初めましての人も、いつもTwitterで「#会計クイズ」に参加していただいている方もこんにちは。
大手町のランダムウォーカーです。
本記事の執筆者
大手町のランダムウォーカー
公認会計士試験合格後、大手監査法人のアドバイザリー部門にて勤務。その後、株式会社Fundaを設立。年間300社以上の有価証券報告書や決算資料を読む中で得た知見を活かし、初心者でも会計が楽しく学べる「#会計クイズ」を作成。Twitterでは2万人以上のフォロワーが、毎週出題される#会計クイズに参加している。
Twitter:@OTE_WALK
今回は有価証券報告書の概要や、その利用方法について詳しく解説していきたいと思います。
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復習:有価証券報告書とはどんなものか
前回は有価証券報告書はどのようなものかということを簡単に解説しました。
【有価証券報告書の読み方 #1】就活生の企業分析には「有価証券報告書」が最適
簡単に復習しておくと、有価証券報告書は法令に基づいて上場会社等が作成する企業の事業の実績等を記載する書類です。
あわせて、就活生が有価証券報告書を読めるようになると、以下のようなメリットがあることも紹介しました。
・公認会計士や監査法人が監査に入っているため、第三者の目で嘘偽りないことが証明されている
・型が決まっているため、1度読み方を覚えたらさまざまな企業分析に応用できる
今回は、実際の有価証券報告書を使って、どのような項目が有価証券報告書に記載されているのかについて見てみます。
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有価証券報告書の記載内容
さて、皆さんは、有価証券報告書を実際に目にしたことがあるでしょうか。
会計士や税理士、経理部にいる方はもちろん実際の有価証券報告書を見たことがあるかと思いますが、私も恥ずかしながら、公認会計士試験に合格するまで実物を見たことはありませんでした。
記載内容が多く、敬遠されがちですが、じっくり腰を据えて企業のことを知るには重要な書類ですので、ぜひ読む力をつけていきましょう!
有価証券報告書は大まかに見ていくと、第一部「企業情報」と第二部「提出会社の保証会社等の状況」、そして監査をしている監査法人等の「監査報告書」に分かれています。
第一部「企業情報」は主要な情報が記載されており、企業分析を行う際の要となります。今後はこの第一部「企業情報」をメインに分析していきます!
では、実際に記載事項を見ていきましょう。
これが第一部の記載内容です。一見、かなり項目が多いですが、重要な記載は第1~第5にあります。
まず、タイトル通りとはなりますが、「第1 企業の概況」では、企業の概況がつかめます。
例えば、売上高や経常利益などのざっくりした情報、設立はいつか、どのようなM&Aがあったか、事業内容や、グループ企業、そして従業員数、平均年収などの情報が記載されています。
次に、「第2 事業の状況」です。
事業の状況は、今後の経営方針や対処すべき課題、会社によるポジション、方向性などの説明がなされています。このため、今後の方向性などをつかみたいときは、事業の状況を確認すると良いかもしれません。
特に「事業上の課題やリスク」、「経営者による業績の分析」は大幅な黒字達成や赤字を出した際などに確認してみると原因が分かるかもしれません。
また、研究開発型の会社だと、現在どのような研究開発が進行しているかなどについての状況も確認することが可能です。
次に「第3 設備の状況」です。
当期や今後の設備投資の状況、予定、計画などが確認できます。
マザーズ市場に多いIT企業等では記載内容が少ないことが多いですが、伝統的な会社で固定資産ビジネスをしている会社にとっての利益の源泉はいうまでもなく「固定資産」です。
固定資産を管理している姿勢や減損の状況は、企業の将来的な利益ひいてはビジネスの方向性を予測するヒントとなります。
そのため、こうしたビジネスの有価証券報告書を見る際には、この部分を確認することが重要です。
例えば、ANAホールディングスの「設備の状況」には、飛行機などに関する情報がたくさん記載されています。
次に、「第4 提出会社の状況」です。
株式や資本政策の状況などが確認できます。
自己株式※1の取得状況や配当政策などの状況などが記されたり、役員の状況やコーポレートガバナンス※2の構築のためにどのような組織設計をしているかが分かります。
※1 自社で保有している株式
※2 企業が円滑に経営を行えるよう、社内全体を管理する仕組みのこと
また、役員の状況については、各役員の経歴などが確認できます。社外役員などは他の会社の有名役員だったり、元有名な官僚だったりと、意識して見てみると楽しいかもしれません。
次に「第5 経理の状況」です。
ここが有価証券報告書のキモといってもいいかもしれません。
貸借対照表(BS)、損益決算書(PL)、株主資本等変動計算書(SS)、キャッシュ・フロー計算書(CF)等といった各種の財務諸表のほか、その財務諸表を読むうえでの各種の注意書き(会計基準など)が記されることになります。
毎回の会計クイズなどの情報の多くはこの経理の状況に記載されている内容から作成されています。
最後に、「第6 提出会社の状況」や「第7 提出会社の参考情報」は主に事務的な事項(株主総会の開催場所等)が記されています。
ここは就活生にとって有用な情報は少ないため、読み飛ばしていただいて問題はなく、今回の解説でも省略させていただきます!
さて、ここまでの事項をまとめてみましょう。
工場を作って顧客に製品を売っている会社の場合、上記のようなビジネスフローが想定されますが、それぞれ1~5の部分を有価証券報告書の各章で見ることができます。
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有価証券報告書の探し方
さて、有価証券報告書を読んでみたくなってきましたか?
最後に、有価証券報告書の探し方を少し解説しておきます(^^)
有価証券報告書を探す方法は主に2つあります。
まずは手順A、「EDINET」または「TDnet」を利用する方法の解説です。
有価証券報告書を含む各種開示書類はデータベース化され、投資家などが確認できるようにシステム化されています。
金融庁が提供しているサービスがEDINET、そして東京証券取引所が提供しているサービスがTDnetです。いずれのサービスも参照しているデータは同じなのでどちらを利用しても良いかと思います。
もうひとつの手順Bは、(上場会社であれば)HPなどにある「投資家向け情報(IR情報)」のリンクから有価証券報告書を見る方法です。
今回は例として、ANAホールディングス株式会社(以下、ANA)さんの有価証券報告書を探してみます。
大まかな手順は上記の①~⑤の通りです。
まずは何と言ってもGoogle検索です。
検索を行うと何件か似通った情報が出てきましたが、企業情報のページにアクセスしてみましょう。
どの企業情報サイトも、株主向け情報・投資家向け情報などといったページを用意しているので、企業サイトにアクセス後は、そのようなボタンがあればクリックしてみてください。
ANAの場合も株主・投資家情報というものがあるので押下しましょう。
決算短信や説明会資料などの項目が何個か出てきましたが、左下、有価証券報告書のページにアクセスすれば確認できそうですね。
さて、先ほどの左下をクリックすると確認できる資料の一覧が出てきました。
有価証券報告書のリンクをクリックしてみると、お目当ての有価証券報告書が出てきました。
補足ですが、IRサイトには決算説明会資料というものもあることがほとんどです。
決算説明資料では、決算の要点やその他、有価証券報告書に記載がされていない情報等についても確認することが可能です。
このため、有価証券報告書だけではなく、決算説明資料も見る癖をつけると、より会社の実態がつかめてくるはずです。
長くなってしまいましたが、今回は有価証券報告書の読み方と探し方について解説しました!
気になる企業について調べたいときは、「〇〇社 事業内容」などと検索してしまいがちですが、まずは有価証券報告書を見る癖をつけることによって、均一のフォーマットで事業を理解することができるため、慣れてくるとスピーディーに事業内容を理解することができるようになります!
事業内容と数字を結び付けて深い分析ができるようになり、それを就活の面接の中で話すことができれば、一目置かれる存在になること間違いなしでしょう!
それではまた。
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