「就活ってどう進めれば良いの?」「自己分析のやり方がわからない」「面接で落ちてしまう」……など、就活に悩みはつきもの。レバレジーズの執行役員・間山が就活生のお悩みにズバッとお答えします!
私は将来、新しい事業を立ち上げたいと思っています。新しい事業を立ち上げ、それを持続させるために必要だと思う能力や大切にしていてること、意識して行っていることがあったら教えてください。
アドバイザー
間山 哲規(まやま・あきのり)
レバレジーズ株式会社 執行役員。若年層就職支援サービス「ハタラクティブ」、アパレル業界特化人材サービス「FASSIONE」、新卒向け就職支援サービス「キャリアチケット」など主に若年層のキャリアに関わる複数事業を統括。YouTubeチャンネル『就活トーク』『キャリアチケット』出演中。Twitter:@aki_mayama
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「創業と守成いずれが難きや」から言えること
皆さんは「創業と守成いずれが難きや」という一節を聞いたことはありますか? これは中国の古典『貞観政要』に登場する言葉です。有名なエピソードなので聞いたことがある人もいるかもしれませんが、簡単に説明しますね。
『貞観政要』は、「貞観の治」という、中国の歴史上もっとも安定していた時代、唐の第二代皇帝・太宗と、その家臣たちの対話が編纂された書籍です。ちなみに、『貞観政要』は北条政子や徳川家康が好んだ書物としても有名で、解説した本がいくつも出ているので、興味のある方はぜひ手に取ってみてください。
さて、「創業守成」として有名な部分は、唐の建国後、建国前から太宗の腹心だった房玄齢(ぼげんれい)と、もともとは政争の相手であり兄の腹心だった魏徴(ぎちょう)に対し、太宗が問いかけをしているシーンです。
原文(書き下し分ではありますが)では
「草創と守成といずれか難き」
となります。
これを現代風に、かつ、ビジネス風に言うと下記のように直すことができます。
「事業を作るのと、事業を維持発展させるのはどちらが難しい?」
ベンチャー企業で働く人や、これから働きたいと考えている人にぐっさりと刺さるテーマですね。
「創業守成」という言葉は、一般的には「物事を新しく始めるよりも、始めたことを軌道に乗せ、それを維持していくことのほうが難しい」という意味で用いられることが多いのですが、この問いに対し、2人の腹心はそれぞれこう答えます。
(※「国」を「会社」に置き換え、現代風にわかりやすいよう訳してみました)
創業から太宗を支える房玄齢は、
これに対し、房玄齢よりあとに太宗に仕えることになった、いわゆる中途入社の魏徴は、
と回答します。
この2人の答えに対し、太宗は故事成語として使われるような「そうだそうだ、創業より守成だ」といった浅い回答はしていません。
魏徴は魏徴で、今まさに俺と事業を安定させようとしているからそれに対するリスクを考え、維持していくことの大変さを知っているよね。
だから、どっちの意見にも俺は納得する。
ただ、創業期の困難な状況は過去の話。過去を懐かしむのは今じゃなくて良い。
今はこの会社をいかに大きくしていくか、より多くの価値をどう生み出していくか、俺は、2人と一緒にそれを考えていきたいと思っている。
「いやいや、そもそも太宗がどっちが難しいかを聞いたのでは……?」と思う方もいるかもしれません。ただ、このように双方の感情に配慮しつつも自分たちがなすべきことを明示しそれに集中する、これは優れたリーダーシップを持つ太宗ならではの返答だと思います。私もそんな太宗のような人になりたいです。
さて、このように事業を作ることとそれを維持拡大していくこと、どちらが難しいかというのは1000年以上も前から議論されています。結論を出すのは難しいですが、質問者さんは、おそらく新規事業の立ち上げに強い興味をお持ちだと思いますので、その前提で必要だと思う能力や私が大切にしていること、意識して行っていることをお答えします。
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事業を立ち上げるために必要なこと
すごく当たり前の回答になりますが、まず、立ち上げようとする事業が「誰のどんな問題を解決しようとしているのか」という点が重要です。新規事業開発に興味はあるものの、実際にまだ事業を立ち上げた経験のない方は、「新規事業の開発」を目的としてしまうことも少なくありません。
経験からの体感ですが、新規事業の開発を目的とすると、新規事業はきちんと立ち上がらないことが多いです。
筆者の前職の話で、本業が好調なとき、利益を投資に回すべく新規事業開発を担当とする方を中途で何名も採用し、その方々に新規事業の開発をお願いしたことがありました。採用した方々はそれぞれが経験豊富であったのにもかかわらず、その多くは事業として立ち上がらず、結局元々いた社員が提案し、開発した事業のみが上手くいったということがありました。
新規事業を開発したいのは事業を提供する会社の都合でしかありません。そして、そういった新規事業の多くは日の目を見ずに失敗に終わることが多いです。そもそも、会社の都合ではなく、きちんと社会に必要とされ、人々に必要とされるサービスでなければ事業を立ち上げるに値しない、とも個人的には考えています。
これは、事業を立ち上げるうえで私が大切にしていることですが、私がこれまで開発した事業は、特定の「誰か」(これを「ペルソナ」と言いますが)の課題を直接的に解決するために作ったものが多くあります。例えば、フリーターや第二新卒支援を行う「ハタラクティブ」は、筆者自身、フリーターだった過去の自分にとって「あったらいいな」と作られたサービスだったりします。
しかし、残念なことに世の中の企画される新規事業の多くは、必ずしも新たに立ち上げる必要性のない、新規事業のための新規事業です。
一番大切なマインドや能力とは
では、事業を立ち上げるにあたって、必要とされる能力についてもお話ししましょう。細かく言うと、立ち上げようとする事業や投資可能な資金、プロジェクトの規模によって異なりますし、本当にさまざまな能力や知識が必要とされます。情報収集力、交渉力、リーダーシップ、論理的思考力、プレゼン力、プロジェクトマネジメント力など、さまざまです。正直、能力や知識はあればあるだけ事業の成功確率は上がっていくものと思いますが、あえて1つに絞るとすると、私は「折れない心」が必要だと考えています(精神論ですみません)。
会社によっては新規事業における撤退ルールが定められていたりしますが、「事業の失敗」は「その事業が継続できなくなること」です。そして多くの場合、新規事業の開発担当者が自分で停止を決めるのではなく、決裁者によって事業停止や撤退の決断がなされます。
しかし、それを「甘んじて受け入れてしまう」ということは、自分でも上手くいかないことを心のどこかで認めてしまっているということです。事業の持つ可能性と、事業が成功し、より多くの人に貢献できる未来を信じているのであれば、決裁者と交渉して追加投資の約束を取り付けることも不可能ではありません。
ちなみに、私が立ち上げた事業のうち、前述の「ハタラクティブ」も、サービス立ち上げ当初は、なかなか軌道に乗らず困難な状況にありました。しかし、事業開始から数年後、その状況を乗り越え飛躍的に成長し、今ではフリーター支援領域において国内最大規模のサービスに成長しています。
もちろん自分の力どころか、メンバーのおかげであり、投資を継続してくれた会社のおかげであり、事業コンセプトに共感し、支援してくれるクライアント企業のおかげで、それに加えて運の要素も欠かせなかったと思っています。
事業の失敗は事業が停止したときに確定します。仮にまだ赤字だとしても、スポンサーとして資金提供している人がいるかぎり、事業は成功の途中とも言えるでしょう。そのため、新規事業に関わるうえで一番大切な素養は、「自分たちの事業の成功を信じ、周囲のステークホルダーを説得し、事業を存続させるための強い気持ち」を持っているかどうかです。
もちろん、事業を成功に導くためにはさまざまな能力や知識が必要です。しかし、まずはこの「折れない心」を一番に大切にしていただきたいと思います。
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