ホテル業界の現況・今後の動向について

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このページのまとめ

  • 国を上げて「観光先進国」を目指し外国人観光客の誘致に力を入れているため、業界としては追い風
  • ホテルの建設ラッシュは起きているものの、人材不足が深刻
  • ゲストハウスやホステル、民泊などホテルの多様化が見られ、「異業種」からホテル運営への参入も増加
  • 今後は生産性を高め、単価や付加価値を高めることが業界の課題
 

本記事の執筆者 多くのホテル・旅館の再生に努める冨山 浩一郎氏の画像

本記事の執筆者

冨山 浩一郎(とみやま・こういちろう)

首都圏の外資系広告会社、外資系メーカーでマーケティング、ブランドマネージャー、経営企画を経験後、星野リゾートに入社。各リゾートの現在まで続く様々な企画の基礎作りに従事後、多くのホテル・旅館の再生を行っている。

 

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ホテルの種類

ホテルの種類にはさまざまな分け方がありますが、一般的には以下の分類となります。

シティホテル

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都市部に立地していて、宿泊以外にレストランや宴会、会議、婚礼の場などを提供している
 

ビジネスホテル


主に出張のビジネスマンなどの利用を想定したホテル。駅の近くなどに立地しており、ほぼ「宿泊」専用の施設。朝食のサービスを提供している場合が多く、朝食が売りになっていることも多い
 

リゾートホテル

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観光地に立地しており、宿泊のほかに食事やアクティビティなどを提供するホテル。レジャーに特化し、滞在を楽しむため温泉、遊戯施設などの設備に力を入れていることが多い
  

旅館

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リゾートホテルのうち、和風のもの。個人の部屋で食事を提供したり、温泉などの入浴施設が充実したりしているものが多い

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ホテル事業における収益の考え方

ホテル事業における収益の考え方の画像
ホテルの収益源は、大きく分けて2つあります。

①施設の利用料

宿泊や会議、宴会などのために客室や会場を一定時間貸し出して、対価を得ることです。これらの収益は「立地」「広さ」「設備」(豪華さ)などに左右されます。
 

②施設以外のサービス、アメニティなどの利用料

飲食物やアメニティの提供や、部屋の清掃などのサービスも、重要な要素です。これらのサービスのコストは客室料金に転嫁されます。これらは飲食店などの収益構造と、大きく変わるところはありません。

ホテルの基本は場所を“時間貸し”することなので、「1時間当たり、その場所がどれだけの売上を上げられるか」が重要になります。
ビジネスホテルは、ほぼ宿泊のみなので、立地が大きく影響します。また、出張などの業務利用=利用必要性が高いビジネスホテルでは、「集客のための価格コントロール」がとても重要になります。

現在では、Webサイトで簡単に価格を比較することができるので、需要の少ないときには「他社との比較を行って価格を調整しお客様を獲得すること」、需要の多いときには「できるだけ高く販売すること」が重要です。また、必要な人員はほかのホテル業に比べて少ないので、稼動、価格次第で大きな収益を得られることもビジネスホテルの特徴です。

リゾートホテル、旅館は、観光、連休やイベント時期など需要が多くなるタイミングが決まっているため、稼働率の変動が大きくなることが多いです。これらのホテルは、「需要の多いとき・少ないときのぞれぞれにオペレーションをどのように対応させるか」も収益に大きく影響します。
 

・知っておくと良い用語

客室稼働率
すべての客室に対する販売客室の割合

ADR

客室売上げを販売室数で割ったもの。1室あたりの販売価格

RevPAR
ADRに稼働率をかけたもの。1日あたり客室が平均いくら稼いでいるか

 

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ホテル業界の現状

インバウンドの追い風と人手不足

ホテル業界はいま、外国人観光客(インバウンド)の急激な増加で、景気が過熱しています。また、国も「観光先進国」を目指し、政策として外国人観光客の誘致に力を入れていて、そのための規制緩和、業務効率化のための支援などを行っているので、業界としては追い風状態です。2018年には外国人旅行者が3,000万人に達し、わずか2年で1.5倍に増えたのは記憶に新しいところです。

外国人旅行者の誘致は、東京オリンピックに向けてだけでなく、日本の大きな課題である「人口減少」への対策のひとつなので、今後もこの方針は変わらないと考えられます。

訪日外客数(総数)の年次推移。2003年頃から20011年頃までの訪日外客数(総数)は約1000万人以下。2011年頃から2017年頃にかけて3000万人近くにまで上昇

出所:日本政府観光局(JNTO)
 

現在、訪日外国人観光客の経済への影響は、政令指定都市ひとつ分を超える規模になろうとしています。人口減少の影響を大きく受けて、国内産業はこの先衰退していく予測ですが、ホテル業を含む観光業は“伸びていく”・“伸ばす必要がある”と国が認識している産業だと言えます。
そんななかホテルの建設ラッシュも起きており、それによる人材不足が深刻です。スタッフが足りないことを原因にすべての部屋の販売ができない、などということも実際に起こっています。
 

ゲストハウス、ホステル、民泊など新興宿泊施設・制度よる競争激化

並行して政府は、この急激なホテル需要増に対応するために、宿泊形態の多様化を進めています。
2年で1.5倍、1,000万人の外国人観光客が増え、京都などでは「オーバーツーリズム」(観光地が耐えられる以上の観光客が押し寄せる状態)が起こっています。

規制緩和の中で生まれた民泊をはじめとする新たな宿泊先の選択肢が加わったことで、宿泊の在り方そのものが変化を強いられており、ホテル自体も多様化しはじめています。また、「異業種」からホテル運営への参入も増加しています。

旅館業の年次推移。2013年から2015年まで約8万件以下に減少、2015年から2017年にかけて約8万件以上に上昇

出所:厚生労働省

ホテル業界においては、生産性の向上が課題

現在、サービス産業は日本のGDPの7割を占める規模になっています。サービス産業は、製造業などと違い、大量生産でコストを下げる方法が通用しない ので、もともと生産性を上げることが難しいとされてきました。なので、サービス産業の割合の増加に従って国全体としての生産性も上がりにくくなっています。

サービス産業の待遇の改善のためにも、生産性を高めることはやはり重要です。生産性とは「人時生産性」、つまり従業員1人の1時間当たりの粗利です。これを改善することが、勤務時間や賃金などの待遇の改善に繋がることは当然です。

生産性を高め、待遇を改善し、働きたくなる魅力的な職場を作っていくことが大切です。そのための方法として、仕事のやり方、処理の効率を高めるだけでなく、単価を上げること、付加価値を高めることが、これからのホテル業、さらにサービス業全体の課題です。

 

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