家電量販店業界の現状・今後の動向について

このページのまとめ

  • 家電量販店の収益性には、「仕入れ」が大きく関わる
  • 人口減少と世帯数増加により市場規模は減少傾向
  • サービスの質をあげることでライフタイムバリューを高めるのが大切

家電とは、テレビやDVDレコーダーなどのAV機器、パソコン・タブレット・スマートフォン、洗濯機や冷蔵庫、電子レンジなど。私たちの暮らしに馴染みあるこの「生活家電」を販売しているのが家電量販店です。この家電量販店を展開する企業で形成されているのが、いわゆる家電量販店業界となります。

大手家電量販店には、ヤマダ電機やビックカメラグル―プをはじめ数社が含まれます。郊外や駅前に大型店舗を構えるほか、インターネット販売を展開するなど、日常的に利用している方も多いのではないでしょうか。今回は、私たちの生活と密接に関係する、家電業界の現状と就活する上でのポイントをご紹介します。

本記事の執筆者

堀田 泰希(ほった やすき)

家電総合メーカーや専門メーカー、大手家電量販企業を対象に教育、営業研修などを行っている。国外でも活動しており、2010年には、中華人民共和国の最大手家電量販企業の旗艦店店長研修を現地で実施するなど、豊富な指導経験を有している。

 

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家電量販企業の最大収益源は仕入れ

家電量販企業といえば、大型店舗を構えて、いろいろな家電製品を販売するイメージが強いと思います。しかし、収益を支えている要素としては、「仕入れ」が重要です。

メーカーが生産した製品は、販社(※1)や卸業者を通して、家電量販店に卸されます。このとき、製品の数量や価格を決めるのが「商談」です。商談は、販社の商談担当者と家電量販店商品部のバイヤーの間で行われるのが一般的。場合によっては、メーカーの事業部が同席することもあります。

※1 販売会社の略称。自社商品を広く販売・流通させるために設立した、メーカー資本系列の卸売流通企業のこと。

たとえば、新製品が導入されるとしましょう。

このときに行われる商談では、まず「初回値入」が決められます。そして、仕入れの条件と売れ行き予想をもとに、家電量販店商品部のバイヤーが「定番ランク(※2)」を決定。その後、すべての店舗に新製品の情報が通達され、定番ランクが高いものから積極的に販売するという流れです。

※2 通常はA、B、Cというようにランクで表される型番ごとに付けられた展示や販売の優先順位のこと

新製品を導入した後は、毎週1回の定期商談が行われます。そこでは、売れ行きや他社の販売価格、期日と数量を決めた契約などをもとに、仕入れ値の引き下げやリベート(※3)の交渉を行います。これらの交渉をもとに生まれる利益が、家電量販企業の最大の収益源につながっています。

※3 メーカーから家電量販店の販売数・仕入数など一定の条件をクリアしたときに支払われる報酬のこと。

 

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家電量販店の業務フロー

家電量販店の一般的な役職構成は、「店長」→「副店長」→「フロア長」→「コーナー長」→「担当者」となります。店長・副店長は店舗全体の予算、フロア長はフロア予算、コーナー長はコーナー予算、担当者は担当カテゴリー予算に責任を持ちます。また、家電量販店の店舗が属するのは「営業部」。その他、「商品部」や「販売促進部」があります。



商品部の主な役割は商談です。仕入れ値(売価変更含む)や定番ランクの決定、キャンペーンの展開、在庫や商材の確保、商品計画の策定などが挙げられます。また、販売促進部では、全社イベントや会員確保や管理施策の策定、各セールの計画・実行などを行っています。上記の図のように、各部署が連携をしながら家電量販店は成り立っています。

 

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伸び悩む売上高、非家電製品や新たな高単価商品に期待

家電業界の現状について調査してみましょう。国内の家電小売りの市場規模は、2010年の約9兆5000億円、2011年の約8兆5000億円から、現在は約7兆円となっています。

出所:GfKマーケティングジャパン 各年の「家賃・IT市場動向」

売上高が上がっている年度の背景には、景気対策や消費増税などの政策の影響があります。たとえば、2010年のエコポイント、2011年の地上波アナログ停波には消費行動に大きな変動がありましたし、2014年の消費税増税前には駆け込み需要などもありました。

しかし、今後の市場規模は7兆円程度を基調としながら、微減傾向になると考えられています。要因としては、日本の人口減少と世帯数増加。一世帯当たり人数が減少しており、家電などの高付加価値商品の販売が難しくなったことに加え、単身者など若年層の生活スタイルが変化していることも影響しています。

また、家電量販企業の現状では、ほぼ横ばいの状況が続いています。家電製品の構成比は高いものの、それだけでは市場規模が伸びないため、競合環境が激しくなっているのが現状です。

先述したとおり、家電量販企業の最大収益源は、家電製品を大量に仕入れ、集中販売をすることで、リベートを確保すること。その中で、売上高や販売台数が伸びなければ、メーカーから好条件を引き出せず、収益を確保するのが難しくなってしまいます。

その他、専業でインターネット販売を行っている企業もありますが、積極的に販売価格を合わせなくても、サービス内容の質を強みにすることで上手く共存できます。
インターネット販売専業の企業を意識し過ぎれば、せっかくのリベートを放出してしまうため、インターネット販売でも同業の家電量販企業を意識し、購買者のライフタイム・バリュー(長期にわたってのリピート購入)を獲得できるよう取り組んでいます。

こうした状況を踏まえ、家電量販企業では、住宅やドラッグ、モバイル、食品・酒類・スポーツ用品など「非家電」の分野に力を入れるなど、家電製品販売の専業から、生活の総合小売業への変革を図る傾向にあります。また、IoTやAI技術の発展により、今までなかったカテゴリーの商品や技術を組み合わせた高単価商品が登場するなど、新たな分野での市場拡大に期待できるでしょう。

 

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 家電量販店業界で働くにあたっては、目標に向かって、ひとつずつクリアしていくこと

家電量販企業に入社したあとは、各店舗に配属されるのが一般的です。基礎的な経験を積んだあとは、担当する商品カテゴリーを与えてもらえます。このとき、商品カテゴリーの専門家として、深い知識を得られるのが醍醐味のひとつです。

最初は覚えることが多く、戸惑ってしまうかもしれません。しかし、決して焦らないこと。最初からすべてをこなせる人はいませんし、店長含め、メンバー全員が成長に一定の時間がかかることを理解しています。

早く成長するコツは「メモ」をとること。店長や先輩に当たる人の仕事ぶりを参考にしながら、教わったことをどんどん吸収していきましょう。接客時のトークや商品案内の方法、POPの作り方など、学ぶポイントはたくさんあります。

また、最近では、個人の売り上げ目標である「個人予算」を割り当てる企業が増えています。最初は予算の大きさに驚くかもしれません。しかし、役職者からの厚いサポートやメーカー販社の営業担当者からの助言・提案もあるので、心配しなくても大丈夫。むしろ、予算と言う数字で公平に評価されるため、日々の努力にやりがいを感じられるでしょう。

 

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お客様からの「ありがとう」を意識する

家電業界で働く魅力は、「常に新しい家電製品にふれることができる」「各メーカーが毎年実施している新製品発表会に参加できる」といった、暮らしの最先端をいち早く経験できることでしょう。

しかし、それ以上に素晴らしい魅力は「お客様とのふれあい」です。お客様は企業ブランドを信頼し、各店舗に足を運びますが、親切な接客をおこなうことで販売員個人を気に入り、指名していただけるようになります。店舗の販売員が真摯に向き合い、お客様の生活に役立つ接客をすることで、「販売員のファン」になってくれるのです。店舗異動したあとも、「あの販売員から購入したいから」と、わざわざ電話で注文してくれるお客様も少なくありません。

一方で、コミュニケーションが得意ではないと悩まれている方がいるかもしれません。しかし、お客様は公平であり、たとえ不慣れな会話であっても、一生懸命に応える姿勢を必ず評価してくれます。お客様からの「ありがとう」の言葉ほど、うれしく、自分を成長させてくれるものはないでしょう。

また、大きな個人予算を割り当てられると先述しましたが、プレッシャーに感じる必要はありません。大切なのは、お客さまに喜んでもらえる接客を続けること。数字は後から付いてきます。

お客さまから感謝され、人として成長できる職場であることが家電量販店の魅力です。ぜひ、お客さまからの「ありがとう」を意識して働き、かけがえのない人脈を築いていただきたいと思います。

 

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本記事の監修者

淺田真奈(あさだまな)

大学時代は接客のアルバイトを3つかけもちし、接客コンテストで全店1位になった経験をもつ。新卒では地方創生系の会社に入社をし、スイーツ専門店の立ち上げからマネジメントを経験。その後、レバレジーズへ中途入社。現在はキャリアチケットのアドバイザーとして、学生のキャリア支援で学生満足度年間1位と事業部のベストセールスを受賞し、リーダーとしてメンバーのマネジメントを行っている。

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