家電・AV業界の現状・今後の動向について

このページのまとめ

  • 最近では生産設備を持たない業態のメーカーや、販売経路の変化が見られる
  • 日本の家電業界の売上規模はほぼ横ばいで頭打ちだが、韓国や台湾、中国などの新興国メーカーは成長傾向にある
  • 一般市場よりも安定的な収益が見込めるBtoB向けに移行する流れに拍車がかかっている
  • 独自の商品企画力を強化し、いかに消費者のニーズを満たす製品を作れるかが成長のカギ

本記事の執筆者

弓削 徹 (ゆげ・とおる)

製造業のマーケティングコンサルタント。ものづくり企業のマーケティング経営を支援するほか、商工会議所で500回超の講演講師を務めるなど、日本の土台である中小企業を、その下から支えるコンサルタントとして活動。主な著書に「キャッチコピーの極意」「顧客は展示会で見つけなさい」など。

 家電・AV業界とは?

テレビやDVDレコーダーなどのAV機器、またはデジタル家電や冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの生活家電、ほかにもパーソナルコンピューター、通信機器などを製造・販売するのが家電メーカーです。

総合電機メーカーの場合は、これらに加えて鉄道車両やインフラ、発電機、原子炉など重電と呼ばれるカテゴリーも網羅しています。

総合電機メーカーでは社内で商品企画を行い開発した新製品を自社工場、または委託先の工場の生産ラインに乗せて製造します。近年は「ファブレス」と呼ばれる、自社内に生産設備を持たない業態のメーカーも出てきています。洗練されたデザイン家電で注目されるバルミューダもファブレスです。

販売経路も変わってきました。かつてはメーカーごとに町の電器店がチェーン系列化されていましたが、いまは家電量販店チェーンやネット通販などを経由してエンドユーザーに届けられ、売上となります。自社グループ内に販売専門の会社を有するメーカーもあります。

 覚えておきたい家電・AVの種類

・白物家電:洗濯機や冷蔵庫などの生活家電のこと。普及しはじめた当初は白い筐体が多かったことからこの名前で呼ばれるようになった
・黒物家電:主に家庭で使われる電気製品のなかでも、テレビやDVDレコーダー、ゲーム機などの娯楽家電のこと。黒い筐体の製品が多かったことからこの名前で呼ばれるようになった
・重電:発電機、電動機など電気機械のこと。これらと家電を合わせて強電と呼び、電子機器類を弱電と呼ぶ
・IoT家電:冷蔵庫やエアコンなどの家電をインターネットに接続して活用するもの。スマート家電と呼ぶ場合もある
・4Kテレビ:表示パネルの画素数がフルハイビジョンの4倍となる高画質なテレビのこと。水平画素数が約4,000あり、1,000は1Kのため、4Kと呼ばれる。8Kはフルハイビジョンの16倍
 

 家電・AV業界の現状

機能性にすぐれ、信頼性の高い製品を世に送り出した日本の家電業界は、戦後の高度経済成長から世界市場を牽引する存在でした。しかし、長く続いたデフレ経済とリーマンショックの影響、さらにネット通販の普及などにより販売価格が下落していきました。近年の売上規模は、ほぼ横ばいで頭打ちであるといえます。

国内メーカーの技術力の高さが世界トップレベルであることは疑いもないのですが、海外企業の技術力も向上しています。日本のメーカーが低迷している間、韓国、台湾、中国などの新興国メーカーが台頭し、家電市場における日の丸メーカーの存在感はすっかり薄れてしまいました。

加えて、中国やインドなどのエマージング(経済が発展する国や地域)市場に受け入れられる家電の開発に遅れをとり、成長への視点を見出しかねているのが現状です。大手メーカーのなかには、会社や事業を中国・台湾他の海外企業、ファンドへ売却するところも出てきています。

AV家電市場の縮小には、スマートフォンの登場も影響しています。端末1台に、デジカメ、オーディオ、小型テレビ、パソコン、カーナビ、ゲーム機、電話機などの機能がすべて取り込まれたことで、各家電へのニーズが減少しました。有機ELや4K、8Kテレビなどの有望商品がラインナップされてはいるものの、製品の多くがコモディティ(日用品)化してしまい、市場ニーズを喚起するような新機軸の製品を投入することができていない状態です。

 家電・AV業界の今後

人口減少を受け、国内市場は伸長する要因が見えにくい環境であることは他の産業分野と変わりません。2019年から2020年にかけては、消費増税直前の駆け込み需要や、オリンピックを背景とした大型テレビなどの特需が起こることが予想されますが、それらも一時的なものにすぎません。

 転身が求められている家電・AV業界

今後は、台湾・韓国メーカーが、エマージング市場の各国で、地元で受け入れられる機能性やカラーリング、デザインに注力したように、日本メーカーも積極的にローカライズへの取り組みをしていく必要があるでしょう。

また、AV機器事業などで見られるように、一般市場よりも安定的な収益が見込めるBtoB(※)向けへと移行する傾向にも拍車がかかると考えられます。

転身に成功しなければ、共同生産によるコスト削減策や、事業売却に踏み切るなど構造的な改革と事業再編が起こると予想されます。

 個性派家電やインテリア家電、健康に着目した家電が成長のカギ

国内市場が縮小していくならば、海外市場に柔軟に対応していく必要があります。低価格帯の家電製品が新興国企業の得意領域である以上、日本メーカーは高付加価値商品に特化していく戦略を取らざるを得ません。とはいえ、一部の中国企業は先進技術の開発にも成功しつつあり、あなどることができません。

高付加価値商品としては、AIやIoTを生かした便利な家電群があります。また国内には、バルミューダのトースターに代表されるような中小メーカーによる「個性派家電」というカテゴリーが育っています。海外発のルンバやダイソンのように、独自の商品企画力を強化していくことは、ひとつの進路であるといえます。

参考となるのが「蔦屋家電」の発想です。機能だけでなく、デザインを重視した趣味性の強い、インテリア家電という切り口も打ち出しています。ただし、世界市場を意識するならば、ガラパゴス化してしまわないよう注意する必要があるでしょう。成功のカギは世界市場をいかに取り込んでいくかにあるからです。

その他、高齢化問題を抱える国では「健康」という切実なテーマも検討に値します。 活動量計や血圧計、体組成計など、健康維持に役立つ家電市場は今後、大きく拡大する可能性を秘めています。

いずれにしても、日本の家電メーカーは、高度な技術力、生産能力、そしてユーザーへの細やかな気配りを活かし、人びとがわくわくするような新製品といった高度な商品群を開発するべきです。切実なニーズを満たす製品が実現できるなら、まだまだ成長する余地はあるといえるでしょう。

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