最近、「人手不足」が叫ばれ、「採用しようとしても採れない」という企業側の嘆きが報道されることが多くなりました。こういった状況は、学生側にとっては「超売り手市場」として見えているかもしれません。しかし、大手や人気企業にとっては、いつでも「超買い手市場」なのです。売手市場だからと言って、あなたが大手企業を志望した場合、希望の企業に就職できるとは限りません。
それに、現在は、流れの早いグローバル社会になっているがゆえ、大企業でも国境を超えた再編が行われ、合併・吸収されていくことが頻繁に起こりえます。就職活動においても、これからの経済社会がどのように変わっていくかという視点を持ち、大手や人気企業にこだわらず、しっかりと企業を選ぶことが必要です。ここでは、企業規模ごとの採用数や離職率の推移をもとに、就活を取り巻く環境を把握するとともに、情報をキャッチしていくためにはどうすればよいか、解説していきます。本記事の執筆者
新卒採用コンサルタント。学生に対しても、「社会人基礎力」や「勝つエントリーシート作成法」で内定を取れるよう就活を支援。著書に、『新卒がすぐに辞めない採用方法』(経営書院)。プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®、NPO日本プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー協会理事としての顔を持ち、女性のキャリア形成支援やシニア起業支援を行う「顧問塾」の運営にも携わる。
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大手企業が難関なのは、変わりなし
まず、大手や人気企業の就職状況について、見ていきましょう。2019年度のデータでは、就職人気ランキングに登場する上場企業のうち、採用人数が多い企業上位200社の合計採用予定数は、5.5万人でした(出所:東洋経済新報社『就職四季報2019年度版』より)。そして、2019年度卒の大学生は、56万7千人(出所:文部科学省『学校基本調査』)。すでに、ここで約50万人があふれてしまっているのです。また、いわゆるブランド大学といわれる早慶、旧帝大、東工大、一橋大、東京外大だけでも、毎年約4.2万人もの卒業生がいます。ブランド大以外の学生だけでなく、ブランド大学生にとっても、競争がさらに激しくなっている傾向にあります。
このランキングでは、1位にみずほフィナンシャル・グループ、2位には三菱東京UFJ銀行、5位に三井住友銀行が選ばれていました 。これらメガバンクは3社とも、採用人数を昨年より、大幅に減らしています。みずほフィナンシャルグループが1880人から約500人減、三菱東京UFJ銀行が1250人から200人減、三井住友銀行は1450人から4割にあたる650人減という数字になっています。来年以降の採用でも銀行は採用数を減らしていく可能性が高いでしょう。
支店を減らしていく銀行の構造的な転換もありますが、事務職を絞っていく傾向は、どの業界、企業にも当てはまります。単純かつルーティンワークが多い事務の仕事は、ITに取って代わられやすく、合理化が求められるようになるとますます少なくなっていくといえるでしょう。現在でも事務職は、人件費の調整をしやすくするために、非正規化が進んでいるのが実情です。
そのようなことから、今後は、人員が少ない分、任される範囲が広い中小企業に比べ、仕事を分業化している大手企業の方が、新卒で事務職を採るケースが少なくなっていきます。また、ITなどに代替しやすい事務職は、リストラ対象となることも考えられるでしょう。そのようなことにならないよう、自分の強みを見極めてキャリア形成していくことが、ますます求められる時代になっているといえます。
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超売り手市場なのは、中小企業のみ
経産省の定義によると、日本の全企業数は381万社。大企業はそのうち1.1万社にすぎません。つまり、99%が中小企業だということです(出所:2017年版中小企業白書)。中小企業として定義される従業員数は、300人以下となっています。ここでは、従業員規模別に離職率(新卒入社後3年以内の離職率)について見てみましょう。以下が、平成27年3月卒の離職率です。
従業員数 | 離職率 |
5人未満 | 57.00% |
5人~29人 | 49.30% |
30人~99人 | 39.00% |
100人~499人 | 31.90% |
500人~999人 | 29.60% |
1,000人以上 | 24.20% |
(出所:厚生労働省『新規大卒就職者の事業所規模別離職状況』)
残念ながら、従業員規模が小さくなるにつれ、新卒で入社しても、一人前に育つ前に辞める人が多くなる傾向が読み取れます。特に従業員数30人未満の企業の現場では、3年以内に半数が辞めていってしまっているので、これでは慢性的な人手不足に陥ることも考えられます。採ってもすぐに辞めてしまう、さらには募集しても人が集まらない…そのような現状があるため、中小企業は超売り手市場といえるのです。
また、業種別の離職率を一部見てみると、インフラと言われる「鉱業・採石業・砂利採取業」は12.4%、「電気・ガス・熱供給・水道業」は10.8%と、いずれも低い値となっています。これらの業種は、ほぼ、大企業が占めているので、離職率が低くなっているといえます。(出所:厚生労働省『新規大卒就職者の産業分類別就職後3年以内の離職率の推移』)
ただし、従業員規模だけでは判断できない部分もあります。中小企業の中にも、「冠企業」の子会社があるためです。冠企業とは、いわゆる大手企業のことで、たとえば財閥系(三菱、三井、住友など)やNTT、トヨタなど、グループ会社を多くもつ企業のこと。こういった大手の子会社は、親会社の社風と似通っており、じっくりと新人を育ててくれる風土の企業が多く、離職率も低い傾向にあります。
「競争があまり好きではない。きちんと育ててくれる企業に就職したい」と考える方には、冠企業の子会社の本選考にトライすることをお薦めします。また、就職活動時には、比較的内定を取りやすい冠企業の子会社での内定を取ってから、傾向が似ているであろう本丸の冠企業に挑戦するという戦略もあります。
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早目に動き出して、職業観を養うべし
「就活は、一番準備できたものが勝つ!」それに尽きます。筆者は、採用代行で面接官をしているのですが、毎年感心するのは、就活の早い時期に上位20%の学生たちが、5枚、10枚と内定書を獲得して、独占していくのです。まさに、早く準備してほかの学生よりも少しだけ社会人マインドが形成できた人材が勝っていくということです。
また、就活ルールが廃止となりそうな今、企業が一斉にエントリー受付を開始することはなく、各社それぞれ従来よりも早めのスケジュールで選考を開始することが想定されます。これを読んでいるあなたも、今すぐできるところから行動して早く準備に取り組みましょう。
まずは、「調べる」というところから始めてみることをオススメします。「大変そうだな」とは思わずに、自分の輝かしい未来を創るためと思えば、調べ方も変わってくるでしょう。最初は、業界研究・職種研究について調べることが挙げられます。業界研究・職種研究を行う目的は、自分に合った仕事を見つけるためです。どのような業界があるのかを知り、その中で、自分の興味があるものはないかを絞り込んでいきましょう。
業界を決めたら、企業・業種を絞り、さらに掘り下げ、そして、企業の理解、職種の理解、仕事の理解を深めてみましょう。たとえば、営業の仕事といってもさまざまな形態があります。誰が顧客なのか、法人なのか、個人なのか。何を売るのか、商品なのか、サービスなのか。どのように売るのか、対面なのか、オンラインなのか。そして、自分のどのような能力をどのように生かして、どのような職種について力を発揮していきたいのかを同時に考えることも必要です。
では、情報源としてはどんなものがあるでしょうか。以下に、情報源として活用したいものの一例を挙げていきます。これらの情報源をチェックして、業界研究・職種研究を重ねていくことが就職成功への道筋となるでしょう。
・就職関連サイト
・会社案内(パンフレット)
・企業のホームページ
・新聞
・ビジネス雑誌
・ビジネス書籍
・就職情報誌
・就職四季報
・日経会社情報などもあります。
また、その会社の担当者と会えるものとしては、 以下の通りです。
・会社説明会
・会社セミナー
・就職ガイダンスなど
ほかにも、インターンシップは、ぜひ積極的に参加してください。OBOG訪問で先輩に話を聞きましょう。大事なことは、情報収集を幅広く行うことです。学生の視点での憧れやイメージよりも、広い世界があるはずです。
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まとめ
大企業への就職が難関であることは、いつの時代も変わりはありません。簡単に内定がもらえるかのような「売り手市場」という言葉に惑わされず、しっかりとこれからの将来を見据えて、就活に取り組んでいってください。その企業の理念に賛同して、この企業とともに成長し、社会に貢献したいと思える企業と出会うまで、採用担当者、経営者と話しましょう。遠慮することはありません。就活があなたの社会人としての人生を創る一歩となるように応援しています。
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