このページのまとめ
- 信用金庫と銀行の違いは根拠となる法律で、事業規模や地域も関わる
- 信用金庫と銀行の業務内容は、基本的に同じである
- 信用金庫は、地域に密着して個人や事業者を助け合うことが目的
- 銀行は信用金庫と違い、営利目的組織のため融資が厳しい傾向にある
- 信用金庫と銀行の違いを理解して、自分に合う方を志望しよう
就活生に人気の金融業ですが、信用金庫と銀行の違いを正しく認識している人は少ないでしょう。法律により、非営利法人と定められている信用金庫と営利目的で株式会社である銀行は、似ているようでさまざまな違いがあります。このコラムでは、信用金庫と銀行の違いや特徴を解説。金融業界へ興味のある就活生は、ぜひ業界研究に役立ててください。
自分の価値観とあった企業に出会える!26卒のスカウト登録はこちら
信用金庫と銀行の相違点
利用者の立場からすると同じような業務をしているように見える信用金庫と銀行ですが、下記のような違いがあります。
根拠となる法律
銀行は「銀行法」、信用金庫は「信用金庫法」が根拠となる法律です。
参照元
e-Gov 法令検索
銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)
信用金庫法(昭和二十六年法律第二百三十八号)
設立の目的
信用金庫法と銀行法のそれぞれで、設立の目的が示されています。
信用金庫法第一章 総則 第一条によると、信用金庫は「国民大衆のために金融の円滑を図り、その貯蓄の増強に資する」ために設立された金融機関です。
一方、銀行法第一章 総則 第一条によると、銀行の設立目的は「国民経済の健全な発展に資する」こととされています。
似たような言い回しですが、信用金庫は国民のため、銀行は経済のために設立されているのです。
組織
信用金庫は「会員の出資による協同組織の非営利法人」と定められているのに対し、銀行は「株式会社組織の営利法人」とされています。信用金庫と銀行の大きな違いは、利益を追求する営利法人か否かという点です。信用金庫の会員については下記で説明します。
事業エリア
銀行は、企業規模にもよりますが全国展開している会社も多くあります。一方、信用金庫は基本的に拠点地域に数箇所の支店を持つのみで、事業を広い地域に展開していないことが多いようです。
信用金庫のみの特徴
信用金庫を語るうえで「会員」という言葉は欠かせません。そのほか、信用金庫のみで挙げられる特徴を紹介します。
会員資格
前述のとおり、信用金庫は会員が出資した非営利法人です。信用金庫法第二章 会員 第十条にて、会員の資格が定義されています。
一 その信用金庫の地区内に住所又は居所を有する者
引用元:信用金庫法(昭和二十六年法律第二百三十八号)
二 その信用金庫の地区内に事業所を有する者
三 その信用金庫の地区内において勤労に従事する者
四 前三号に掲げる者に準ずる者として内閣府令で定める者
事業者の場合は、従業員が300人以下、または資本金が9億円以下であることも定められています。信用金庫が地域に密着して、地域の個人や個人事業主を顧客とするのはこれが理由です。
業務範囲
信用金庫、銀行ともに預金に制限額はありませんが、融資は条件が異なります。銀行では融資に全社共通の条件はなく、融資の基準は各社独自のものです。一方、信用金庫で融資を受けられるのは原則として会員のみとしています。
地域密着
信用金庫の使命は、地域の住民や事業主を支えることです。そのため、信用金庫は地域に貢献する催しに参加することもあります。地域のお祭りや講習会といった個人が参加できるものや、地域で事業を行いたいと考えている人への創業セミナーなどを実施することもあるようです。
銀行業務については「銀行業務とは?主な仕事内容や銀行員に求められる5つのスキルを解説」も参考にしてください。
自分の価値観とあった企業に出会える!26卒のスカウト登録はこちら
信用金庫と銀行の共通点
ここまで、信用金庫と銀行の相違点を紹介してきましたが、共通している点もあります。預金
金融機関において重要な資金源となるのが預金業務です。口座の開設や窓口での引き出し・預け入れなど、顧客の資産管理をお手伝いします。普通預金や定期預金、当座預金などがこれに該当する商品です。貸付
貸付は融資ともいい、顧客にお金を貸し出すことを指します。金融機関にとって、売上につながる業務です。顧客に返済能力があるかを調査のうえ判断し、審査に通れば貸付を行います。貸し付けたお金に利子を付けて返済してもらうことで、売上が発生する仕組みです。為替(かわせ)
為替とは、送金や振込、小切手など現金の移動を伴わない口座間の決済業務のことです。国内取引を扱う「国内為替」と、海外取引を扱う「海外為替」があります。海外為替は、外貨との両替や海外への送金、輸出入関連の取引が対象です。自分の価値観とあった企業に出会える!26卒のスカウト登録はこちら
地域での役割
地域で果たす役割という視点から銀行と信用金庫の違いを確認しましょう。銀行は企業規模によりメガバンクとも呼ばれる「都市銀行」と、比較的地域密着型の業務を行う「地方銀行」に分けて説明します。都市銀行(メガバンク)
都市銀行は、銀行が持つ資金が多く、背景に巨大なネットワークがあることが特徴です。そのため、大企業や富裕層を相手にした大口取引を得意とします。非上場企業の株式上場に向けたコンサルティングなども行うようです。一方、銀行も利益を追求する株式会社であるため、小口取引や小規模事業者への融資は厳しい傾向があります。利益追求のため、景気の良い会社には近づき、景気が悪くなれば遠ざかるという判断をせざるを得ません。個人の利用では、まず全国展開している点がメリットでしょう。銀行窓口やATMが全国どこにでもあるため、転勤や転居の可能性がある人にとっては安心です。ネームバリューや大規模取引先がいるという安心感から個人利用者は集まってきます。そのため、比較的金利は低く設定されていることが多いようです。
資産管理を考える人にとっても、取り扱う商品数の多さから、都市銀行が選ばれやすいと考えられます。
地方銀行
地方銀行とは、都市銀行のように全国展開はせず、信用金庫のように特定の地域に密着して事業を行う銀行のことです。地域内だけでなく、近隣地域にも支店を持っている銀行もあります。都市銀行に比べて、地域への貢献を意識した組織となるため、比較的個人や小口取引にも丁寧な対応が期待できるでしょう。小規模事業者であっても、都市銀行より融資が受けやすい傾向もあり、信用金庫の会員資格を持たない個人事業主には向いています。信用金庫の会員のように、利用の条件がないため地域外の人でも利用可能です。しかし、前述のとおり支店やATMは地域内にあることが多いので、地域外で暮らす人が利用するには不便な面もあるでしょう。法人顧客が事業拡大に伴い地域外に進出する際も、万全のフォローは難しい可能性があります。
地域に根ざした事業を行うため、就職する行員も地元出身である人が多いようです。
信用金庫
特定の地域に密着して、個人や小規模事業者の取引にも対応します。前述のとおり、会員資格を持つ地域内の人しか利用できないため、金利は高めな場合が多いようです。しかし、融資は受けやすく小口取引には向いているでしょう。営利目的でないため、顧客法人の景気が悪いときも寄り添うのが特徴です。新しい事業を立ち上げようとしている人に対する、創業を支援するサービスを提供する信用金庫もあります。
銀行のように大きな利益はなかなか生まれませんが、地域の人とのつながりを大切にできるでしょう。
地方銀行への志望動機については「地方銀行の志望動機を書くコツは?盛り込むべき4つのことを例文付きで解説」も参考にしてください。
自分の価値観とあった企業に出会える!26卒のスカウト登録はこちら
信用金庫や銀行で働くために求められる人物像
信用金庫と銀行の違いや共通点を踏まえて、それぞれで求められる人物像を紹介します。信用金庫
信用金庫は、何よりも地域住民からの信頼が重要です。利用者に寄り添って、地域のために貢献できる人物が向いているといえます。人と話すことが好きな人、世話焼きなタイプの人は適任でしょう。地元出身やその地域にゆかりのあるひとにもおすすめです。銀行
銀行法の定めのとおり、銀行業務の目的は経済にあります。金融や経済、経営に関する知識や興味は必須でしょう。1円たりともミスができない場なので、几帳面で真面目な性格の人が向いています。自分の価値観とあった企業に出会える!26卒のスカウト登録はこちら
信用金庫と銀行、就職するならどっち?
金融機関への就職を考えている就活生にとっては、信用金庫と銀行のどちらを志望するかは迷う点でしょう。働く人の立場で、両者の違いを説明しますので、参考にしてください。転勤の有無
銀行は全国展開しているため、転勤は多くさまざまな地域に行く可能性があります。会社や職種によては転勤を伴わない働き方を選択できる場合もあるようなので、確認してみましょう。一方、信用金庫は事業エリアが限られているため転勤はほぼないと考えられます。転勤があったとしても、サービスエリア内の別の支店へ異動する程度で、転居を伴う転勤は少ないでしょう。この点は、地方銀行でも同じことがいえます。居住地域にこだわりがある人や、同じ場所で腰を据えて働きたい方は、信用金庫や地方銀行を視野に入れてみましょう。
給与
厚生労働省の調査(10人以上の従業員がいる企業の大学・大学院卒の男女統計)によると、銀行業の平均年収は約691万円、信用金庫を含む協同組織金融業(※農業協同組合や労働金庫も含む)の平均年収は約581万円となっています。利益を追求する銀行のほうが、収入は高くなるようです。安定感
平均年齢や勤続年数も気になるところでしょう。厚生労働省の調査(10人以上の従業員がいる企業の大学・大学院卒の男女統計)によると、平均年齢は銀行業で37.2歳、協同組織金融業で38.8歳というデータがあります。勤続年数は、銀行業で12.8年、協同組織金融業で15年です。僅かな差ではありますが、前述のとおり転勤を繰り返す銀行の12年間と、同じ地域で働き続ける信用金庫の15年間、どちらが自分に向いているか考えてみてください。
参照元
e-Stat 政府統計の総合窓口
賃金構造基本統計調査 / 令和元年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業中分類
自分の価値観とあった企業に出会える!26卒のスカウト登録はこちら
本記事の監修者
淺田真奈(あさだまな)
大学時代は接客のアルバイトを3つかけもちし、接客コンテストで全店1位になった経験をもつ。新卒では地方創生系の会社に入社をし、スイーツ専門店の立ち上げからマネジメントを経験。その後、レバレジーズへ中途入社。現在はキャリアチケットのアドバイザーとして、学生のキャリア支援で学生満足度年間1位と事業部のベストセールスを受賞し、リーダーとしてメンバーのマネジメントを行っている。