「就活」は誰もが手探りで始め、正解がないからこそ、分からないことや不安がつきまといがち。でも、一足先に乗り切った経験者の言葉のなかには不安を解決するヒントが隠れているかもしれません。
今回話を聞いたのはこのお2人(いずれも仮名)。
原さん(19卒 広告業界・営業)
4月に内定が出るも就職活動を続け、7月中頃に現在の会社に内定。受けた選考は200社超。
木村さん(19卒 建築業界・施工管理)
美大卒。4年の1月から本格的に就活を始め、2月に内定獲得して就活終了。
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もし1年前に戻れるなら…
――さっそく聞いていきます。まずは「1年前に戻れるなら、どんな就活してますか」?20卒として就職活動をするなら、春はどんな風に就活を進めていきますか。
まずは業界を絞る・何に興味があるか、を洗い出す
エントリーの締め切りに注意しながら、志望業界を絞る。自己分析や企業分析を進めていくうちに「この業界に興味を持った」と言ってももう遅いので。
たしかに。私も理想を言えば、3月までに「自分が何に興味があるか」を知っておいたほうが良かったかなとは思います。自分はどんなことを楽しいと感じて、心躍るのかを日頃から考えておいたほうが良かったかなと。
――自分に合う仕事や業界を探す以前に、ということですか?
私自身は志望業界・業種が全く分からなくて、立ち止まっていました。卒業制作に追われていたこともあり、就活に十分な時間を割けなかったんです。
でも4年の5月頃に自分のやりたいことが分かってきて、いざ企業を見ようと思ったらすでに選考が終わってしまっていて。そもそも企業数が少ない業界だったので、諦めざるを得ませんでした。
やっぱり、やりたい業種とかもちゃんと早い段階で探しておくべきだったなって思います。
――もう少し早く意識してたら良かったかも、っていうところでしょうか。
面接慣れできるように早めにエントリー
私はもう少し早く面接慣れをしておけば良かったな、と思います。知らない人と喋ると声が震えるし、人と話すのは得意じゃないと自覚していたので。
面接を受け出してた頃は慣れてないせいもあって、いつも「他の就活生より劣ってるな」ってヘコんでました。でも面接の回数を重ねた5月ぐらいに、「あの質問にはこう返せば良かったんだ」って思う余裕がができてきたんですね。
だから私みたいに、「面接が苦手だ」って自覚がある人は早めに準備をしておくのをおすすめします。志望業界が決まっていなくても、選考を受けて場慣れするとか。
――何度も面接をしていくうちに慣れたんですね。
100社目にいくかいかないかの頃から、面接での話の流れが分かるようになってきて、ゲームの攻略みたいになりました(笑)
――ゲーム感覚!あとで詳しく聞かせてください。
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就活を進めていくうちに業界や職種の軸が固まりはじめた
――お2人とも「自分のやりたいことや志望を洗い出していく」って言ってましたね。志望業界・職種の軸はどのように絞っていったんですか?
就活解禁した3月に、第1志望だったアパレル業界にエントリーしたものの全部落ちてしまって。
4月に内定をいただいた会社もありましたが、仕事内容を聞いたり色々イメージを膨らませていくなかで「本当にいいのかな」って悩んでしまったんです。ただこれをきっかけに、より深く業界や企業を調べるようになったように思います。
そこからは消去法で絞っていきました。やりたいことがはっきりしていなかったから、toB/toCという軸で各業界を分けていって、その中で知っている業界を見ていきました。
私も「ちょっと嫌だな」と思う職種を除いてから、自分にできそうなことを探していきました。
アルバイトでやっていた接客はあまり興味を持てないし、パソコンに向かって黙々と作業する仕事はちょっと違うな、と考えた結果、接客とは違う形で人と関わる仕事に行き着いた感じです。
人と関わってコミュニケーションするのは嫌いじゃないから、挑戦してみたいなと。目移りしちゃうタイプなので、自分のやりたいことに関われる業界は「ここだ!」って分かったら、集中的に調べたりして。
飲食のアルバイトをしてたから、なんか分かるかも。私は総合職の就職で「営業か事務か?」を考えたら営業をやりたい、と思っていましたし、対面かつtoBの営業ができるかどうかを基準に見ていきました。自分のやりたいことはどの業界にあるかを照らし合わせていったら広告業界に行き着いた、という感じです。
――選択肢を広げすぎず、自分に合いそう・やりたいことから絞っていったと。
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代表者のSNSや口コミサイトで情報収集
――説明会に行ったり、選考が始まる前はどのように情報を集めてましたか?自分で探したりとか、人に相談したりとか。
インターネットです。ナビサイトや大学に届いた求人を見たり、転職者向けの口コミサイトを見たりしてました。
私もほぼインターネット。志望企業が定まってからは、代表の方のSNSをチェックして、発信の内容や、どのようなビジョンを描いてるのかを見てました。最終面接で代表の方に「SNSの投稿見てました!」って言うとけっこう喜んでくれたりしてましたね。
緊張しがちな私にとっては、事前に顔や考え方が分かるのでそういう意味でも役立ったかなと。
――代表の方の人となりが分かれば安心できますよね。
就活体験談サイトも見てはいたんですが、そこまで参考にならなかったな、と。「面接官が怖かった」って口コミのあった企業の面接に行ってみたら、自分はそう感じなかった、という経験もありました。投稿内容はあくまで投稿者の思ったことですし、感じ方は人それぞれなので。
私は転職者向けの企業口コミサイトで、働く時間や福利厚生、社風とかを見ていました。実は内定をいただいた企業の口コミにはあまり良くないことも書いてあったのですが、選考で行ったときとの印象と違うな、とは感じました。その違いも勉強になるっていうか。
――口コミは鵜呑みにしすぎない、というところでしょうか。
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面接は場慣れすれば、ゲームの攻略と一緒
――面接の準備で困ったことってありますか。
はじめは「どんな質問が来るか分からないから怖い」って思っていましたが、200社受けたうちの半分の面接が終わったくらいから、話の流れがわかるようになってきたように感じます。
面接を受けた直後に「あの質問はこういう意図だったんだ」とか「あの自己PRで良かったんだな」とか気づくことが増えたりして。面接に流れがある、って気づいてからは怖くなくなりました。
予測どおりの質問がきたら、こっちのもの。それこそ「ガクチカが聞かれたから、次はこの質問かこの質問が来る!」っていうように、最後の方はゲームをクリアする感覚でしたね(笑)1次選考は型が決まっていて、志望動機とか自己PRとかあらかじめ用意していた解答を言うことが多かったように感じます。選考が進むにつれて、臨機応変な対応が求められた印象です。
だから面接経験を積んで、場慣れすることは大事。
企業が採用したいのは「良い子」ではなく一緒に働きたい人
――面接に臨むうえで、心がけていたことはありますか。
直接は関係ないかもしれませんが2つあります。
まず、マップアプリを信じ過ぎちゃいけないということ。建物名じゃなくて住所を控えて、検索したほうがいいです。会場たどりつけなかったとき本当に焦ります。
もう1つは、挨拶をちゃんとすること。会社にで他の人を見かけたら、積極的に挨拶をしてました。
人事の方って、そういうところを見てくださっていて「さっき挨拶してたね」って面接中に言われたことも何度かありました。面接の空間だけ気をつけるんじゃなくて、会場に行くまでの振る舞いもちょっと気を張ったほうがいい。
それこそ挨拶に近い部分で、コミュニケーションが大事だな、っていうのは私も感じました。面接も作り込むんじゃなくて、素を出せたらいいんじゃないかと思います。
――「選考に通りたいから素を出したらいけない」って気持ちを持つ学生、少なからずいると思います。木村さんは素を出してっていいのかな、という心配はありませんでしたか。
あまりなかったですね。企業は「良い子」じゃなくて、一緒に働きたい学生を採りたいはず。「いい学生」になろうと必死になってガチガチになるよりは、自然体で人当たりが良いほうが印象は良いだろうとは思っていました。
ちょっと敬語を間違ってしまっただけで不合格にする、っていうのはそれまでの会社なんだなって思うぐらいでいいんじゃないかな。
「就活生だから◯◯すべき」は気にしすぎなくて良い
――「就活生は◯◯しないといけない」「面接ではこう振る舞うべきだ」とか聞きますよね。
就活を終えた今だから、自分を作り込み過ぎるのはよくないなって思えます。就活生はこうあるべきだ、という思い込みや風潮にとらわれて自分をアピールできずに、機械的な対応になっちゃう。それでもし内定をいただいても、入社後にギャップを感じるかもしれない。
ある会社の面接で「今時の子って髪を暗く染めて、ポニーテールに同じスーツで機械みたい。同じ格好をしてたら、その人の良さは分かんないよね」って言われてはっとしました。
多分面接官の人も「いつもはこういう子じゃないんだろうな」って気づいているし、無理にみんなに合わせようとしなくていいのかなって。
たしかに、就活始めた頃は「どうしよう」と思っていろいろ調べてましたけど(笑)
私も最初は他の学生と違うことが怖くて、バッグまで一緒にしてました。パンプスも全部一緒にしないとって思っちゃいました。
ささいなことだから、気を使いすぎなくていいのに。
最初はみんなそう思うだろうし、マナーはあるけど、気にするのはそこじゃないと。
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就活で役立ったもの・役立たなかったものは?
――就活支援イベントやサービスは使いました?
4年の5月頃、大学のキャリアセンターに行ったら「何もやってないの、どうするの」って言われちゃって。どうにかする方法を聞きに来たんだけどな…という気持ちになりました。
うちは美大だったからか就活している人自体が少なく、あまり協力的ではなかった。卒業後はフリーランスや教授のつてで働いている人もいたぐらいなので、そもそもあまり力を入れてなかったのかもしれません。
私もキャリアセンターは使わなかったですね。地元の友達から「就活エージェントがいいよ」って聞いたこともあり、エージェントを3つくらい使いました。
就活エージェントはいろんな「手間」をなくしてくれる
――初めて就活エージェントに行ったタイミングはいつでしたか?
3月前でした。就活解禁前後からナビサイトを使って志望業界にはエントリーして、平行してエージェントを使い始めました。
自分で企業を探す手間が省けたのは良かったと思います。自分で企業をひとつずつ調べて「合う・合わない」を見ていくより、自分の考えに近い企業をアドバイザーの方が勧めてくれます。
あとは就活に関する情報が集まっているのも、エージェントのいいところだと思います。本やネットなど、いろんな媒体を使わないと集まらない情報が全部集められるというか。
――新しい切り口で「自分に合った企業」を知れたり、情報収集ができる、というメリットがあると。木村さんもエージェントを使われたんですよね?
私も「エージェントがいいよ」と聞いていたので、興味を持っていたという感じです。4年の1月に「内定がないんですけど、4月入社したいです。どうにかなりますか?」って初めて相談したのをきっかけに、求人情報や面接対策とぽんぽん進めていただきました。
エージェント選びも大事かなって思います。進展がないときに面談の予約時間に行ったら、担当者がパソコンを触っているだけで終わっちゃった、とかありました。「エージェントに任せてれば安心」っていうわけでもない。
カウンセリングに多く時間を割いてくれるところもあれば、連絡の頻度を抑えて大事なときにだけ連絡してくれる、というエージェントもある。人それぞれ合う会社っていうのはあると思います。
「終わりが見えない自己分析」を避ける
――逆に「やらなくても良かったこと」ってありますか?自己分析を深くやりすぎてかえって自分が分からなくなる、っていう話はよく聞きますが。
自己分析のやりすぎ、あると思います。私はあまりや自己分析やらなかったな。
私はYes/Noで答えていくライトなものから、後日細かな診断結果を返してくれるテストものまでひと通りやりました。でも今となると、代表的なものを2、3受けるだけで良かったかなと思っています。
自己分析の結果をもとに自己PRを考えると思うのですが、たくさん自己分析をしたことで、面接のときに「あのエピソードも話したい」「この強みも言いたい」ってなって失敗したこともあって。深掘りしすぎると、逆に悩んじゃうんですね。企業の面接を受けていくうちに「自己PRはたくさん用意せず、2個くらいあればいい」ってことに気づいた。
――どこで終わりにすれば良かったのでしょう。
私の場合はエージェントの模擬面接でフィードバックしてもらって「使えそうだな」と思ったエピソード2つのどちらかを実際の面接で、ということをやっていました。
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他の学生と比べて悲観しない
――ここまで聞いてきましたが、最後に、お2人から今就活をしている20卒の方、これから準備をはじめる21卒の方に伝えたいことがあれば。
「就活」ってSNSで検索すると「死にたい」「終わらない」「つらい」ってワードが並びますよね。思い通りにいかず心が折れそうになったとき、どうやって乗り切ったんでしょうか。
私は内定を蹴った5月くらいに「どうしよう」って思って。でも悩んでいる時間がもったいなかったから、がむしゃらに会社を受けました。駅でリクルートスーツ着てる人見ると、ちょっと元気出たりして(笑)
4年の2月まで就活をやっていた私からすると、続ければどこかしら内定はもらえると思います。
私自身、自分の想定通りいかないことも多くて就活つらい、と思ったこともめちゃくちゃありました。何も考えないのもよくないですが、まあいっか、って切り替えることも大切です。
見た目の話もしましたが、動き出す時期や進み具合など、まわりの就活生とそんなに比較しなくていいよ、って言いたいです。他人と違うから間違いっていうわけじゃないと思う。
――お2人とも、ありがとうございました!
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