ドラッグストア業界の現状と今後の動向について

このページのまとめ

  • M&Aが活発に起こり、シェアの寡占化が進んでいる
  • ドラッグストアは、セルフメディケーションの観点から市場規模は拡大していく見込み
  • 薬剤師には「ドラッグストア部門」「調剤部門」の2つのキャリアパスがある

本記事の執筆者

長澤育弘(ながさわ・いくひろ)

帝京大学薬学部卒。卒業後、救急指定病院にて2年間勤務。病院在職中に、栄養褥瘡委員会や糖尿病委員会を兼務し、認定薬剤師を取得。その後、調剤併設ドラッグストアや在宅専門薬局で管理薬剤師を務める。2016年9月より池袋セルフメディケーション開局。

 

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ドラッグストア業界とは?

ドラッグストア業界について、最初に簡単な定義をご紹介します。総務省の日本標準産業分類類によると、ドラッグストアは、“主として医薬品,化粧品を中心とした健康及び美容に関する各種の商品を中心として,家庭用品,加工食品などの最寄り品をセルフサービス方式によって小売する事業所をいう”と定義されています。

 

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ドラックストアの業態

取扱品目を大まかに分類すると、調剤薬・OTC薬(※)、化粧品、日用品・家庭用品、食品などです。食品や家庭用品などの取り扱いは、時代の変化にともなって販売がスタートしました。
最近ではコンビニなどと提携したドラックストアや、調剤併設のドラックストアなどが増えてきており、変化や進化に富んだ業態となっています。

※OTC薬…一般用医薬品といい、薬局やドラッグストアなどで販売されている医薬品

 

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国内ドラッグストアにおける薬販売の変化

日本では、2009年の薬事法改正によってOTC薬販売の規制緩和が行われました。OTC薬はおおまかに第1種〜第3種に分けられ、薬剤師以外でも販売できるものが増えました。さらに薬剤師以外の薬の専門家として登録販売者が誕生したのです。一般用医薬品のおよそ9割以上がドラックストア以外でも販売できるようになり、大きな変化を遂げました。M&A(企業合併や吸収)の動きも盛んに起こり、利益率の良いPB医薬品(※)も開発され、大手企業がそれぞれシェアの寡占化に取り組んでいます。

※PB医薬品…ドラッグストアによるプライベートブランドの医薬品。

 

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セルフメディケーションによる医療分野への領域拡大

また、近年では医療費の増加が顕著に表れた影響により、セルフメディケーション(※)の概念が浸透してきました。予防医学の観点でもその動きは重要なことで、ドラッグストアはセルフメディケーションと直結し大きな役目・期待を担っています。さらに調剤を行う店舗(調剤併設)が増加し、医療分野にも拡大している動きがみえます。このような変化に伴い、営業時間も長時間型にシフトしていきました。昔よりもドラッグストアで働く薬剤師が増えたことも関係します。

※セルフメディケーション…「自分の健康に責任をもち、軽度な不調は自分で手当てをする」という考え方。

 

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ドラックストア市場規模の予想と将来像

ドラッグストア業界の市場規模成長率は好調で、今後も、高齢者の増加、セルフメディケーションの浸透でドラッグストアの規模は拡大し、さらに盛り上がる流れでしょう。今後は調剤機能が付加されたように、さらなる機能が付加されると予想します。日本のドラッグストアがアメリカのような本来のドラックストアの姿に近づいており、さらなる活躍が期待されます。

先述したPB商品の開発のほかに、インバウンド需要の増加も関係しています。俗にいう”爆買い”です。最近では爆買い自体減少傾向にあります。しかしそれでも、今後訪日観光客がさらに増えることを考えると、無視はできない大きな市場です。医薬品の他に食品なども売り上げに関与しており、他業種との価格競争の効果もあります。店頭販売以外に、EC販売も増加しており、競争はさらに激化すると考えられます。今後は、調剤薬局グループもドラッグストア業界を意識することが増えるでしょう。

 

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世界のドラッグストアの状況

世界をみると、国によって薬局の在り方は大きく違います。ヨーロッパのような店舗が小さく調剤や小物がメインのリーテル(小売)タイプ、アメリカ合衆国のようにスーパーと調剤薬局が一体化したドラックストアの2つに分けられます。

実はドラックストアは大資本と規制緩和が必要なため、普及してる国は意外と少なく、アジアでも最近目にするようになったなという感覚です。ベトナムのように規制が厳しく、ドラックストアを作るのが難しい国もたくさんあります。

将来のドラックストア市場の方向性予測

状況的に、日本はアメリカを追っていくものだと考えます。1901年に建てられたウォルグリーン1号店(アメリカ)は最初に誕生したドラッグストアだとされています。当初ドラッグストアは都心に集中していましたが、住宅が郊外へ広がった結果、ドラッグストアも郊外へと移った歴史があります。今の日本の現状が、1980年代の米国ドラッグストアの状況によく似ています。最近では日本でも郊外に出店する店舗を多く見るようになりました。それに伴い、取り扱い商品にも変化があり、家庭向けに日用雑貨用品を扱うなど品数と種類が増えています。最終的に日本のドラッグストアは、大資本の調剤併設ドラックストアと個人の調剤薬局が点在する今のアメリカの形に近づいていくと予想します。

ドラッグストアでの働きがい

私はこれまで、薬剤師として病院、薬局、ドラックストアなど、ほとんどの小売業態で働いたこと経験があります。その中でも一番やりがいを感じたのがドラックストアでした。

ドラックストアにおける働きがいは薬剤師の選択や自由度が高い点です。その分、責任を感じることは病院や薬局よりも多くありました。

医師の指示に基づいた行動が前提である病院や薬局などとは違い、お客さんから相談を受けたり、自分の判断で薬の提案をしたりすることが多くありました。場合によっては医療用医薬品の飲み合わせなどを判断することもあります。こうした対応をするには、医療用医薬品とOTC医薬品、双方の知識が必要です。

 

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部門から考えるドラッグストアにおけるキャリア選択

多くのドラッグストアでは、基本的に「調剤部門」「ドラックストア部門」の2部門に分かれています。どちらの部門に属するかによって、その後のキャリア、転職のしやすさが変わります。そのため会社だけでなく、自分の将来をも考えた上で、「調剤部門」「ドラックストア部門」のどちらを志望するか考えた方が良いかもしれません。

調剤部門の特徴

調剤部門に属していれば、調剤薬局へ転職がしやすいです。薬局業界では調剤歴で給与が変わってくるため、このあたりはしっかりと意識しておきましょう。

ドラッグストア部門の特徴

ドラックストア部門に属していれば管理職に登用されやすくなります。また社員、アルバイト、パートの方など、いろいろな方とコミュニケーションを取る必要があるためマネジメント力も非常に鍛えられます。さらに医薬品やOTC薬の知識や能力もあるため、薬剤業界以外の転職も有利になる可能性があります。

 

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勤務地から考えるドラッグストアにおけるキャリア選択

忙しさや働き方などの労働環境は、店舗が「都心型」「郊外型」で変わります。本内容については、自身の体験をもとにご説明させていただきます。

都心型の特徴

まず都心型については、「マツモトキヨシ」「ダイコク」などの都市部の薬局を想像していただくと、分かりやすいかと思います。店舗が比較的狭く、薬剤師はレジに配置されることが多いです。多くのお客さんが来店されるため、常にレジから離れることができません。相談などがあってもレジには常に他のお客さんがいる状況のため、短時間で効率的に服薬指導をする能力が求められるのが特徴です。その一方で、忙しい仕事を通して店員同士の連帯感が生まれ、飲み会なども結構ある楽しい勤務でした。調剤が併設になってることも多く、同時にいろいろなことをこなさなければならないため、能力アップなどを考えると都心型店舗の方が良いと思います。

郊外型の特徴

郊外型の店舗は「ウエルシア」「コスモス」「ドラックストアモリ」などを想像していただくと、分かりやすいかと思います。店舗が広く、調剤併設をしているお店も多いです。

駐車場を併設しているため、自動車通勤が許可されることもあります。郊外店の特徴として、パートの主婦の比率が多い点です。1人当たりの勤務時間が短かかったり、限られていたりするため、シフトを組むのは1日掛かりの作業でした。所属しているパートが多いと、一度に大人数のシフトを扱うこともあります。この経験はとても良い経験で、起業やほかの業種で働くときにも非常に役に立つと思います。

 

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本記事の監修者

淺田真奈(あさだまな)

大学時代は接客のアルバイトを3つかけもちし、接客コンテストで全店1位になった経験をもつ。新卒では地方創生系の会社に入社をし、スイーツ専門店の立ち上げからマネジメントを経験。その後、レバレジーズへ中途入社。現在はキャリアチケットのアドバイザーとして、学生のキャリア支援で学生満足度年間1位と事業部のベストセールスを受賞し、リーダーとしてメンバーのマネジメントを行っている。

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