就職コンサルタントの福島直樹です。今回はエントリーシート(ES)の中で最も問われることの多い、「学生時代に力を入れたこと・学んだこと(ガクチカ)」についてお話しします。
志望動機や自己PRと比べると、ガクチカは比較的書きやすいと感じる方が多いのではないでしょうか?
そのため、学生は自分が経験したことをその通りに書いてしまいがちです。しかし、そのまま書くことで結果的に説得力のないESが大量生産されてしまっている印象があります。当然のように人気企業の書類選考では通りません。
今回は、私の長年の経験から編み出したESの書き方のコツをお伝えします。これからお話しする3つのポイントを実践することで書類選考の通過率は上がるはずです。
福島 直樹(ふくしま・なおき)
就職コンサルタントとして就職・採用にかかわる執筆、講演活動を行う。また、企業の採用コンサルティングでは、戦略立案、選考実施なども担当。『就職ジャーナル』、『DODA』、東京商工会議所ウェブサイト、NHK、フジテレビ、FM東京、J-WAVE等の番組、CF出演。主な著作は『学歴フィルター』(小学館新書)など28冊。就活漫画『銀のアンカー』(集英社)では監修を担当。年間160回を超える講演を行う。
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採用担当者はガクチカをどのように評価しているか?
まずは、人事がガクチカをどのように評価しているのか、基準を考えてみましょう。ガクチカの質問の意図は次のように説明できます。
・主体性を発揮した(頑張った)経験の有無や内容を確認したい(事実確認)
・本当に主体性を発揮したなら仕事でも発揮するだろう(再現性期待)
ではまず、この評価基準を踏まえて次の例を読んでみましょう。あなたが採用担当者だったらどのように評価しますか?
私は飲食店のアルバイトに打ち込みました。当初は覚えなければならないことがたくさんあり、なかなか覚えられずに苦労しました。わからないことだらけでしたが、疑問に思ったときはそのままにしておかずに、すぐに社員の方に質問して理解して仕事を覚えていきました。その結果、ひと通りの仕事をスムーズにこなせるようになりました。この積極的に取り組む姿勢で、どんな仕事にもチャレンジし貴社に貢献していきたいと考えています。
いかがでしょうか?「主体的に頑張った経験が具体的に書かれており、良いと思います」
そう感じる人もいるでしょう。
ところが人気企業の採用担当者はそうは考えません。
「ありふれていますね。このようなガクチカが非常に多いです。だから本当に頑張ったかどうかわかりません」
残念ながら、このレベルのガクチカでは評価されないのです。ここからわかることは次の2点です。
・ほとんどの就活生が、頑張った経験を具体的に書いている
・ただし、具体的に書くだけでは人気企業では評価されない
ではどうすれば良いのでしょうか?
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表に書き出すことでガクチカの組み立て方が見えてくる
私はガクチカの書き方には3つのポイントがあると考えています。まず下の「福島式Wプロセスシート」を読み、表の例に沿って自分でも書き出してみましょう。
シートに書き出したことを組み合わせると自然と説得力のあるガクチカが作成できるので、ぜひ活用してください。
<福島式Wプロセスシート>
①学生時代に力を入れたことの概要 | |
行動プロセス 具体的な行動とは? |
・学業、実習での作品づくり |
意識プロセス 目的意識、目標、動機は? |
・極めて優秀な先輩がおり、同様な作品を作りたいと真剣に思った |
②困難を感じた経験 | |
行動プロセス 具体的な行動とは? |
・自分の好きなものを好きなように作った ・しかし先生から高い評価は得られず |
意識プロセス どんな気持ちだったか |
・作っているときは楽しかったが評価は低くてがっかり ・自己満足で作品を作っても喜んでくれないことがわかり悔しかった |
③その困難を乗り越えた経験 | |
行動プロセス 具体的な行動とは? |
・作品のコンセプト(誰のため?何のための作品?)をじっくり考え直した。 ・先生と相談してコンセプトを決めて作り直した ・すると仲間や先生から高い評価を得た |
意識プロセス どんな気持ちだったか |
・コンセプトを考えているときは本当に苦しかった。何度も逃げたくなった ・しかし高い評価を得たとき、最高の充実感を感じた。 ・この学校に入って本当に良かったと感じた |
④経験から発見した「成果を出すコツ」「自分の信念やポリシー」=学んだこと | |
行動面 成果を出すコツ |
・自己満足で作品を作っても人は喜んでくれないことがある ・明確なコンセプトが質の高い作品を生む |
意識面 自分の信念やポリシー |
・「自己満足の作品づくり」より、「他人が喜んでくれる作品づくり」のほうが喜びが大きい ・初めはつらくても、頑張れば後で良いことがある |
ポイント1:「どんな目的意識で頑張ったか?」をアピールする
ここからは表の例をもとに、ガクチカをスムーズに書くためのポイントを3つ紹介していきます。
まずは表の①にある「意識プロセス」を見てください。
「極めて優秀な先輩がおり、この人のような作品を作りたいと真剣に思った」
という部分から人事は以下のようなことを読み取り、好印象を受けます。
・明確な目的意識を持って学生生活を過ごしてきた学生のようだ(事実確認)
・入社後も自分なりの目的意識を見つけて頑張ってくれるのでは?(再現性期待)
しかし、「どう考えても何の目的意識も動機も思いつかない」という人もいるでしょう。その場合は次のことを実践しましょう。
ポイント2:「成果を出すコツ・成果を出すために得たスキル」をアピールする
通常、多くの学生はガクチカの結論部分である「学んだこと」を次のように書きます。
「やればできる、ということを学んだ」
「人との信頼関係の重要性を学んだ」
ところが残念ながら、これら一般的な表現は実際に頑張っていない学生でも簡単に書けます。厳密に言うなら、「学んだ」のではなく、「感じた」だけです。
「やればできると言うなら、どうやったらできたのか、コツや獲得したスキルを教えてほしい」
「この程度では、本当に頑張ったとは思えない」
このように面接官は不満を感じています。よって感想を述べる書き方になってしまうと人気企業の書類選考は通りにくくなります。
そこで非常におすすめしたいのが、「自分の経験を通して、成果を出すためのコツやスキルを獲得したかどうか」を書くことです。
表の④の「行動面」を見てください。
「明確なコンセプトが質の高い作品を生む」
これは、質の高い作品を生むためには「明確なコンセプト」を立てればよいという学びを得たということです。
さきほどの「やればできると学んだ」と書くよりも、より具体的で説得力があることがわかります。
そして面接官も、
・これほど説得力のある言葉を発見したのなら、本当に頑張ったのだろう(事実確認)
・経験から法則性を発見したということは、当社の仕事でも成果を出すのでは?(再現性期待)
と、高く評価する可能性があります。自分の経験を深く振り返って、そのときどんな学びを得たのかを考えてみましょう。
ポイント3:「発見した信念やポリシー」をアピールする
ここまでで説明した2つのポイントを読んでも上手く書けないと言う人もいるかもしれません。その場合は、自分の経験からどんな思いが生まれたのかを言葉にし、ガクチカの「学んだこと」として書いてください。表の④の「意識面」に注目しましょう。
「自己満足の作品づくりより、他人が喜んでくれる作品づくりのほうが喜びが大きい」
「初めはつらくても、頑張れば後で良いことがある」
この表現から、学生の作品づくりへの熱い思い、信念、ポリシーのようなものが伝わってきます。
・自分なりの信念を持って作品を作ったということは本当に頑張ったに違いない(事実確認)
・入社後は同様に熱い思いを持って仕事に取り組んでくれるだろう(再現性期待)
面接官はこのようにいい印象を抱くはずです。
以上が、私が10年以上かけて考えた効果的なガクチカの書き方です。この3つのポイントを押さえることでガクチカがスムーズに書けるようになるはずです。次回はESの志望動機の書き方について説明します。
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