介護業界の現状と今後の動向について

このページのまとめ

  • 高齢者の数は増え続けるので、需要は安定している
  • 人手不足が課題となっており、海外からの人材を求める対応がとられている
  • 就活の際の情報収集では、専門サイトや自治体の現状報告は押さえておくと良い

本記事の執筆者

丸山耕司(まるやま・こうじ)

30歳からグループホームやデイサービス、介護保険外の高齢者向け賃貸住宅や配食サービス、ショートステイサービスの事業を経営(現在は顧問)。行政書士としてビザ申請や介護事業のコンサルタントとして活躍。

 

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介護業界の業態構造

介護業界は、介護保険法に基づき「介護保険事業」「介護保険外事業」に分かれます。

介護保険事業は、「指定居宅サービス」「地域密着型サービス」「施設サービス」「居宅介護支援」などに分類され、サービスの内容により20種類以上の業態が規定されています。

介護保険外事業には、市町村を中心とする「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」が介護保険法に定められていますが、地域や事業者の特性を活かした介護保険法にはないサービスも数多くあります。サービス内容で簡単に分けると、家に訪問する介護サービス、日中だけ施設に通ってもらう介護サービス、施設に入居してもらう介護サービス、福祉用具の貸与事業、介護の相談や施設の紹介などの支援サービスにおおむね分類できます。

 

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介護業界の収益の仕組み

介護保険事業の収益の大部分は、国民健康保険団体連合会(国保連)に請求する介護給付費で占められています。多くの場合は事業者が提供した介護報酬の9割を国保連に請求し、残りの1割を利用者に請求して収益を得ています。

ただし、国保連に請求できる介護サービスは規定されているものに限りますので、食事を提供した場合の食事代や入居施設の家賃・光熱水費、制度にない独自のサービスなどは全額を利用者に請求します。

利用者を増やし、利用者1人ひとりへのサービス提供量を増やせば収益につながりますが、利用定員があったり、利用者の要介護度によって国保連へ請求できる限度額が決まっているので極端に収益率を上げる事業所があるということはなく、介護保険事業での収益はどの事業に関しても規模と稼働率でだいたい計算ができます。

介護保険外事業でも、総合事業は介護保険事業と同じように介護報酬の大半を市町村が事業者に支払い、残りを利用者が支払うことで事業者が収益を得ています。

それ以外の介護保険制度にないサービスは、サービス業として多種多様にありますが、サービス利用料の全額が利用者の負担となるため低額のサービスとなる傾向が強く、介護保険事業をしている事業者が既存の利用者への追加サービスとして提供している場合が多いです。利用者は要介護や要支援の認定を受けている必要もありません。

 

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介護業界の今後の動向について

介護保険事業の開設には、公募制や総量規制、市町村協議制が設けられており、自治体によって管理されている側面もありますので、事業自体は安定していると言えるかもしれません。
厚生労働省のサイトにある『今後の高齢者人口の見通し』では、高齢者の特に介護が必要になってくる75歳以上の人口は、2055年においても増え続け2,401万人と予想されています。

厚生労働省 - 『今後の高齢者人口の見通しについて

内閣府が出している平成30年版高齢社会白書では2017年10月1日時点で75歳以上の人口は1748万人ですので、介護の需要は今後も増えていくと考えられます。こうした状況のなか介護業界の課題は大きく2つあります。

課題1.人手不足

需要面で安定している事業者が抱える大きな問題として、現場の人手不足があります。
解決策の1つとして、海外から人材を求める下記の対応がとられています。

・経済連携協定(EPA)での外国人介護福祉士候補者の受入れ
・外国人留学生が日本に在留する際の条件として「介護」の創設
・外国人技能実習制度(※)への追加政策

さらに2019年4月施行を予定する在留資格「特定技能」にも注目が集まっていますが、人手不足問題の抜本的な解消には至っていません。
人手不足は今後も深刻な問題となる可能性が高く、労働環境の整備や介護ロボット導入による職員の負担軽減などを考えていく必要があります。

※技能実習制度…技能実習制度は国際貢献のため、開発途上国等の外国人を日本で一定期間(最長5年間)に限り受け入れ、OJTを通じて技能を移転する制度。(平成5年に制度創設)

課題2.政府主導の制度変更

厚労省は2025年を目処に住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を推進していますが、多職種間での連携や機能分化、役割分担の明確化などに課題があります。
また、高齢者の増加とともに膨らむ社会保障費の問題もあります。近年の制度の見直しにおいても報酬額が減額されていますので、今後の減額も十分にありえます。介護給付費に頼らない介護(介護予防)サービスに取り組んでいく必要もあると思います。

 

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介護業界を目指すなら

立行政法人福祉医療機構のサイトでWAM NET(ワムネット)は行政情報や事業者情報、関連ニュースなどが豊富にあり、業界を目指すなら知っておくべきかと思います。また、各自治体は高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画を3年ごとに策定しており、その中に現状報告があるので、地域をしぼって調べる際にはとても有用です。現在は第7期(平成30年~平成32年)となります。

また、介護保険法は2000年に施行されてから3年ごとに制度の見直しが行われてきています。新たなサービスの創設や、介護報酬額の変更、基準や算定の見直しなどはよくあることですので、ネットで調べ物をする際は、その情報が何年の時点でのものなのかはきちんと把握しておきましょう。

介護士の志望動機については「介護士の志望動機の書き方とは?手順や避けるべき内容を例文付きで解説」も参考にしてください。

 

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本記事の監修者

淺田真奈(あさだまな)

大学時代は接客のアルバイトを3つかけもちし、接客コンテストで全店1位になった経験をもつ。新卒では地方創生系の会社に入社をし、スイーツ専門店の立ち上げからマネジメントを経験。その後、レバレジーズへ中途入社。現在はキャリアチケットのアドバイザーとして、学生のキャリア支援で学生満足度年間1位と事業部のベストセールスを受賞し、リーダーとしてメンバーのマネジメントを行っている。

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