通信社業界の現状・今後の動向について

このページのまとめ

  • 通信社は、さまざまなメディアにニュースを配信・販売する組織
  • 基本的な収益は、契約する新聞社・放送局からの負担金や契約料
  • 低迷する新聞業界に対して、ニーズに的確に答えていくことが望まれる

本記事の執筆者

阪清和(さか・きよかず)

エンタメ批評家、インタビュアー、ライター、アナウンサー、ブロガー。通信社記者としてグリコ・森永脅迫事件、朝日新聞阪神支局襲撃事件、山口組抗争、中華航空機墜落事故などを担当後、文化部で18年にわたりエンターテインメント分野を取材し、2500人以上をインタビュー。2014年に独立して雑誌・ウェブなどで映画・演劇・ドラマ・音楽・漫画などに関する記事を執筆している。日本映画ペンクラブ会員、日本記者クラブ個人D会員。

 

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国内外のさまざまなニュースをメディアに配信・販売

通信社は、国内外のあらゆるニュースを収集して配信・販売する組織です。新聞社のように自社で紙媒体を持たず、新聞社や放送局、官公庁などに情報を配信します。

現在では一般市民向けのニュースサイトを持つ通信社もあり、ニュースの伝達先は幅広くなっています。

また情報収集源であることを活かし、ニュース配信以外にもさまざまな事業を展開しています。



共同通信社と時事通信社、さらには国際経済情報に強みを持つロイター通信とブルームバーグといった外資系通信社のほか、手に入りにくいニッチな情報を提供する通信社もあります。旧共産国に特化したラヂオプレスや、放送番組の情報を配信・
販売する東京ニュース通信社などがこれにあたります。

2008年にはツイッター上の事件や事故などの投稿をAIが自動で収集・判別して報道機関に配信する「仮想通信社」としてJX通信社が設立され、2018年までに共同通信社や民放の一部が出資するなど、存在感を強めています。

通信社のはじまりは「同盟通信社」

日本での本格的な通信社の誕生は、1936年の同盟通信社発足までさかのぼります。

同盟通信社は通信社市場を独占し、世界規模で見ても有力な国際通信社に成長したものの、1945年に第二次世界大戦が終結。GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)に指摘されることを予想し、先手を打って解散します。その解散時に、マスメディアを主な取引先とする共同通信社と、官公庁や企業を主な取引先とする時事通信社に分割されました。

加盟しているマスコミの負担金・契約金によって運営される共同通信社

基本的な収益は、契約する新聞社・放送局からの負担金や契約料です。

通信社の組織形態によって収益構造が異なります。

時事通信社は一般企業と同じ「株式会社」であり、契約社との関係もシンプルですが、「一般社団法人(発足時は社団法人)」共同通信社は組合方式の通信社です。

共同通信社という一般社団法人に加盟する「社員社」と呼ばれる新聞社(日本経済新聞社・産経新聞社および全国の地方紙、スポーツ紙など)とNHKが毎年の運営予算を「負担金」を出すことで負担し、それ以外に、全国の民放(一部を除く)や中小新聞社、機関紙などが「契約社」として契約金を支払っています。

朝日新聞社や読売新聞社は国際ニュースなどの限定的な契約にとどまっていますが、取引先の1つであることには変わりはありません。

 

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ニュースの配信だけでなく取材も手がける

通信社はニュース・情報の配信だけでなく、取材も手がけます。

大手新聞社ほど多くないものの、本支社に専門部署に分かれた中核的な記者を多数配置し、国内のすべての県庁所在地にある主要記者クラブに記者を、50前後の海外の総局・支局に支局長・支局員などの記者か通信員を配置。

24時間365日、大手新聞社と同じだけの情報を取材しニュースを執筆しています。そして全国の地方紙やスポーツ紙、NHK・民放にニュースとして配信しています。

また一般社団法人共同通信社は子会社として「株式会社共同通信社」を持っており、ニュース提供以外の情報販売や出版、世論調査、事業などは株式会社が担っています。

JX通信社のような新時代の通信社の登場によって、通信社の定義が今後、拡張される可能性もあります。

 

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長時間労働の解決が通信社の課題

新聞業界と同様、通信社業界は長時間労働の問題の解決が急務です。「働き方改革」としてただ単に残業時間を抑えるだけでは、増え続けるニュース量に対応できません。それぞれの社で事情が異なるため、解決には時間がかかりそうです。

また人口減少や新聞購読者の減少、広告収入の減少などに地方紙も一般紙も大変苦労しています。共同、時事の両通信社はそうした変化に対応するために加盟社、契約社のニーズに的確に応えていくことが今後ますます望まれます。

 

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通信社業界のこれから

今のところ可能性は低いものの、通信社業界に何らかの実力や資金力を持った組織が新規参入してくるという事態が考えられます。ただ、実際に共同通信社と時事通信社を凌駕するような通信社組織を新規参入させるためには、大手紙の連合とさらには外資系メディアなどの参入が必要になると思われ、あまり現実的ではありません。

情報伝達の方法が伝書鳩、電話やFAX、インターネットへと変遷していったように、通信社は技術の進歩に歩調を合わせて発展してきた経緯があります。

通信社の業務そのものはインターネットとの親和性が高いといえるでしょう。なぜなら、1つのニュースに対して本記、サイド、解説、雑観(※)などといったさまざまな記事が紐づけされ、インターネット時代に対応しやすいニュース処理をしているからです。

今後も「正確なニュースを速く伝える」という大原則のもと、技術の進歩をいかに取り込んでいけるかが重要な鍵になるでしょう。


本記…ニュースの事実関係を書いた記事の本体部分
サイド…ニュースの背景やこれまでの経緯、補足的な情報などを書いた記事
解説…ニュースの裏側や今後の展開を読む記事
雑観…事件・事故現場の空気感や恐怖、衝撃が伝わってくるような発生同時の様子や、近所の住民の声、犯人の様子、ものものしい警備などを活写した記事。偉業や快挙を達成した日本人スポーツ選手の様子を伝える記事などもこれにあたる。

 

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業界用語より、通信社をとりまく環境に目を向けよ

警察だけで通じる隠語や経済界、官公庁の独特の言い回しなど、入社後のそれぞれの担当分野の関係者が交わす業界用語はたくさんありますが、それを面接や入社後の仕事に備えて事前に把握しておく必要はまったくありません。

それよりも、通信社を単にその狭い業界の中だけで考えるのではなく、新聞社や放送局なども含めたマスコミ界全体の中で捉えることがとても重要です。通信社は「ニュースの卸売問屋」と言われ、一般大衆の目に触れる新聞紙面やテレビ・ラジオなどの媒体を持っていません。配信先となる新聞社や放送局も含めて見ることが、通信社の存在の意義を捉えることにつながるからです。

 

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本記事の監修者

淺田真奈(あさだまな)

大学時代は接客のアルバイトを3つかけもちし、接客コンテストで全店1位になった経験をもつ。新卒では地方創生系の会社に入社をし、スイーツ専門店の立ち上げからマネジメントを経験。その後、レバレジーズへ中途入社。現在はキャリアチケットのアドバイザーとして、学生のキャリア支援で学生満足度年間1位と事業部のベストセールスを受賞し、リーダーとしてメンバーのマネジメントを行っている。

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