出版業界の現況・今後の動向について

このページのまとめ

  • 出版業界の市場規模はここ10年で1兆円減退している
  • 本を売るには、「コミュニティ作り」「ファン作り」が重要
  • 電子書籍も出てきているが、収益の7~8割は紙

本記事の執筆者

渡邉理香(わたなべ・りか)

愛媛県生まれ。 島根大学法文学部卒業後、書店員・中小出版社への転職を経て、業界最大手KADOKAWAの書籍編集者へ。独立後フリー編集者・出版コンサルタントとして活動中。



 

出版業界の構造について

出版業界の全体概要は「出版社」「取次」「書店」という3社の業態によって成り立っています。出版社は本を出すところ(メーカー)、「取次」は問屋、「書店」は本を消費者に届ける小売店です。

また、ひと言で「本」といっても大きく分けて(1)単行本(書籍)、(2)雑誌の2大形態があります。

(1)単行本(書籍)

原則ひとりの著者が1冊の本を書いています。ときどき「共著」というものもありますが、基本は「著者」がいて、その人が発行物の内容に責任を負っています。

単行本の範囲は幅広く、小説やビジネス・実用書など多岐にわたります。文庫本も書籍に入り、厳密に言えば「コミック」も書籍の括りに入ると言っても良いでしょう。

皆さんも書店に行ったら、1,400円〜1,500円くらい(ものによっては価格の高低あり)の本を買ったりすることもあるでしょう。ハードカバーのものもあればソフトカバーのものもあるはず。それらはすべて単行本(書籍)と呼ばれるものです。よほど決まったペースで本を出す著者以外は、基本出版のペースは不定期です。

(2)雑誌

一方で「雑誌」は書店のみならずコンビニにも置いてある、ペラペラとした紙でできており、単行本にくらべて「大きい」と感じる本です。モノクロの紙面もあれば、オールフルカラーのものもあります。週や月・季節で定期的に発行されます。週刊誌や月刊誌、季刊誌などがそれにあたります。

くわえて最近では「電子書籍」もあるでしょう。ほとんどが紙の本の2次利用となります。電子本が売れてきていることもありますが、それでも紙の本の売り上げの3割程度です。
 



 

出版業界の収益の仕組について

単行本も雑誌も、その商品(本)の「売り上げ」「売れた数(部数)」で収益を作ります。なのでとにかく出版社は「売れる本」「売れる雑誌」を作る必要があるわけで、編集者はいつも頭を悩ませています。

本は基本「書店」で売られます。アマゾンや楽天ブックスなどのネット書店も「書店」です。なお、書店は直接出版社と取引を行っておらず、基本は書店と出版社の間に「取次」という問屋が介在しています。基本、書店で本を買うためには「取次」を通して流通されることを覚えておいてほしいですね。

そして、出版業界には「再販制度(※1)」というルールがあり、全国どこでも「同じ価格」で販売されます。家電や洋服などのように、小売販売店が値段を高くしたり、セールなど値引きをしたりできない商品です。

(※1)再販制度…出版社が書籍・雑誌の値段を決めて書店に定価で販売する制度

書籍だと1100円、雑誌でも500円くらいの平均単価です。たくさんの人に買ってもらわないと利益になりません。その意味でも「典型的な薄利多売」ビジネスといえるでしょう。

また、本は「単行本」「雑誌」いずれも基本は「売れなければ出版社に返品」されます(委託販売制度/※2)。よって、正確な実売数が他の消費財と比べて出にくいのも特徴ではあります。

(※2)委託販売:書店は、書籍・雑誌を購入し在庫として持つのではなく、仕入れて売れなかった書籍・雑誌を出版取次に返品ができる仕組み

なお、電子書籍は「再販制度」は適用されないので、セールがなど販売店による価格の上下があります。しかし電子書籍も電子書籍販売店で取り扱われています。



 

出版業界の現況、課題について

「出版不況」と呼ばれ、出版の市場はここ10年間で「1兆円減退」しています。

いたるところでこの「出版不況」を切り抜けるか、ということが議論されています。出版業界の構造そのものが今の社会に合っていないという声もありますが、スマホ(SNS)社会で情報が多様に拡散されすぎているからこそ、「体系的にまとまって読める本がほしい!」という読者の声もあります。

また小説やコミックなどは、情操教育にも大きな影響をもたらし、「日本文化」としての価値ある産物の側面もあります。ビジネス書や実用書は手っ取り早く、仕事や実生活における問題解決のコンテンツとして、いまや小説以上の売り上げを出しています。
なので市場が後退しているからといって出版業界をなくしてしまおう!ということもできないのが現状でしょう。

ただ、出版の世界にいる人間から言わせてもらえれば、大量生産・大量消費の時代は完全に終了しました。パーソナライズかつ、「劇場型」な人と物の動きや購買意欲が見られる社会になった今だからこそ、本の作り方と売り方の変化が求められるといっても過言ではありません。

そこで重要になってくるのは、「コミュニティ」と「ファン」かもしれません。いまや本は「出せば売れる!」の時代は完ぺきに終わり、用意周到な販促計画とコンテンツごとの市場の確立と成長がなによりも求められています。
先にその著者のファンをつくる、コンテンツが受け入れられる市場をつくる、雑誌媒体のファンをSNSと共存共栄のなかできちんと作れるかが、生き残りのカギといえるかもしれません。

とにかくスピードの速い効率化社会となりました。世の中の動きや人々の考えや思い、解決したい潜在的な課題や嗜好をいち早く見抜き、それをどのようにコンテンツとして落とし込んで、市場に投入していくかをスピーディに分析したり見極めたりする力が、出版人としても求められるだろうと思います。



 

出版業界の今後の動向について

今後の出版業界はなだらかな「減退」と「停滞」になっていくのではないかと思います。とくに雑誌の低迷と危機は以前からいたるところで多くの人が提言を行っています。

革新的かつ現状を即打破する実効策がないのも現実で、ITとSNSの発達により、急速な成長!という傾向は見られないと考えます。

しかしながら、日本人はやはり本への期待を少なからずもっており、読書会が開かれるなど「本への希望」をたくしている情緒的な傾向が依然として残っているのは確実です。
ベストセラーになれば、日本全国において広く認知はされやすいと言っても過言ではないでしょう。良い本・読者に受け入れられる(喜ばれる)コンテンツをいかに作って投入できるかが生き残りのカギといえるでしょう。

なお電子書籍も伸びがあるとはいえ、やはり「紙の本」にはかないません。いまだ収益の7~8割は「紙」で立てているところもあるので、まだまだ紙の本が生き残っていくと思います。



 

出版業界の脅威

脅威はやはりIT(モバイル)でしょう。さらに特筆すべきは「スマホコンテンツ」「SNS」の存在です。皆さんも紙の本よりスマホを見たり読んだりしていて、SNSからの情報収集が圧倒的です。

紙の本はその意味では「もはや最先端ではない」と踏んでいます。

しかし、10年以上前の500倍の情報にさらされていると言われている昨今において、散りばめられた情報が「体系的にまとめられた」形で本が出るとその本は売れる傾向もあります。

今、売れ筋の本としては「大全」とついたものや、スマホでは手軽に習得できない最新のディープなビジネスおよび社会的研究事例の翻訳本など(『サピエンス全史』など)は売れる傾向にあります。
小説においても、まだまだ売れる本、読者が楽しんで読めるは売れます。テレビドラマや映画とのタイアップなどもあって、話題になることも多いです。

重ねて申しあげますが、本が生き残るうえでは、「スマホ」「SNS」との共存共栄が大切ではないでしょうか。
本だけ作って売る、ではなくあまたあるメディアミックスを視野にいれた制作と緻密で拡販を可能とする販売戦略が大切なのであろうと考えます。



 

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