【企業比較】かんたん解説!IRから読み解く「三菱ケミカル」と「富士フイルム」

就活を進めるうえで、企業研究は避けて通れません。でも、「イチから始めるとなると時間がかかってめんどくさい…」そう思ったことはありませんか?

そこで、この企画ではそんな就活生のために、企業のIR情報(※)や決算説明資料を比較し、知っておいてほしい情報だけをピックアップしてお届けします。

今回取り上げるのは「三菱ケミカル」と「富士フイルム」。化学業界を目指す就活生はぜひチェックして、志望動機の作成にご活用ください!

※IR(Investor Relations)情報とは、企業が株主や投資家向けに経営や財務状況など投資の判断に必要な情報をまとめたものです。

 

目 次
 

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「三菱ケミカル」と「富士フイルム」ってどんな会社?


今回は化学業界の2大巨頭、「三菱ケミカル」と「富士フイルム」を比較していきます。

まずは会社概要や各社の事業を見ていきましょう。

三菱ケミカルは機能製品がメインとなり、世界中に広く価値提供しています。一方、富士フイルムはフィルム事業の技術を活かし、製品とそのソリューションも提供する包括的な支援が特徴的です。
 

三菱ケミカルの強みについて

三菱ケミカルは「Sustainability」「Health」「Comfort」という3つの価値基準で、環境・社会問題を起点とした価値創造サイクルの推進を図っており、素材や機能商品などさまざまな製品を提供しています。あらゆる産業の基盤を支えるとともに、生み出した商品で社会課題の解決に貢献するソリューションを提供する企業です。

三菱ケミカルの事業は主に「①機能製品」「②素材」「③ヘルスケア」の3つのセグメントに分かれています。分野としては、自動車・航空機分野、IT・エレクトロニクスディスプレイ分野、ヘルスケア分野、環境・エネルギー分野などがあります。3つのセグメントの中で関連する分野同士が関わりあったり、三菱ケミカルホールディングスのネットワークを活用したりして、海外展開の強化を加速させているところが三菱ケミカルの強みと言えるでしょう。

次の図はフォーカスする市場と関連するセグメントを表しています。
 

富士フイルムの強みについて

富士フイルムは「Value from Innovation」をスローガンに、人々の心が躍る革新的な「技術」「製品」「サービス」を提供しています。富士フイルムは創業以来、写真事業・フィルム事業で培った技術を応用し、幅広く事業展開しています。事業は主に「①ヘルスケア&マテリアルズ」「②ドキュメント」「③イメージング」の3つに分類されます。
 

事業ごとに細かく見ると、ヘルスケア、医薬品、フォトイメージング、記録メディア、高機能材料分野など、さまざまな分野があります。いずれも製品の製造だけでなく、その運用方法や製品を活用したソリューションも提供しており、包括的に企業の課題解決を支援していますが、富士フイルムの強みはなんといっても写真フィルムなどで培ってきた技術力にあり、技術力を活かした多角的な展開が同社の魅力になります。
 

 

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三菱ケミカルと富士フイルムの動向


化学業界は景気や石油の価格などに大きく左右される業界です。多くの企業が自動車などのモビリティ事業への投資をしていましたが、コロナウイルスの影響により自動車産業は一時生産取り止めなどが相次ぎました。しかし、三菱ケミカルと富士フイルムの両社は高い技術力を活かし、ヘルスケア分野へ注力していたようです。

では、それぞれの動向を見ていきましょう。

三菱ケミカルの動向

まずは三菱ケミカルの「2021年3月期第2四半期決算説明」の資料を見ていきましょう。

三菱ケミカルの売上収益のうち、前年よりプラスになっているのはヘルスケアセグメント、前年よりマイナスになっているのは機能製品と素材セグメントとなっています。3つのセグメント別の動向は次のとおりです。
 

①機能製品

コロナウイルスの影響で自動車向け製品の販売数量は減少しました。その影響で前年同期比50%以上の減益となっています。

②素材

ケミカルズ分野では販売数量の減少や原料価格の下落に伴い、販売価格も低下し減益しています。産業ガス分野ではエレクトロニクス関連向けのガスは堅調に推移したものの、国内外の需要が総じて減衰したため減収となっています。

③ヘルスケア

薬価改定などの影響で国内医療用医薬品の減少はあったものの、重点品の販売数量は伸長し、前年同期並みの収益に。また、コロナウイルスの影響で活動自粛が続いたため販売費や研究開発費が減少し、全体としては増益となっています。
 
21/3月期 上期実績 20/3月期 上期実績  増減
 全社  546  1,308  △762
 機能商品  215  401  △186
 ケミカルズ  △146  359  △505
 ヘルスケア  136  106  31
 

富士フイルムの動向


続いて、富士フイルムです。「2021年3月期第2四半期決算説明会」を参考に見ていきましょう。

富士フイルムは売上高や営業利益ともに、ヘルスケア分野は伸びており、ドキュメントセグメントやイメージングドキュメントにおいては減少しています。

①ヘルスケア&マテリアルズ

コロナウイルスの影響で全体の売上は減少したものの、再生医療が好調なヘルスケア領域、マテリアルズ領域では高機能材料分野が増収となっています。営業利益としても増収しており、徹底的なコスト削減により増益しています。

②ドキュメント

オフィスプロダクト&プリンター分野では、営業活動などの稼働低下はあったものの、在宅勤務が浸透したことでコンビニのマルチコピー機を利用した「ネットプリントサービス」の需要が拡大しています。
ただし、売上で見るとコロナウイルスの影響とアジア通貨安によって減収しているようです。

 ③イメージング

フォトイメージング分野は、コロナウイルスの影響によりカラーペーパーの需要は減少しましたが、「チェキ」の販売台数は前年よりも増加しています。

光学デバイス分野では、イベント自粛の影響によりシネマ用レンズが販売減に。また、世界的に自動車の需要が減ったことで、車載レンズの売上も減少しています。ただ、営業利益としては減益するも、コロナウイルスの影響を除くと前年同等の水準となっています。
 
 セグメント  売上高  対前年度  営業利益  対前年度
 ヘルスケア&マテリアルズ  4,733  -199  458  8(+1.6%)
 ドキュメント  4,102  -751  283  -266(-48.4%)
 イメージング  1,139  -402(-26.1%)  -21  -122(赤字化)
 

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三菱ケミカルと富士フイルムの今後の見通し


どちらも共通する部分として挙げられるのは、海外マーケットまで市場を広げ、事業拡大している点です。IR資料を見ると、2社ともこれまで培ってきた技術と海外企業の強みを組み合わせ、事業拡大する方針のようです。

三菱ケミカルの今後

三菱ケミカルの中期経営計画「APTSIS 20」を見ると、主に次の2つに取り組んでいくことが分かります。
 
1. グローバル市場の拡大やマーケティング力の強化
2. DXなどの次世代テーマの早期事業化

また、三菱ケミカルは注力事業において次のような戦略を立てています。

 

富士フイルムの今後

統合報告書によると、中期経営計画(「Sustainable Value Plan2030」)を実現するために、5つの企業価値と3つの事業領域を組み合わせ、社会課題の解決に貢献する製品やサービスを提供することが掲げられています。

富士フイルムの戦略は具体的に次の3つです。
 

 

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化学業界で求められる人物とは?


化学業界では景気や石油価格に左右される業界のため、変化に柔軟に対応できる能力が求められます。また、技術職系と総合職系ではそれぞれ次のようなスキルが必要になります。

  技術職系  
・専門分野の知識や技術力
・常に学び続ける勤勉さ
・より良い製品を追求する追求心や改善力

  総合職系  
・変化に対応できる柔軟性
・コミュニケーション能力
・言語力

さて、今回は「三菱ケミカル」と「富士フイルム」のIR情報や企業ホームページをから、企業研究に役立つ情報を抜粋してまとめました。ここで紹介した内容はほんの一部です。科学業界について「もっと詳しく知りたい!」という人や自分の志望する企業がある人は、ぜひ各社の企業ホームページをチェックしてみてください。

   

この記事を書いたキャリアアドバイザー

平林 亜美(ひらばやし・あみ)

学生時代は体育会チアリーディング部に所属し、全国11位を獲得。学部間留学としてマレーシアに留学し、国際関係学を学ぶ。若手にも裁量がある企業で、多くの人々と関わり合いながら自分自身を成長させたいと考え、「どこでも、誰とでも働ける人材となる」を軸に就活し、レバレジーズに入社を決める。現在は、新卒人材紹介サービス「キャリアチケット」でのキャリアコンサルタントとして学生の支援を行う。

 

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