アン ミカの仕事哲学 −人生に「失敗」という文字はない、「失敗」は学びと発見−

プロフィール
モデル・タレント

1993年にパリコレ初参加以後、モデル・テレビ・ラジオ出演、化粧品プロデュースなど多方面で活躍。世界標準マナーのEPMプロトコールアドバイザー、漢方養生指導士、化粧品検定、NARDアロマテラピーアドバイザーなど19の資格を持つ。

 

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母が教えてくれた「4つの魔法」

間山:まずはじめに、アン ミカさんが「モデル」を目指したきっかけについて教えていただけますか。

子供の頃、ケガをしたことから人前で笑うことが苦手な、コンプレックスだらけの女の子でした。母が私のコンプレックスを解消するために「世の中で美人と言われる人は、目鼻立ちがきれいな人だけじゃなく、一緒にいて心地が良い女性のことなのよ」と言って「姿勢を良くする、相手の目を見る、笑顔でいる、人の話をよく聞く」ことの4つの魔法を教えてくれました。

私がモデルを志したときは、今より背は10センチ低く、体重も13キロ太っていて、部活で肌も日焼けし真っ黒でした。事務所に書類を送れば全部落ちるし、面接では帰らされるばかり。

1つの事務所に、5回ほど書類を送りましたが、ついに3回目から返信が返ってこなくなり「写真写りが悪いので、実物の私を見てください!」と事務所に電話をしました。笑

実際に事務所に行きましたが「実物もちょっと。」と言われて落とされたんですけどね。笑

でも、たまたま事務所の社長さんが私を面接してくれて、帰り際にお世辞で「いつでも遊びに来てね」と言ってくれたんです。まだ子供だった私は、それを真に受けて、毎週事務所に遊びにいくようになり、事務所の名物中学生になりました。



事務所に遊びにいくようになって2ヶ月が経った頃でしょうか。”12人のレッスン生で最後を競う、モデルオーディション”がありました。レッスン生に欠員が出て、その話を聞いた私は「出させて欲しい」と事務所に懇願しました。事務所からは「12人の中に入る訳ではなく、レッスンだけ受けさせてあげる」と言われ、12人の中に入ることは出来ませんでしたが、レッスン生になることができたことは自分の中で大きかったですね。

間山:1度、落ちたら諦めてしまう人が多い中、5回はすごいですね。

そうですね。昔から「これ!」と決めたら少し粘り強い所があって。その頃、母は病に倒れ急速に弱っていて、お医者さんに「いつ亡くなってもおかしくない状態です」と告げられた後で、母は3ヶ月間頑張ってくれました。ぎりぎりレッスンも3ヶ月で終了し、母に報告できたことは、親孝行できたんじゃないかなと思います。

自分で言うのは少しおこがましいですが、3ヶ月レッスンして、ウォーキングが他のモデルより抜群に上手かったんです。笑 だけど「顔が特別に可愛い訳じゃないからスチール撮影のモデルは無理」「背が特別に高くないからウォーキングが上手くてもしょうがない」と言われショックでしたね。「でもこんなに努力している子みたことないから、高校を卒業するまで、ヤング部という子供の部に所属していいけど、高校卒業したらモデルになったことがあるということを履歴書に書いて、就職した方がいいと思う」と言われました。

その通り高校を卒業するまで、これでもかっていうほどのオーディションを受けましたが、全然受からない毎日が続き…。服飾専門学校でレオタードを着てヒールで一時間、同じポーズで立ちっぱなしのデッサンモデルの仕事ばかりでした。
 



間山:そのような状況で、どんなきっかけがあって、モデルとしての仕事が増えてきたんですか。

 

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「働くなら、家を出て欲しい」、父と交わした約束

そのあと父にも進路の相談をしました。大学進学を目指すことも迷いましたが、モデルをやりたい気持ちと家が貧しかったこともあり、今すぐにでも働きたかったんです。

働くといってもモデルの仕事はほとんどなく、社会にいち早く出て何か仕事をしながらモデルをやりたかったのですが、父は”大学に行ってほしい”という想いが強くて。

兄は進学校に行ったのにも関わらず、大学に行かずに働いてくれたので、私だけが大学に行くという気持ちにもなれず、「自分も働きたい!」と言ったら「それじゃあ、高校卒業と同時に家を出てほしい。」と父に言われてびっくりしました。

家を出る際「一流モデルになるまで家に帰ってこない」「新聞を読んで、社会の動向を見て、自分の役に立ちそうな資格を取れば、連絡してきていいよ」と約束をし、家を出されました。

でもやっぱり、大人が言うことは当たっていて。社会経験が少なかったので、わからないことばかりで。家を出てからも、一応モデルの仕事をやってましたが「似合うと好き」とか「格好いいモデル」というモデルに執拗な感覚が全く分からないまま、1年をアルバイトに費やしてしまったんです。


結局、自称モデルだけど事務所にも所属していないし、フリーランスで受けに行くオーディション先もない、という虚しい状態が続きました。このままじゃダメだと思い「一流モデルになるってなんだろう」と考えたときに、真っ先に「パリコレ」だと思ったんです。

ちょうど世の中はスーパーモデルブーム。雑誌にもスーパーモデルの所属先の情報が載っていました。大阪の御堂筋に、イケてる美容院がいっぱいあり、そこに入って「誰かパリコレ行った人いませんか?」と、美容院に聞き周り、一人パリコレについて詳しい人がいたので、その人を頼ってパリに行きました。

間山:すごい行動力ですね。でも、うまく行ったわけではないと。
 


そうですね。時代ももちろん付いてきていなかったし、自分に魅力もなかった。時代というところでは、アジア人の需要がほぼなくて、事務所にアジア人モデルは1人いれば良かったんです。

ほとんどの事務所に「うちは白人専門です、有色人種はいりませんと」と言われました。
ただ、3つの事務所だけ見てくれることになったんですが、2つは門前払い、1つはアポイントまで取ったのに「あなたは会う資格がない」と帰るように言われて…。でも、私は「帰りません!」と事務所の前で粘りました。


「またパリに挑戦するために自分の至らない点を教えて欲しい」とお願いしたら、意外と丁寧に教えてくれて。「あなたが着ている服は肌の色に合っていないし、形も合っていない。服も個性も死んでいる」「デザイナーが魂を込めて作った服を着て、数十秒ワンウォークで終わる世界を、あなたに任せるわけにはいかない」と現実を突きつけられました。
 

 

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好きと似合うは違う、ファッションを通して学んだこと

「日本に帰って、色はピンクベースとイエローベースに分かれる」「自分の肌にはどのメイクや服が合うのかしっかり勉強しなさい」「高級ブティックに入ってみなさい!あなたがどんな品格を備えているかで店員さんの態度も違いますよ」と。

「次に逆に若めのファッションを扱っているお店では、あなたが一番センスがいいと思う店員さんに「どっちが似合うか」と服を提示して聞くか、店員さんに自分に似合う服を持ってきてもらい、自分が好きなものと似合うは違うことを自覚しなさい」と。
 


そのとき、とある大阪のモデル事務所にすごく入りたかったんです。その事務所のマネージャーの方が私のことをすごく気に入ってくださったんですが、事務所の社長から「悪いけど、8キロ痩せたら入れてあげる」と言われ、3ヶ月で10キロ痩せて事務所に出向いたら「痩せたけど、やっぱりタイプが違うから無理」と言われて、絶望に陥ったのを今でも覚えています。笑

でも、そのマネージャーが「痩せたら入れてあげるというのを私は聞いていたので、彼女をフリーランスで登録させてオーディション情報を流してあげて欲しい。オーディションに受かったらパーセンテージを払う形にしてあげて。」と、お願いしてくれたんです。

事務所の子と一緒にオーディションに行く権利をもらったんですが、先輩からのいじめなどもあって、すごく辛かったのを今でも覚えています。でも、先輩達に「この事務所に、あの子を入れてもいい」と言ってもらえるようになるには「人一倍努力して、格好良くなって、どこかで活躍するしかない」という思いは強くありました。


間山:お仕事全般もそうですよね。さっきの「好きと似合うは違う」みたいな所も。まずは「自分のできることを増やしてくことが大事」と、後輩や部下にも伝えています。自分ができることと自分がしたいことが一致しているのが一番の幸せだと思いますが、あまりないですよね。

 


 よく「○○先輩に憧れて、私もその部署に行きたい」と言う方がいますが、その仕事は”あなたには向いていない”ということもあるじゃないですか。やはり会社では「向き・不向き」で仕事を分けた方が、お互いハッピーになると思うんですよね。

で、どうしてもやりたかったら自分が鬼程スキルを磨くことしかない、それしかないと思います。

間山:就職とかもそうですね。今の学生の就職活動は、人気の企業から受けていく傾向にあります。我々も、学生とのカウンセリングで「いい会社に入るのはすごく大事だと思いますが、その会社にビリで入るよりも、自分が活躍できる会社に入った方が幸せであること」
「評価で、毎回一番悪い評価をもらうよりも、自分が活躍できる企業が自分の成長に繋がること」を伝えますが、実体験がない学生だとあまりこの言葉は刺さらなくて、難しいところはありますね。


後編へ続く

 

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