人材業界の現状・今後の動向について

このページのまとめ

  • 人材業界は、「求人広告業」「請負業」「派遣事業」「職業紹介業」に大別される
  • 人材業界の市場規模は9兆円と、介護や医療品業界よりも多い水準
  • AI時代への対応や、公的サービスとの連携が今後のカギ

本記事の執筆者

中川裕美子(なかがわゆみこ)

有限会社SONORI代表取締役、および、大学非常勤講師(キャリア教育)。専門分野は、ビジネスコミュニケーション、キャリア教育、採用支援など。日々、講師・コンサルタント・キャリアアドバイザーとして活躍中。高校・大学・企業・官公庁・病院など、さまざまな場所で日々登壇・カウンセリング・コンサルティングを担当しています。



 

人材サービス業界は4つの業態に分けられる

人材サービス業とは、「働きたい人」と「働いてほしい企業」の双方におけるニーズを満たすために、人事・採用・教育関係のサービスを提供する業界です。

業態によって「求人広告業」、「請負業」、「派遣事業」、「職業紹介業」の4つに大別され、他に教育サービスや採用業務支援などがあります。
以下、主たる4つの業態について、詳しくご紹介しましょう。

求人広告業

求人広告の作成支援サービスを提供し、広告掲載料もしくは制作料を得るビジネスです。

求人情報を掲載するWebサイトの構築や、紙媒体(新聞や雑誌)に求人情報を掲載するコーナーを設けるだけでなく、企業の採用情報を多くの人たちに宣伝し、条件に適した人からの応募数を増やします。

また、そうした掲載部分の記事やデザインの作成代行を請け負う場合もあります。

請負業

請負業とは、あらかじめクライアントと請負契約を交わし、契約書に基づいた業務を完了させることで報酬を得られるビジネスです。

請け負った業務は自社で採用したスタッフが担当し、業務指示も自社で行います。サービスの形態は時代に合わせて進化しており、紙面での業務契約のほかに、インターネットを介して、個人事業主が依頼主から直接仕事を請ける「クラウドソーシングサービス」などもあります。

派遣業

クライアントとの契約に基づいた業務を終える、という点は請負業と変わりませんが、スタッフを派遣し就労先の上司から直接指示を受けて業務をおこないます。あらかじめ労働内容の範囲は定められ、派遣スタッフにはその範囲内での業務を担当してもらいます。

派遣業を営む事業所は、厚労省からの事業許可を得る必要があります。
有期雇用派遣の期間制限ルール変更が行われ、3年以上同一組織にスタッフを派遣する場合、派遣先が直接雇用しない場合、派遣会社が直接雇用をおこなわなければならないルールとなりました。派遣会社は雇用責任が大きくなりますが、現状の人手不足な市況もあり、派遣料引き上げなどで対応する算段です。

職業紹介業

求職者に仕事を紹介するサービスです。「人材紹介業」ともいわれます。企業が求める人材を探し、その人が採用された場合、紹介の成功報酬を得るビジネスです。

なかでも「高度な専門職や組織の上層部となる人を見つけてきてほしい」という依頼に対しては、「ヘッドハンティング」と呼ばれる、引き抜きを行う採用支援を担う場合もあります。

職業紹介業も派遣業と同様に、厚労省からの事業許可が必要です。

「教育サービスや採用業務支援」

教育サービス業は、教育に関する何らかのサービスを、有形無形に関わらず、ニーズに合わせて提供するビジネスです。教科書や問題集等の印刷・出版やeラーニングのWEBコンテンツの提供、講演、研修・セミナーの企画立案・実施などが主なサービスです。さらに、学習塾やカルチャースクール、スポーツジム等の運営も、教育サービスに含むこともできます。

採用業務支援は、企業や団体等の採用業務を請け負い、採用がスムーズに進むように支援するサービスです。広告宣伝から内定者研修までの、採用業務の一連を受託して支援する場合のほか、一部を請け負う場合もあります。具体的には、応募者集めの営業、筆記試験内容の作成・採点、試験官の代行、試験の事務代行等があります。

教育サービスも採用業務支援も、既に説明した、広告業・派遣業、請負業、職業紹介業と強く関係している場合があります。各業態は主業に付加価値を提供するべく、教育や採用業務支援を提供し、よりいっそうの顧客満足をめざそうとするケースがあります。

なお、教育サービスと採用業務支援については、この業務だけを専門的に行う企業も存在します。人事・採用・人材開発・教育系IT等のコンサルティング会社、教育系出版会社、学習塾、カルチャースクールなどがそれに該当します。



 

人材サービス業界の現状

人材サービス業の市場規模は、売上ベースで約9兆円と推定されています。この9兆円という数字は、介護サービス業界の8兆3,000億円、電子部品・デバイス業界の8兆2,675円、医薬品業界の6兆8,195億円を超える数値です。

売上の内訳は以下のとおりです。

1位 派遣業:約6兆3千億円
2位 請負業:約1兆5千億円
3位 求人広告:約1兆円
4位 職業紹介業:約2千億円

この4業態全体で、約800万件以上の求人を取り扱い、各業務形態をつうじて約475万人に職業の紹介・受託・就労・就職等の機会を提供しています。


出所:人材サービス業界の近未来を考える会 - 2020年の労働市場と人材サービス残業の役割



 

人材サービス業界の脅威

人と仕事が存在する限り、人材サービス業は衰退しないといわれています。

しかし、時代の流れに対応せず新しい発想を持たないまま業界を維持しようとすると、脅威になりかねない存在もあるため注意が必要です。

1. AIの存在

AIを活用することで、職場や人材の活用法を提案しながら、人と仕事のマッチングをより繊細に行えます。人力で行なっていた業務をAIで代替する企業が増えると予想されるため、AI技術の情報に精通し、提供できるサービスの幅を広げていく必要があります。

2. 同等の公的無料サービス

例えば、人材紹介業において代表的なライバルであり、脅威になる恐れがある公的無料サービスといえばハローワークです。公的なサービスとの連携に対して、斬新なアイディアをもち、官民での協力体制を継続的に提案・構築・運営・実施ができる状態を継続化していく必要があります。この状態を実現・強化することで、業界の信頼度が高まり、社会からのニーズを高めることができるようになるはずです。

人材サービス業には、社会貢献意識をもって柔軟にサービスの形を変化させ、各時代に合った人材サービスを提供することが求められます。時代の要請に応えつづけられれば、未来への可能性を十分に含んだ、安定的な業界のひとつであることは間違いありません。

人材サービス業の将来

労働市場・人材サービスは、より複雑化・多様化していくと予想されます。

業界の今後について、人材サービス産業の主要4団体(社団法人全国求人情報協会、社団法人日本人材紹介事業協会、社団法人日本人材派遣協会、社団法人日本生産技能労務協会)が、「人材サービス産業の近未来を考える会」を発足させ、5つのテーマに取り組むことを宣言しています。

以下が、今後取り組むべき5つの課題とされています。

人材サービス産業の近未来を考える会・人材サービス業における5つの課題  2011年

テーマ

概要

マッチング・就業管理を通じたキャリア形成の支援

仕事と働く人を結びつけるマッチングと、良好な雇用関係を継続化させる就業管理をつうじて、個人のキャリア形成を支援する

採用・就業における「年齢の壁」の克服

少子化・高齢化を意識したサービスの提案・提供をおこなう

異なる産業・職業へのキャリアチェンジの支援

業界・職種の隔たりを超えたキャリアチェンジを可能にできる支援を強化する

グローバル人材の採用・就業支援

国際化社会に対応すべく、外国人の採用支援も積極的におこなう

人材育成による人材サービス産業の高度化

人材サービス産業に携わるプロの育成、レベル向上を、教育をつうじておこなう


出所:人材サービス産業の近未来を考える会 - 2020年の労働市場と人材サービスの役割



 

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