都市ガス業界の現況・今後の動向について

このページのまとめ

  • 都市ガス会社の販売ガス量トップは東京ガスで、全体のシェアのおよそ3割を占めている
  • 2017年4月に始まった都市ガス小売全面自由化に伴い、多くの電力会社が小売都市ガス自事業者として参入しており、競争激化が予想される
  • 今後、都市ガス会社は電力会社とともに再編されていく可能性がある
  • 長期的に見ると都市ガスは地球温暖化対策として消費が抑制されていく
 

本記事の執筆者

本橋 恵一(もとはし・けいいち)

エネルギービジネスデザイン事務所代表、エネルギービジネスコンサルタント、ジャーナリスト。エネルギー業界誌記者、エネルギーIoT企業マーケティング責任者を経て現職。著書に『電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本』ほか


 

都市ガスとは

都市ガス事業は、主として輸入した天然ガスを、ガス導管を通じてお客様に供給する事業です。大手都市ガス会社には東京ガスや大阪ガスがあり、他にも200社を超える地方の都市ガス会社や自治体が運営する公営ガス事業者があります。
 

 

都市ガス業界の現況

政府刊行の『ガス事業便覧』によると、都市ガス会社の販売ガス量のシェアは、トップが東京ガスで、全体のおよそ3割、続く大阪ガスが全体のおよそ2割。それに東邦ガス、西部ガスなどが続きます。上位10社で販売ガス量の8割を越えており、残り2割の200近い小規模な地方都市ガス会社が供給しています。
 

出所:新電力ネット - ガス会社の需要家数ランキング


また、2017年4月にスタートした都市ガス小売全面自由化に伴って、東京電力エナジーパートナーや関西電力、中部電力、九州電力などが新たに小売都市ガス事業者として参入しています。電力会社は火力発電所用の燃料として天然ガスを輸入しているため、ガスそのものを供給することも可能なためです。

都市ガスの供給にはガス導管が必要ですが、供給可能な区域は国土の6%弱しかなく、それ以外の地域ではLPガスが供給されています。また、新規参入の都市ガス会社は大手都市ガス会社のガス導管を利用してガスを供給しています。都市ガスを使っている世帯とLPガスを使っている世帯の数は、やや都市ガスが多くなっています。

ガスの輸入元の変化

天然ガスは、石油、石炭と並ぶ化石燃料ですが、

・燃焼時に排出される二酸化炭素が相対的に少ないこと
・資源が中東地域などに偏っていないこと

上記の理由から世界的に都市ガスや発電所の燃料として消費が伸びてきました。


経済産業省 資源エネルギー庁 - 一次エネルギーの動向 【第222-1-14】地域別天然ガス生産量の推移

日本では主に、液化天然ガス(LNG)として、中東のカタールやオーストラリア、マレーシア、インドネシア、ロシア(サハリン)などから輸入されています。最近は、米国産の非在来型天然ガス(※)であるシェールガスも輸入されるようになりました。

※非在来型天然ガス
豊富な埋蔵量が確認されていて次世代の資源として注目されているものの、掘削に高い技術を要し、精製のコストも大きいため、2000年前後になるまでほとんど開発が進んでいなかった天然ガス資源。「タイトサンドガス」「コールベッドメタン(CBM)」「シェールガス」「メタンハイドレート」など。

 

 

天然ガスの輸入方法

天然ガスを輸入しているのは、大手商社、大手都市ガス会社、電力会社などです。日本企業のLNGの輸入は、かつてはガス田ごとに毎年決まった量の代金を支払う「テイク・オア・ペイ」という契約が一般的でした。この場合、輸入量が決まっているため供給のリスクは小さくなりますが、固定金額のため割高になります。最近は比較的割安である、市場価格が変動するスポットでの取引も増えてきました。

都市ガスは、輸入されると、LNG基地のタンクに貯蔵されます。ガス工場ではこのLNGを気化し、熱量調整や付臭(ガス漏れを発見するために臭いをつける)が行われたうえで、ガス導管を通じて供給されています。ただし、輸入から供給まで一貫した事業を行っているのは大手都市ガス会社に限られ、ほとんどの地方都市ガスは大手都市ガス会社などから卸供給を受けています。

また、一部ですが、国産天然ガスを供給している事業者もあります。国産天然ガスを生産しているガス田には、南関東天然ガス田などがあり、京葉ガスや大多喜ガスなどが原料として利用しています。

都市ガス業界の今後

都市ガス業界は今後、どのようになっていくのでしょうか。

・ガス需要の変化

近年、工場などで使われる重油などの燃料をガス転換することや、そのためにガス導管を延長することで、産業用ガスの需要を伸ばしてきました。特に東京ガスの場合、茨城県日立市にLNG基地をつくり、北関東にガス導管を整備したことで、茨城県や栃木県の工場地域にガスを供給できるようになり、販売ガス量を順調に伸ばしています。家庭用ガスについては、熱効率の良い潜熱回収型ガス給湯器(エコジョーズ)の登場で給湯用のガスの消費が減ったことなどにより、需要は横ばいないしやや減少気味です。

・ガス販売の多様化

ガスの供給については、業界の構造が大きく変わりつつあります。まず、都市ガス小売全面自由化により電力会社が都市ガス事業に参入しており、電力会社から卸供給を受ける形でニチガスなどのLPガス会社なども参入しています。電気とのセット販売などが行われており、競争激化が予想されます。

ただし、都市ガス会社は、東京ガス系のライフバルなどのように、ガス工事やガス機器販売を行う店舗などの事業所を系列化し、ユーザーとの営業の接点を持っているため、電力会社よりも営業力があることが強み です。また、小売電気事業と異なり、小売都市ガス事業には、ユーザーが使用するコンロや給湯機などガス機器の保安業務が義務付けられており、新たな参入を難しくしています。

さらに、2022年には、東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの3社は、ガス導管事業を分社化することになっています。ガス導管の総距離が長い上記3社が、導管事業を分社化することによってガス導管の独占性をなくし、どの会社でも自由に導管を利用できるようにする狙いがあります。これは、2020年に大手電力会社に対して送配電事業を別会社にする送配電分離が行われることと同じく、小売事業の公平性を促進するためです。
 

 

電力、ガスシステム改革による影響

今後、都市ガス会社は、電力会社とともに再編されていく可能性があります。すでに、大阪ガスと中部電力は、CDエナジーダイレクトという会社をつくり、首都圏で都市ガスの供給を開始しています。また、東京ガスと関西電力はLNGの共同調達を行っています。これは価格交渉力を強くするためですが、これが将来の提携や経営統合につながらないとはいえません。一方、地方都市ガス会社も合併が少しずつ進んでいくことでしょう。

長期的には、都市ガスも燃焼時に二酸化炭素を排出するため、地球温暖化対策として消費が抑制されていくでしょう。したがって、都市ガス会社は、再生可能エネルギーなど、新たなエネルギーに取り組むことが必要です。中でも期待されているのは、水素、およびこれを原料としたメタンガスです。

水素は燃焼時に水しか排出しません。これを燃料電池の燃料にすることで、電気と熱を効率良く作ることができます。将来は再生可能エネルギーの電気で水を電気分解して水素を作ることが期待されています。さらに、水素と二酸化炭素を反応させて天然ガスの主成分であるメタンガスを製造するということも検討されています。

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