就活ルールが廃止される!今後の就活はどうすればいい?

このページのまとめ

  • 就活ルールとは、経団連が定めた採用スケジュールに関する決まりのこと
  • 新卒一括採用は日本独自の風習で、欧米では時期を定めない通年採用が普通
  • 新卒一括採用の背景には、企業文化を継承できる、教育コストが削減できるなど企業側のメリットがある
  • 就活ルールの歴史は1928年にさかのぼり、その後ルールの改定が繰り返されてきた
  • 経団連は2018年9月にルール廃止を発表したが、当面は現行の日程で採用活動を行う予定

2018年9月、経団連は従来の「就活ルール」を廃止すると発表しましたが、その後の動きはどうなっているのでしょうか?
今回のコラムでは、そもそも就活ルールとは何かを解説するとともに、現在の政府の方針を紹介。
就活ルールの長い歴史についても辿っていくので、就活を控えた大学生はぜひ内容をご確認ください。

 

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就活ルールって何?

就活ルールとは、日本経済団体連合会(経団連)が採用活動について定める一定の決まりのこと。そもそも経団連とは多数の上場企業が加盟する団体で、経済界及び政界に強い影響力を持っています。
経団連による就活ルールは、新卒一括採用を前提とし、3月に会社説明会などの広報活動が、6月からは面接などの選考活動が解禁され、10月以降に内定が交付されるというもの。それぞれのタイミングは年によって多少ずれますが、企業は就活ルールに沿って採用活動を行うことになっています。

ただ、就活ルールに従うのは経団連に加盟する企業のみで、それ以外の企業は自分たちの裁量で自由に採用活動を進められます。また、加盟企業にしてもルールを破ることへの罰則はありません。
とはいえ、企業全体で採用の足並みを揃えることで、円滑に採用活動を行えるのはメリットであり、大半の企業がルールに従っていた理由はそこにあるといえるでしょう。
就活ルールは企業にとっての1つの目安になっており、3月、6月のタイミングに合わせて採用戦略を練ったり役員のスケジュールを調整したりと、効率的にリソースを使うことにつながっているのです。

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新卒一括採用が続いてきた理由

大学生の就活というと新卒一括採用が当たり前と思う方も多いですが、実は決められた時期に一斉に新卒を採用するのは日本企業に独特な風習だと知っていますか?
日本では、「入社後成長してくれそうだ」というポテンシャルで新卒を採用しますが、欧米ではスキルや専門性を評価し、即戦力となる人材を採用するのが普通。採用は通年を通して行われますし、学生はインターンシップで実力をつけ、そこで築いた人脈などを駆使しつつ企業に就職していきます。大学の授業にも実践的な内容が多く、大学を卒業した時点ですでに専門知識は身に付いているもの、として扱われるのです。
欧米ではポテンシャルは評価されないので、学生のうちから企業でアルバイトをしたり、大学で専門的な知識・技術を身につけたりすることが求められます。さらに、日本では初任給は一律ですが、欧米では入社時のスキルによって初任給に差が出るのが普通です。

ではなぜ日本では、新卒一括採用という独特の採用方式が続いているのでしょうか?
それは、新卒一括採用には企業にとって一定の利点があるからだと考えられます。
例えば、社会人経験のない若い人材は社風に馴染みやすく、新卒を採用することで会社の文化や伝統を継承できるのは企業にとってのメリットです。会社のカラーを受け継いだ人材を幹部候補として1から育成できるのは、新卒採用が行われる理由の1つでしょう。
さらに、大量の人材を一度に入社させると、同時期にまとめて研修を行うことができ、コストカットになります。
採用においても、就活ルールに沿うことで同時期に複数の応募者を選考でき、業務を効率化できる良さがあるでしょう。

また、新卒一括採用は、学生にとっても就活の計画が立てやすい、スキルがなくてもポテンシャルで採用されるといったメリットがあります。留学で海外に行く時も、「3月前までに帰国しよう」というように、就活ルールを目安に予定を決められるでしょう。
ただ、学生は3月からの限られた期間で就職先を決めなければならないため、入社後のミスマッチや短期離職が置きやすいという問題はかねてから指摘されているようです。

 

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就活ルールの変遷

現在まで続く就活ルールの歴史は長く、その始まりは1928年にさかのぼります。そもそも民間企業が大学生の定期採用を始めたのは1917年頃。それから約10年後の1928年に、大手企業と有名企業の間で「入社試験は卒業後」という協定が結ばれました。
しかしその時の協定は中小企業が自由な採用を行ったために機能せず、第二次世界大戦後の1952年に、改めて「就職協定」が結ばれます。就職協定は大学や日本経済団体連合会、文部省、労働省を中心につくられ、新卒採用のスケジュールにおいて一定のルールを示すものでした。
就職協定では内定時期を卒業年次の10月以降とするとしていましたが、罰則のない紳士協定だったことや、好景気による人手不足を背景に、実際には10月前に優秀な学生に内定を出す企業が続出。早い段階から学生と採用の契約を結ぶ「青田買い」という言葉が生まれたのはこの頃です。
そのような状況を受けて就職協定は内容の変更を繰り返しましたが、結局1996年には廃止となってしまいます。
翌年の1997年に、経団連は協定に変わるものとして「新規学卒者の採用選考に関する倫理憲章」を定め、正式な内定交付は大学4年生の10月以降というルールが制定されました。
しかし新たな倫理憲章には内定解禁日以外のルールがなかったために採用活動の早期化は止められず、経団連は2003年に倫理憲章の内容を「大学4年生の4月1日以前の選考活動を行ってはならない」と変更。
さらに、2013年には、学業に専念するため就職活動の期間を短縮すべきという国の方針を受けて、経団連は説明会を3月から、選考を8月から解禁としましたが、翌年には選考開始のタイミングは6月へと変更されます。

このように、就活ルールは何十年にも渡って繰り返し変更されてきた歴史がありますが、経団連は2018年に従来の就活ルールの廃止を発表。
2021年春以降に入社する学生からルールを廃止すべきだとする方針が打ち出されました。

 

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経団連による就活ルール廃止の発表

2018年9月、経団連の中西宏明会長は会社説明会や面接の解禁日を定めた就活ルールを廃止すべきと発表しました。
長年続いてきたルールの廃止案に驚いた人は多かったようですが、廃止案が浮上したのには以下のような理由があります。

ルールはすでに形骸化していた

就活ルールでは大学4年生の6月から面接がスタートしますが、実際にはそれより早く選考を開始する企業が多く、かねてから就活ルールは形骸化しているという批判がありました。
そもそも、外資系やIT企業といった非加盟企業はルールに従う必要はありません。また、加盟企業であっても優秀な学生を獲得するため、インターンなどのイベントで実質的な選考を行うケースがあるのが実態のようです。

通年採用の必要性が高まってきた

先ほども触れたとおり、欧米では時期を定めない「通年採用」が一般的。世界での競争力を高めるためには、日本企業も必要な時に柔軟に人材を採用しなければなりませんし、すでに世界で展開する日本企業では、優秀な外国人学生を時期に関係なく採用しています。

就活ルールの廃止が決まった背景には、以上のような事情があります。
とはいえ、いきなりのルール変更は学生の混乱を招くことから、2022年春以降に入社する学生に対しても、当面は現行の日程が維持される方針です。
今後、就活に関するルールづくりは経団連から政府主導に変わり、将来的には企業に対する新卒一括採用の見直しや通年採用の拡大が促されると予想されます。

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ルールの廃止による影響は?

就活ルールが廃止されて通年採用が一般化したとすると、一体どのような影響があるのでしょうか。
企業と学生それぞれの場合を予想してみました。

企業側

就活ルールが廃止されると、優秀な学生を確保したいと採用活動のタイミングを早める企業が急増すると予想されます。また、採用手法が多様化され、中・長期のインターンやダイレクトリクルーティングが増加する可能性も。売り手市場にあっては付加価値がないと学生に選ばれないため、福利厚生や働きやすい労働環境などのアピールが欠かせなくなるでしょう。
通年採用では常に採用業務を行わなければならず、採用にかかるコストは大きく膨らむものと予想されます。人手の少ない中小企業では、採用担当者が採用業務と他の業務を兼任することが予想され、マンパワーのある大手に優秀な人材をとられる可能性も。中小企業は大企業以上に自社の売りをアピールし、柔軟な採用をしなければならないでしょう。

学生側

就活ルールによるスケジュールがなくなると、学生には自ら積極的に情報収集して就職活動する姿勢が求められます。売り手市場の現在はスケジュール通りに就活をしていれば内定がとれる状況にありますが、企業が独自の採用を行うようになると、キャリア意識の低い学生は就活に乗り遅れ、内定がない状態になりかねません。
ただ、情報収集に熱を入れ過ぎると学業やサークル活動などの学生生活に支障が出る恐れがあり、バランスをとりながら就活する難しさがあるでしょう。
通年採用は学生にとって就職活動が早期化して学業が疎かになる、情報収集が難しくなるというデメリットがありますが、一方では通年採用だからこその恩恵もあります。それは、選べる企業(仕事)の選択肢が広がるということ。従来の就活ルールでは企業は一斉に選考を開始するので、日程がかぶった選考には参加できませんでした。しかし、通年採用では各社の採用のピークがずれる可能性があり、より多くの選考に参加できるチャンスがあるかもしれません。

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今後はどうやって就活すればいいの?

ご説明したとおり、当面は現状の就活ルールが維持されるものの、経団連や政府の方針を受けて今後採用活動の多様化が進むと予想されます。
決まったスケジュールがある今は、「周りが始めたから何となく就活する」「説明会をやっているから行ってみる」という姿勢で就活を始める学生も多いですが、通年採用が普及すると説明会の日程やESの締め切りの日程も積極的に調べなければ情報が入ってきません。
就活ルールというこれまであったレールがなくなった時には、自分で考え積極的に動ける学生が内定を獲得していくようになるでしょう。

就活ルールの廃止時期は現時点では決まっていませんが、ルールの変更に戸惑わないためにも、今のうちから自身のキャリア観をしっかりと定めることが大切です。
学業やサークル活動などに取り組んで多くの経験を積みつつ、自分のやりたいことは何か、それを実現するためには何をすべきなのか、将来のキャリアを考えていきましょう。

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