きく寄与しています。

米国の半導体関連の調査会社ICインサイツによると、電子機器の製造原価に占める半導体の割合は年々拡大しており、2018年は30%を超えました。

 

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半導体業界の市場規模

米国半導体工業会(SIA)のまとめでは2018年の世界の半導体売上高は前年より約14%増え4688億ドル(約42兆円)と、3年連続過去最高を更新しました。けん引役の1つとされるのがメモリーです。メモリーはDRAM型とNAND型フラッシュメモリーの2つに大別され、どちらもかつては日本のお家芸でしたが、現在は韓国のサムスン電子がシェアトップです。

SIAによれば、メモリーの18年売上高は1580億ドル(約14兆円)で全体の34%を構成。主にスマホやPC、データセンター用サーバーなどのデータ記憶装置として使用されます。メモリーに続く売上げ規模となったのはロジック(理論素子)ICで1,093億ドル、次いでマイクロICの672億ドルでした。

国・地域別で見ると、中国が全体の3割強を占め最大。次いで米州が20%以上のシェアとなっており、日本は9%弱でEUとほぼ同程度となっています。(参考:Semiconductor Industry Associasion/英語サイト)

半導体企業の業態は、設計・開発から製造、販売まで一貫して手がけるIDM(垂直統合型デバイスメーカー)、自社工場を持たず設計・開発に特化したファブレス、IDMやファブレスから製造を受託するファウンドリーがあります。

IDMの代表例としては米国のインテルやサムスンなどが挙げられ、ファブレスとしては通信用半導体の米ブロードコムやクアルコム、ファウンドリーは台湾のTSMC(台積電)が世界シェアの5割を握り圧倒的強さを見せています。

 

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日本の半導体産業の経緯

日本の半導体産業は1980年代に全盛を極め、一時は世界市場における国別シェアで5割を占める勢いを見せました。しかし、1986年に日本製半導体製品のダンピング輸出防止を骨子とする日米半導体協定が締結。1991年には日本市場における外国製半導体のシェアを20%以上に引き上げるという内容がこれに付け加えられました。

日米間の半導体貿易摩擦は96年に終結しましたが、この間、PC需要の伸びに支えられインテルがシェアを拡大。韓国や台湾企業の成長もあり日本企業は徐々に競争力を失っていきました。

以後、国内では総合電機メーカーからの半導体部門の分離独立や合従連衡で業界再編が進展。2010年には三菱電機、日立製作所、NECの半導体事業が統合した半導体専業企業「ルネサスエレクトロニクス」が発足しました。

また1980年代に、NAND型フラッシュメモリーを開発した東芝(社員の升岡富士夫氏が発明)は、紆余曲折を経て2017年にメモリー事業を分社化し、18年には米国の投資会社が主導する日米韓企業連合に売却。

メモリー専業企業として再生した「東芝メモリ」は現在、NAND型フラッシュメモリーでサムスンに次ぐ世界2位の座にあります。またルネサスエレクトロニクスは自動車や産業分野で強さを見せ、車載用マイコンのトップベンダーです。

近年では、国を挙げ半導体産業振興を図る中国企業の台頭も目覚ましく、世界の半導体市場は競争が激化していますが、日本の半導体産業は開発技術者の育成に長期間を要すると言われるアナログやパワー半導体に強みを持っています。これらは自動車の電装化や、IoT(モノのインターネット)の普及、19年以降商用化が本格化する第5世代移動通信システム(5G)の進展などを背景に、今後、堅調な需要の伸びが見込まれています。また、日本は半導体を製造する装置や材料分野でも強みを発揮しています。

 

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半導体産業の今後

半導体の用途といえば、PCなどコンピュータ向けのイメージが強いですが、SIAによれば2017年実績では通信分野が32%で最大です。2007年にアップルの「iPhone」が登場して以来、スマホは半導体市場成長の原動力の1つになっています。

近年は市場の成熟化や、買い替えサイクルの長期化などでスマホ出荷の伸びは減速していますが、高機能化や端末1台当たりに搭載されるメモリー容量の増大で、スマホ向けは今後も堅調な伸びが期待されています。

コンピュータ向けの半導体売上高は全体の30.3%。テレビやデジタルカメラなどコンシューマ(民生)用機器向けが13.6%、ロボットや工作機械など産業用が13.1%。そして電装化が進む自動車向けが11%を占めています。

最近では、あらゆるものがインターネットにつながるIoTの普及とともに、様々な分野で膨大な量のデータを収集、処理、蓄積するための半導体の需要が伸びています。19年以降は、5Gの商用サービスが世界中で始まり、自動運転の実用化も進展すると見られており、生成されるデータ量はますます増大。高性能半導体の需要はさらに拡大すると期待されています。

 

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本記事の監修者

淺田真奈(あさだまな)

大学時代は接客のアルバイトを3つかけもちし、接客コンテストで全店1位になった経験をもつ。新卒では地方創生系の会社に入社をし、スイーツ専門店の立ち上げからマネジメントを経験。その後、レバレジーズへ中途入社。現在はキャリアチケットのアドバイザーとして、学生のキャリア支援で学生満足度年間1位と事業部のベストセールスを受賞し、リーダーとしてメンバーのマネジメントを行っている。

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