このページのまとめ
- 自動車製造業全体の売上は約69兆円規模であり、輸出額は約16兆円
- 自動車業界の中心にいるのは、完成車組み立てメーカー
- 研究からデザイン、実験などの施設を有し、自社工場にて完成車を生産するのがメーカーの特徴
- 他業種とのアライアンス主導や中規模企業優位、モビリティサービスの創出が今後の課題
自動車は1970年代以降、日本の基幹産業としての地歩を固め、50年近くその位置づけを維持しています。自動車産業の主役は自動車本体であり、その製造を主軸にして各種のビジネスが展開されています。
本記事の執筆者
山口 泰幸(やまぐち・たいこう)
概念デザイン研空所主宰、経営コンサルタント、ブランドコンサルタント、概念デザイナー。日産自動車で商品企画・開発・将来車両研究、先行デザインに従事。1996年に独立、概念デザイン研究所設立し、各種企業プロジェクトに参画している。経営から商品・人材開発まで、概念デザイン・メソドロジーを武器に、問題解決力の強化・習得をサポートしている。最新著書『コンセプト・メイキングの作法』
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自動車業界とは?
自動車産業の特徴は、ビジネスをグローバルに展開する巨大産業であることです。また、企業同士のグループ化や提携関係の構築などもグローバルに進められています。その裾野は極めて広く、各種の付帯的産業を創出し、経済への貢献度も高くなっています。国内における自動車製造業全体の売上は約69兆円規模となっており、生産台数は969万台、自動車関連産業(※)での雇用者数は約539万人、輸出額は約16兆円となっています。
自動車は2~3万点もの膨大な部品で成り立つ精密に組み上げられた機械であるということ、また、人間が乗り込んで運転をしながら、自律的に動き回る、といった特別な製品です。さらに、愛着対象として審美的要素も重視されるなど、自動車は数多くの側面から検証・評価される存在です。
※自動車関連産業
素材系製造業および運輸サービスなどのサービス業を含む
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自動車業界の業態
業界の中心にいるのは、完成車組み立てメーカー(自動車メーカー)で、製造業です。その周辺に「Tier1(ティアワン)」「Tier2(ティアツー)」(※)と呼ばれる部品メーカー群があり、これらも製造業になります。自動車メーカーから完成車を購入し、法人や個人に小売りするのが販売会社で、これは小売業あるいはサービス業に分類されます。
具体的には、
・自動車メーカー:トヨタ、ホンダ、日産など。売上規模約69兆円(2017年度)。完成車を販売会社へ納入し、B2Bで収益を上げる。
・部品メーカー:デンソーやアイシン精機など。売上規模約15兆円(2017年度)。自動車メーカーや他の部品メーカーへ、B2Bで収益を上げる。
・販売会社:車の販売店。売上約14兆円(2017)仕入れた完成車を顧客へ小売りするB2Cで収益を上げる。
※「Tier1」・・・メーカーに直接納入する企業。一次請負とも呼ぶ。
「Tier2」・・・Tier1に自社製品を供給する企業。
自動車メーカーは部品メーカーとのサプライチェーンで完成車を組み立てることができます。自動車メーカーの特徴は、自動車トータルでの研究、デザイン、実験などの組織や施設を保有し、自社工場で最終の完成車を製品として生産するところにあります。
自動車メーカーには職種として、商品企画・開発、研究・開発、デザイン、設計、試作、実験、生産、営業、システム開発などがあり、時代とともに必要とされる職種は拡大傾向にあります。
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自動車業界の現状
自動車業界の動向
昨今、自動車は大変革期にさしかかったと言われますが、この指摘は的を射ています。大変革期には大きな混乱が生じ、慣れ親しんだものが消滅し、全く新しいものが出現したりします。サプライズ情報が飛び込んでくることもしばしばで、例えば、2018年10月にはトヨタがソフトバンクとアライアンスを組むと発表をしました。また、欧州や中国の当局は、近未来に自動車の大半あるいは全数をEV化すると明言しています。 これら表面に現れた事象は、大変革が胎動していることの証左です。大変革期を象徴する具体的事例として、次のような表象に着目する必要があるでしょう。
①国内はもとより、グローバルな自動車業界のアライアンス見直し
②IT系企業が主導するカタチでの業界参入
③中国、インド、東南アジアといった自動車後進国といわれた国々の急速な進展
④経営トップの交替劇や、代表企業における不正検査の発覚など、企業ガバナンスのあり方に対する見直し要請
⑤AI、ロボット、自動運転、コネクティッドカー、ビッグデータ、全個体電池などが象徴する、テクノロジーの超進化
⑥欧米諸国、中国が打ち出してきたEV化最優先の目標
⑦自動車単体の産出から、トータル・モビリティ・サービスの提供へと、大きく変わるビジネスモデルと志向性
自動車業界の課題
上述の表徴的な事象群から大きな地殻変動をまず察知し、産業全体が大変革期に差し掛かっていると認識を持つことが重要です。この大局的な状況を認識することが、企業や個人にとっての最も大きな課題になるでしょう。
その上で、これまで信奉してきた、「製造業主導」「大企業優位」「自動車単体の産出」という基本概念を一度払拭し、「他業種とのアライアンス主導」「中小規模企業優位」「モビリティ・サービスの創出」を新たな理念として、 既存の資産やスキル・ノウハウを生かしながら、あらたに自動車産業全体のあり方を模索することが大切です。
具体的には次のような課題があります。
①全要素生産性および付加価値労働生産性を高め、少子高齢化に伴う人手不足問題を乗り越えること
②異業種や他企業とのアライアンスをさらに促進し、オープン・イノベーションを実現しやすくすること
③概念形成能力を高め、モビリティ・サービス(※)の創出を実際に可能にできる人財を開発すること
④エネルギー革新、特に電池に関するテクノロジーを数段進化させ、国際競争力を保持すること
⑤AI、ロボット、通信、ネットワーク、量子コンピューティングなどの最先端テクノロジーを強化すること
※モビリティー・サービス
モビリティ・サービスの出典は2018年1月8日にCES 2018にて、トヨタ自動車の豊田章男社長が発表した「モビリティ・サービス企業を目指す」という宣言に基づきます。
その意味は、自動車を製造する会社から、モビリティ(移動)というサービスを総合的に提供する会社へ進化するということです。トヨタはある意味で、サービス業への変貌を決意したわけで、その結果、2018年10月にはソフトバンクとの提携を表明し、MONETという会社を設立しました。
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自動車業界の今後
戦略構築のポイント
今、自動車産業には大変革というリスクがありますが、そのリスクをチャンスに変えるには、具体的に次の5つの力が必要です。
①状況の認識力あるいは察知力
②問題から課題を提議し、実際に行動に移るための戦略構築力
③上述のような具体的課題を具現化できる実行力
④ものごと全体を調整し、和を育みながらまとめていく、プロデュース能力
⑤クルマという独特で魅力ある商品を、それを取り囲む空間とともに顧客に届け、満足を引き出す商品開発力
大変革の時代には混乱と面白さとが同居する
私が日産に入社した1973年、第一次石油ショックが起こり、1リットル50円のガソリンが年末には一気に100円になりました。当時の最大の課題は排気ガス対策。最初の仕事は運輸省(現・国土交通省)へ提出する熱害試験データの収集と分析で、日々繁忙を極めました。当時も変革の真っただ中にあったわけですが、混乱の中にもやりがいと手応えを感じていました。
基幹産業も、技術開発の焦点も、自動車単体という主役も、全てが大きく変わろうとしているのが現在地点です。自分の立ち位置を見据えながら、同時に産業構造の変容にも気を配る、その姿勢こそが必要であると思います。有能な個人が強いコンピタンスを保持しながら『自分ブランド』を確立し、 自動車業界を1つの登山口として、世界に繋がり、情報発信して行かれることを期待します。
自動車部品業界の志望動機については「自動車部品業界の志望動機の例文5つ!書き方のポイントや注意点も紹介」も参考にしてください。
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本記事の監修者
淺田真奈(あさだまな)
大学時代は接客のアルバイトを3つかけもちし、接客コンテストで全店1位になった経験をもつ。新卒では地方創生系の会社に入社をし、スイーツ専門店の立ち上げからマネジメントを経験。その後、レバレジーズへ中途入社。現在はキャリアチケットのアドバイザーとして、学生のキャリア支援で学生満足度年間1位と事業部のベストセールスを受賞し、リーダーとしてメンバーのマネジメントを行っている。