就活のよくある質問は『就職四季報』で解決できる。悩み別見るべきポイントを紹介

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初めまして。エフと申します。普段はニコニコ動画やYouTube、ツイッターで、就職や労働等キャリアに関する情報を発信しています。

ネット上でこういった活動を始めて3年ほどになりますが、特にこの時期(3月)は、就職活動に関する問い合わせを多くいただきます。

例えば現役就活生からだと、
「○○業界を志望しているのですが、文系だと就職できないんですか?」とか、
「学歴ロンダリングのために大学院進学を考えているのですが、良い就職ができますよね?」とか、
「○○の会社は学歴フィルターが強いって本当ですか?」とか。

また現役高校生からは、
「大学って行かないと就職できないんですか?」とか、
「○○業界に行きたいのですが理系学部で大丈夫ですか?」とか、
「○○大学って就職が良いんですか?1(悪いんですか?)」とか…。

こういったご質問をいただいたとき、僕はこう返信することが多いです。
「まずは『就職四季報総合版』を読んでみたらどうでしょうか」と。
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出典:就職四季報 総合版2020年版 | 東洋経済STORE

今回の記事は、そんな就職四季報総合版の読み方について解説していこうと思います。
僕のところに届く“ありがちな質問”について、就職四季報総合版のどこを読めばいいのか質疑応答形式でお伝えしていきます。
 
本記事の執筆者
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エフ

キャリアコンサルタントYouTuberです。主にYouTube、ニコニコ動画、Twitterで活動しています。一応キャリアコンサルタントの国家資格を持ってますが、学生の皆さんからすると「だから何?」って感じでしょうし、僕も同感です。

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目 次
 

25卒の就活について相談したい

 

はじめに:なぜ就職四季報を読むべきなのか


高校生も大学生も、就職活動に関する情報収集をしたことのある人は、こう思ったことがないでしょうか。

「何の情報を信じていいか分からない」と。

気持ちは分かります。それくらい、就職活動に関する情報は錯綜していますから。

就職活動って、ひと括りにできないことばかりなんです。例えば、「高卒」と「大卒」では、応募可能な企業、職種、選考ルートなどが違います。当然対策も異なるのです。

また「大卒」の中でも、「学部(文系・理系)」によって違うこともあれば、「職種(例:総合職と一般職)」で違うこともあります。 さらに就職活動のスケジュールは過去何度も変わっていますので、年代により常識が違います (ちなみに僕が就職活動をした頃は、選考解禁が4月でした。それがこの数年で、6月になり、8月になり、また6月に戻りました。今後も変わるでしょう)。

つまり就職活動に関する情報は、まずこういった前提(学歴、学部、職種、年代等)を整理して、その中から自分に合ったものを取捨選択する必要があります。インターネット上ではさまざまな方々が情報を発信していますから、結果として情報が錯綜してしまうというわけです。

就職四季報総合版は、基本的に「学士・修士卒」の「事務系・技術系総合職採用」に関する情報がまとめられています。毎年発刊されていますから、常に直近の情報です。

ですから、「学士・修士生」で、「主要企業」に、「総合職」での就職を志望される方、また大学受験を控えた高校生にとって参考になる書籍だと思います。

特にデータ(文・理系別採用数や総合職の平均年収、3年以内離職率等)が大量掲載されていますので、本当か嘘か分からない抽象論ではなく、疑いようもない客観的事実を確認できます。

ここからは相談時にいただいた質問に答えていきます。

25卒の就活について相談したい

 

①○○大学って就職大丈夫ですか?学歴フィルターで大手企業には就職不可能ですか?


学部までは不明ですが、各企業の採用実績校は就職四季報総合版の「4月入社者の採用実績校」の欄で公開されています。

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出典:『就職四季報総合版2020年版』(東洋経済新報社)

就職四季報総合版2020の掲載企業は1286社ですが、そのうち日経225企業2(このうち就職四季報に掲載されているのは217社)の公開度をグラフにしたのがこちらです。

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※1.本グラフの日経225企業は、2019年3月5日時点のものです。 ※2.日経225企業のうち採用活動を行っていない持ち株会社は、傘下中核企業の採用情報を参照しています(例:三菱UFJフィナンシャルグループ→三菱UFJ銀行) ※3.就職四季報総合版2020に掲載されている日経225企業(※2に該当する場合は傘下中核企業)は217社であったため、本グラフは217社の集計。

就職四季報総合版2020によれば、日経225企業(掲載217社)のうち、47.5%は採用実績校を完全公開しています。
また、文系・理系別に採用大学名を一部公開している企業も41%存在します。完全非公開は11.5%です。

学歴フィルターを疑う前に、まずはその大学(または似たようなレベル帯の大学)から採用事例があるか確認してみましょう。

僕は低偏差値大学の就職状況を長年見てきましたが、そういった大学の学生でも、大手企業に総合職で就職する事例は毎年あります。 学歴フィルターが存在しないとは言いませんが、巷(主にネット)で言われているほどではありません。

低偏差値大学の学生が面接前に落選する理由の多くは、エントリーシートの文章が酷かったり(日本語が間違っている、接続詞や助詞などの使い方がおかしい、質問の答えになっていないなどがありがちです)、筆記試験で足切りされたりするからです。

つまり、学力不足。

それを「面接すら受けられなかった」と言って、学歴フィルター扱いしてしまう学生がいるわけです。

25卒の就活について相談したい

 

②文系(理系)が就職不利(有利)って本当ですか?


こちらもよくあるご質問です。
「理系だから就職は余裕」、「文系だから就職は厳しい」みたいな噂を聞くらしいですね。

これについても、就職四季報総合版の「男女・文理別採用実績」に、主要企業の文・理系別採用者数が掲載されています。

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出典:『就職四季報総合版2020年版』(東洋経済新報社)

文・理系別採用者数の情報公開度は非常に高く、日経225企業(掲載217社)の89.9%が完全公開しています。

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実際に見れば分かりますが、文系の就職が厳しいという事実はありません。

ただし、技術系総合職に関しては理系学生を対象としているケースが多く、文系学生はチャンスが少ないです。これは、各社の募集要項を読めば分かる事実。応募条件に「機械系学部」、「工学系学部」などと明記されていることが多いです。

そのため文系学生は、基本的に事務系総合職で就職することが多くなります。

なお、文系学生が技術系総合職で就職することは難しいですが、理系学生が事務系総合職で就職することは難しくありません。そういう意味では、理系学部生の方が選択の幅が広いのかもしれません。

私の経験の範囲では、文理系どちらとも言い難い学部の場合は、一部専門職を除き、多くの学生が文系就職になっています。

以上は一般公募の話で、理系学部生(修士生)には学校推薦もあります。これが、「理系は就職に強い」と言われる理由の1つでしょう。しかしそれも、大学や学部によって推薦可能な企業(職種)に差があるため、一概には言えませんが…。

余談ですが、これらの事実は高校生のうちから知っておくべきです。大学進学時の学部選択は、そのまま就職活動時の企業・職種選択の幅に直結します。

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③就職活動っていつから始まるんですか?3月からとか6月からとか、諸説あって分かりません。

就職四季報総合版には、主要企業の採用スケジュールも掲載されています。
 

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出典:『就職四季報総合版2020年版』(東洋経済新報社)

日経225企業(うち掲載217社)の選考スケジュールから作成した、選考開始月を表すグラフがこちら。

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グラフを見る限り、少なくとも日経225企業(うち掲載217社)の場合、88%の企業は3月から選考開始しているようです。ですから、こういった企業への就職を目指すならば、3~4月にはエントリーシートと筆記試験対策を完了させておくのが無難でしょう。

また、選考終了月を表すグラフがこちら。

日経225企業(うち掲載217社)の場合、6月までに5割強、7月には約7割が選考終了していると分かります。夏頃には大勢が決するということです。

しかし実は、夏~冬の中・長期インターン組が3月前に早期選考を受けるケース、経団連未所属企業(ベンチャーや外資系企業が有名)の青田買いもありますので、事実上の就職活動は3年生の夏には始まっています。

ですから個人的には、3、4月から就職活動を始めるのは「遅い」と考えています。致命傷とも言えませんが。たまに「就職活動なんて遅く始めても大丈夫だよ」なんて言う方々もいますが、ベターではないと思います。

21卒の方はもちろん、大学1、2年の皆さんも上記のような事実をちゃんと把握して、就職活動のスケジュールを組み立ててください。
(あくまで2019年時点の選考スケジュールです。就活ルールは過去何度も変わっており、その度に選考スケジュールも変化しています)

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④筆記試験の種類がたくさんあって混乱しています。何を対策すればいいんですか?


もし業界・企業がある程度定まっているなら、就職四季報総合版の「試験情報」欄を読んでみればいいと思います。
各社が出題する筆記試験が書いてありますよ。

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出典:『就職四季報総合版2020年版』(東洋経済新報社)
 

日経225企業(掲載217社)の場合、44.2%が試験名を公開しています。
54.8%の企業は試験名までは公開していませんが、「テストセンター形式」か「ウェブテスティング形式」かなど、一部情報公開しています。
業界・企業さえ決まっているなら、出題される問題を確認した方が効率的に対策できるでしょう。

まぁ各社の出題試験を見る限り、「SPI3」と「玉手箱」が頻出ですね。企業によっては「GAB」や「eF-1g」、「TG-WEB」などの試験を採用していますので、SPI3と玉手箱対策をしたから万全というわけでもないですが。

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⑤平均年収ってアテになりますか?さまざまな職種の平均なんですよね?


おっしゃる通りで、有価証券報告書などで公開されている「平均年収(平均年間給与)」は、さまざまな職種の平均で算出されていることが多いです。

ですから、総合職で就職する方々にとっては参考にならないこともしばしば。

しかしありがたいことに、就職四季報総合版には、総合職の平均年収が掲載されています。

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出典:『就職四季報総合版2020年版』(東洋経済新報社)
 

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日経225企業(うち掲載217社)の公開率は53%と低めですが、志望先によっては参考になるでしょう。

例えば住友不動産の場合、2018年3月期有価証券報告書に記載されている平均年収は約649万円。一方で、就職四季報総合版2020に掲載されている“総合職”の平均年収は1,222万円です。2倍近く差があります。

これはかなり極端な例ですが、会社全体の平均年収と、総合職の平均年収に百万円単位の差があるケースはざらです。

大学生の皆さんは、ぜひ"総合職"の平均年収を参考にしましょう。

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⑥将来は民間企業で働くつもりなのですが、大学院に行った方がいいですか?


就職四季報総合版には、学士・修士卒別採用者数が掲載されています。

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出典:『就職四季報総合版2020年版』(東洋経済新報社)
日経225企業(うち217社)の完全公開率は92.2%。

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非常に公開度が高い情報なので、民間企業への就職を想定する院進学なら一度は確認してほしいです。

特に文系修士の場合、主要企業の採用数が全体的に少ないことを確認できると思います(研究の道に進むならば関係のない話です)。

低偏差値大学には、学歴ロンダリングを目的として大学院進学を目指す方々がいます。
理系に進むならともかく、文系院卒者の採用状況は芳しくないので、実際のデータを見てから判断していただきたいです。

なお、304社に限っては博士卒の採用数も書いてあります。

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⑦○○業界・企業は激務で退職者ばかりと聞きました!ブラックな業界なのでしょうか?


近年はブラック・ホワイト論争が激しいですが、何をもってそう言うかは主観によるところも大きいので、とりあえず客観的なデータを見てみましょう。
就職四季報総合版には、主要企業の3年後離職率が掲載されています。

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出典:『就職四季報総合版2020年版』(東洋経済新報社)

日経225企業(うち掲載217社)の公開率は79.3%。

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大卒の3年後離職率は平均3割前後ですが、日経225企業に限って言えば、そこまでの水準を叩き出している企業は少ないということが分かります。

また、就職四季報総合版には“男女別の”平均勤続年数、平均年齢も掲載されています。 いずれも有価証券報告書では公開されていない情報なので、参考になるでしょう。

以上。
お疲れ様でした。

就職活動に関する情報は錯綜していますので、こうして実際のデータを確認することが大事だと思います。
就職四季報総合版は、就職活動中の大学生だけでなく、進路選択に悩む高校生にもぜひ読んでいただきたい書籍です。『四季報』をあなたの就職活動・進路選択に役立ててください。

1恐らくは、就職率や就職先を混同しての質問だと思います。
2日本経済新聞社が選定した、日本を代表する225社に含まれる企業のこと。この225社の平均株価が「日経平均株価」と呼ばれる。

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