「終身雇用難しい」に、就活生はどう向き合う?#就活のプロに聞くニュース

トヨタの豊田章男社長が、自動車工業会会長の立場として記者会見で語った言葉が波紋を呼んでいます。

「雇用を維持し、税金を払っている企業にとってもう少しインセンティブが出てこないとなかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきたのではないか」
出典:自工会 豊田会長「終身雇用守っていくのは難しい局面」 | NHKニュース

就活に関わる時事ニュースを就活のプロが解説する当企画。今回はトヨタ社長の「終身雇用難しい」発言の就活生や就活そのものに与える影響をエイリスト・酒井一樹さんに聞きました。

このニュースの解説
酒井 一樹(さかい・かずき)

慶應義塾大学在学中、世界初の就活SNS「Dachinco!」の代表に就任。国内最大の就活SNSへと成長させた後に大学を卒業し、エグゼクティブサーチを行う人材ベンチャーに入社。役員・事業責任者などの幹部人材の採用支援に携わる。2009年に株式会社エイリストを設立し「自分の頭で考え、行動する人材を増やすこと」を命題として、就職情報サイト「就活SWOT( https://swot.jp )」を開設。

このコラム3行まとめ


・2019年5月13日、自動車工業会の豊田章男会長が記者会見で発言
・就活時点で「持ち運べるスキルが身につくか?」を意識したい
・直近の就活に大きな影響はないものの、「安定性」の軸での企業選びはできなくなる

ニュース概要:トップ企業や経団連が「終身雇用が難しい」と明言


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多くの人がこのニュースに反応したのは、日本一の売上げを誇るトヨタ代表の発言だから、でしょうか。

酒井 雇用を守る側の企業、しかもトップ企業の代表の方がはっきり言ったから、だと思います。多くの人が「終身雇用が破綻しそうだ」とは気づいていたはずですが、豊田氏にとって明言された。


私自身も、「そこまで言わせてしまったか」というのが率直な感想です。
 

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そういえば、最近だれかも終身雇用について言っていたような……


酒井 この発言の1週間ほど前に、経団連(日本経済団体連合会)の中西会長も同様の発言をされています。
 
「もうだめになりそうな事業を、雇用を維持するために残すようなことをすると、雇用されている人にとって一番不幸」
出典:経団連・中西会長「終身雇用は制度疲労」改めて持論展開:朝日新聞デジタル
「日本企業の強みは終身雇用」と言っていた経団連が、雇用の維持が難しいと言っている。

終身雇用は、企業にとっては「40年縛り」のリスクある雇用契約です。今回の豊田氏の発言とあわせ、終身雇用が足かせになっている現状を認めてしまったわけです。

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中西会長といえば、先月(4月)の発言も話題になりましたね。


酒井 大学側と「通年採用を実施していく」ことの合意が取れた、というニュースも多くの人がご存じだと思います。

就活生への影響:終身雇用がなくなるとどうなる?


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就活生にとって「いいニュース」ではないですね。


酒井 今回の発言は、大半の就活生にとってネガティブに映ると思います。

終身雇用のように安定的な雇用体系があると、新卒で入社してそのまま働き続けてもいいし、環境を変えることもできる。

環境の保証があるうえで選択肢が増えるという意味では、終身雇用は就活生にとって「メリット」なので、今回のニュースはマイナスと捉えられるでしょう。

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ネガティブに映る要因は他にもありますか?


酒井 雇用の保証がないということは、収入の保証がないということ。会社にたとえると「主要取引先がなくなる」といえるかもしれませんね。

最近は兼業や副業の動きもありますが、終身雇用でなくなることで継続的な収入が保証されなくなってしまいます。そうした意味では終身雇用の廃止で、多様な働き方へのハードルが上がってしまうかもしれません。

企業側のコストを意識し、会社を問わず活かせるスキルを身に着けていこう


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この現状を就活生はどう受け止めるべきでしょうか。


酒井 入社前から「リターン以上のものを出す」と考えて動くことが重要です。

新卒から定年まで40年間働くと、企業側は1人あたり約3億円のコストがかかります。それに足る人材であれば問題ないでしょうが、40年間もパフォーマンスを発揮し続けられるかどうかは分からないものです。

もう1つ、「事業に依存しない、持ち運びできるスキルセットを身につける」という意識も持ってほしいと考えています。

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持ち運びできるスキル、ってどういうことでしょう?


酒井 逆の「持ち運びできないスキル」がどんなものか考えてみましょうか。

上司を説得するために、機嫌のとり方を覚える…といったことばかり身につけていっても、他の会社に行ったら通用しなくなるということです。

職種によって異なりますが、そうした「土地勘」のようなものとは違う、他の会社でも活かせるスキルセットを身につけていく必要があるでしょう。

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転職する可能性も大いにありますしね。


酒井 転職だけじゃないですよ。「事業に依存するスキル」しか持っていないと、市場や企業体制の変化に対応できなくなります。

以前はビジネスのサイクルが長く、一つの事業モデルが何十年も続くということもありました。

しかし現在は事業の流行り廃りが激しくなってきて、数年前の花形事業は落ち目になっている。企業にいる人材も、そうした変化に適応していかないといけません。

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就活生の中にも、身につくスキルを重視する人、「安定性」を求める人とバラバラな印象を受けます。


酒井 私の肌感覚では、就活を始めた時期によって、就活生が「2極化」しているように思います。

キャリアプランや身につけるスキルを明確にして早く就活を始めた層と、スケジュールに合わせて動き出す層。後者は「安定した会社で働きたい」という意識がまだまだ強いように思います。

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今後就活はどう変わっていくんでしょうか。新卒採用でも総合職って枠組みがなくなる、とか……?


酒井 新卒一括採用がなくなり、解雇規制が緩やかになっても、一部の理系採用を除いて「総合職」のような枠組みは急に変わらないでしょう。

欧米のように卒業後にインターンをしてから入社、という流れはすぐにできず、限られた変化に留まると思います。

安定性だけで企業を選ばず、後悔のない選択を


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すでに内定を持っている人が今回のニュースを聞いて不安になる、ということもありそうですね。


酒井 内定先に迷いがある20卒にとって、今が進路を改めて考え直すいいタイミングかもしれません。6月1日から内々定が出始めると、「断りづらくなる」という学生の声を多く聞きます。

内定を持っていない人も、6月から再募集の波が来るので焦らないでください。追加エントリーを受け付ける企業が出てきますし、今まで内定を取れなかったからといってダメ、というわけではありません。

いずれにせよ、後悔のない選択をできるように動きましょう。

 

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