保険業界とは?扱う商品の特徴と職種を解説

このページのまとめ

  • 保険業界は生命保険と損害保険、そのほかの3つに分類される
  • 生命保険会社では、人の生死に関わる保険商品を販売している
  • 損害保険会社では、自動車保険や自賠責保険などモノにまつわる保険商品を販売している
  • 保険業界では、医療に関する第3分野の保険のニーズが高まっている
  • 保険業界は国内市場が伸び悩み、海外展開が進んでいる

保険業界とは?扱う商品の特徴と職種を解説のイメージ

保険にまつわる仕事をしたいと考えている就活生も多いのではないでしょうか。保険業界は、高額で目に見えない商品を扱う独特な業界です。このコラムでは、保険のしくみや分類、商品の種類を解説しています。保険業界で働く人の仕事内容もご紹介。保険業界のことがよく分からない、詳しく知りたいという人は、参考にしてください。

 

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保険業界とは?

保険業界は、目に見えないうえに高額な「保険」という商品を扱う独特な業界です。取り扱う保険商品によって、第1分野、第2分野、第3分野と分類されます。国内の大手保険会社は、生命保険会社と損害保険会社ですが、外資系生命保険会社やオンライン保険会社も増加中です。

「株式会社」ではなく「相互会社」

多くの一般企業は、「株式会社」という形態をとっています。一方、保険事業を営む会社は「相互会社」という企業形態です。他業種に相互会社は存在しません。相互会社とは、保険の契約者を「社員」とする非営利法人で、会社と社員が相互に助けあうという意味から始まりました。
株式会社でいうところの資本金は、相互会社では「基金」といいます。基金の拠出者は、ほかの企業や機関投資家などです。この基金は一定期間に償却(返金)する必要があり、相互会社は基金償却積立金として積み立てなければなりません。これは、保険業法で定められています。
会社に利益が発生したときは、株式会社なら利益は株主に配当金として還元しなければいけません。一方、相互会社では余剰金として社員(契約者)に還元することになっています。
現在は保険業法が改正され、株式会社でも保険事業を営むとが可能になりました。

参照元
e-Gov法令検索 平成七年法律第百五号 保険業法
第二編 保険会社等 第二章 保険業を営む株式会社及び相互会社 第二節 相互会社 第五款 相互会社の計算等 第五十五条の四 第四目 基金償却積立金及び損失てん補準備金

第1分野:生命保険

第1分野といわれる生命保険は、人の生死を基準に保険金の支払いが決まる保険です。一定額の保険金の支払いを条件に、保険料を納付します。
以前は生命保険会社しか販売が認められていませんでしたが、現在は子会社化することで損害保険会社でも生命保険を扱うことが可能になりました。

第2分野:損害保険

第2分野は、基本的にモノに対する保険です。保険料を納めていれば、発生した損失額を保障してもらえます。
損害保険も、損害保険会社の専売商品でしたが、生命保険会社の子会社が販売できるようになりました。

第3分野:医療保険、介護保険、がん保険

第1分野、第2分野に属さない保険が第3分野の保険です。病気の治療費をはじめ、介護が必要になったときの費用や入院期間中の収入を支える保険など、ニーズは多様化しています。

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保険業界が取り扱う商品

保険業界が取り扱う商品を具体的に紹介します。

生命保険

前述のとおり、人の生死に関わる保険です。

死亡保険

被保険者が死亡した際に、保険によって遺族などの受取人に保険金が支払われます。死亡だけでなく、所定の高度障害状態になったときも保険金支払の対象とする商品もあるようです。
終身保険では、保険料払込期間中に保険料を支払います。保険料払込期間が終わったあとも保障が一生涯続く保険です。一方、定期保険は数年ごとに更新期間が定められており、その期間内に死亡や高度障害状態にならなければ保険金の支払いはありません。

生存給付保障

死亡後始めて恩恵を受けられる死亡保険と異なり、生存中にも保険のメリットを享受できるタイプの生命保険を生存給付保障といいます。入院費用を保障するもの、介護に関する保険などが代表的です。がん、心筋梗塞、脳卒中の3大疾病や、それに高血圧性疾患、糖尿病、肝硬変、慢性腎不全の4つを加えた7大疾病の確定診断で保険金が支払われるタイプの商品も増えています。

資産形成

保険は、生きる上での金銭面のリスクを回避する目的の商品もあります。
自身の学費を、親が積み立ててきた学資保険でまかなったという学生も多いのではないでしょうか。学資保険(こども保険)では、卒入学のタイミングにお祝い金が支払われることもあります。保険金の支払いタイミングは、こどもの死亡時、養育する親などが死亡したときなどにです。
年金保険商品では、iDecoと称される個人型確定拠出年金があります。国民年金や厚生年金とは別に、民間の保険会社を利用して、個人で老後の資金を用意するために利用されています。

損害保険

モノの保障をする損害保険の種類は多岐にわたります。

自動車保険

自動車に関わる保険として、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)と自動車保険があげられます。自動車損害賠償保障法により加入が強制されている自賠責保険に加え、多くのドライバーが任意で自動車保険に加入しるようです。自動車保険は、契約されている損害保険の内、約半数を占めています。
自動車保険は、主に自動車による交通事故に関する損害を保障する商品です。搭乗者がケガをしたときの治療費、他者にケガをさせてしまったときの賠償金、破損した車の修理費などを保障します。最近は、事故に遭ったときに弁護士を雇う費用まで保障できる商品や、ドライブレコーダーつきの商品など、ニーズにあわせて幅が広がっているようです。

参照元
e-Gov法令検索 昭和三十年法律第九十七号 自動車損害賠償保障法
第三章 自動車損害賠償責任保険及び自動車損害賠償責任共済 第一節 自動車損害賠償責任保険契約又は字づ者損害賠償責任共済契約の締結強制 第五条

火災保険

民法では、故意または過失により他人の利益を侵害した場合、その損害を賠償する責任を負うことが定められていますが、失火責任法の定めにより、火災による被害は例外的に自己責任です。そのため、火災保険への加入が推奨されています。持ち家の住宅ローンを組む際も、火災保険への加入を条件としている金融機関も多いようです。
また、地震による住宅の被害が発生した際に保障してくれる地震保険は、火災保険に付帯する形でしか契約できないことが地震に関する法律により定められています。
そのほか、火災保険には津波などの水災や盗難の被害に遭った場合の保障も特約として付帯可能です。災害の多い日本では、需要が高い商品であるといえます。

参照元
e-Gov法令検索
明治二十九年法律第八十九号 民法「第三編 債権 第五章 不法行為 第七百九条」
明治三十二年法律第四十号(失火ノ責任ニ関スル法律)
昭和四十一年法律第七十三号 地震保険に関する法律「第二条 定義」

傷害保険

日常でのケガなどに備えた保険商品で、近年加入の義務化が進んでいる自転車保険もこれに分類されます。ほかの保険商品に比べて、保険料が比較的安価な商品です。

旅行保険

海外旅行や国内旅行での万一の場合に備え、旅行期間中のみ加入する短期間の保険です。旅行中の死亡やケガ、盗難被害を保障します。台風などの影響で、飛行機が欠航になったときの臨時の宿泊代も保障対象です。旅行代理店や空港でも加入できます。

医療・介護保険

損害保険会社でも、医療や介護にまつわる保障を売りにした保険商品も販売しています。事故により通院・入院や手術が必要になったときの費用などを保障する保険です。

個人賠償責任保険

被保険者やその家族が、事故により他人にケガを負わせたり他人のモノを壊したりした場合、その損害を保障する保険です。多くは、自動車保険や火災保険の特約として契約しる商品です。たとえば、意図的でなく電車を止めてしまったら、多額の賠償金が発生してしまいます。そのような賠償金にも保険が適用されるため、加入する人は多い保険です。

 

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保険業界の職種

生命保険、損害保険で共通している保険業界の職種を、大きく6つにわけて紹介します。

個人営業・リテール部門

保険業界で働く人の中で学生にも身近な職種は、個人を相手にした営業職です。会社によって、リテールなどと呼ぶこともあります。全国各地の保険代理店に所属し、近隣地域に住む個人を顧客に保険を販売する仕事です。ときには既存顧客の保険の見直しをして、新たな保険商品に加入してもらうよう営業をすることもあるでしょう。
顧客一人一人に寄り添った対応が求められるため、人と接するのが好きな人に向いているといえます。保険商品はメーカーのように競合他社と大きな違いがありません。そのため、自社と契約してもらえるかどうかは営業の努力次第でもあるでしょう。

法人営業・ホールセール部門

法人営業は、その名のとおり企業や官公庁などの法人を顧客とする営業職です。工場を伴う企業であれば、工場の火災保険や工事時のリスクを保障する保険、賠償責任保険が必要になります。各企業のニーズにあわせて、最適な保険プランを提案するコンサルティング力や総合力が必要です。
ときには、事故発生のリスクを下げるための助言をするなど、顧客企業が安全安心に事業を運営できる手助けを行います。
自動車保険の場合は、自動車販売店やディーラーを顧客として、自動車販売と同時に自社の自動車保険へ加入してもらうようサポートすることが仕事です。

資産運用部門

保険会社は顧客から預かった保険料を運用し、運用利益を上げる必要があります。企業への投資や運用結果のポートフォリオを作成することが主業務です。

保険金支払部門

各保険商品に加入している契約者が、保険金支払い条件を満たしたときに、保険料を支払うべき状況であるか審査を行ったり、実際に支払う金額を算出したりする部門です。特に、損害保険では保険内容ごとに部門が分かれている場合もあります。また、損害保険の場合は保険料の支払いだけでなく事故解決サポートも請け負います。

海外事業部門

多くの保険会社は、国内だけでなく海外にも事業を展開しています。海外企業をM&Aすることにより新たなマーケットを開拓することや、日系企業の海外進出を保険の面でサポートすることもあるようです。

システム部門

国内外で運用されている自社のシステムルールを策定します。システム開発会社に近い側面だけでなく、保険加入にまつわるデータの分析といったマーケティングに近い面もあるでしょう。

商品開発部門

現在販売している保険商品やユーザーのニーズについて分析を行い、新たな保険商品を開発します。

 

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保険業界でよく使われる業界用語

ここで、保険業界では必須の業界用語の意味を簡単に説明します。業界研究や企業研究を円滑に進めるためにも、専門的な言葉は理解しておきましょう。

契約者:保険会社と保険契約を結び、契約上の権利と義務を持つ人のこと
主契約:保険の契約内容のこと
特約:主契約の保証内容をさらに充実させるために付加する、特別な約束のこと
被保険者:保険の対象となる、保険を掛けられている人
給付金:被保険者が契約時に締結した状態に該当したとき、保険会社から支払われるお金のこと
保険金:保険会社が契約者に支払う保障金額のこと
保険料:契約者が保険会社に支払う金額のこと

 

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保険会社で収益が発生する仕組み

保険会社は、ただ契約者から保険料を徴収して何かあった人にお金を給付しているわけではありません。保険会社の事業では、下記で説明する3つの「利益」が発生しています。

死差益(しさえき)

何歳の人は何人くらい亡くなるかを、過去の統計に基づいて求めた「予定死亡率」という数値があります。適切な保険料を算出するために用いられている値です。しかし、この予定死亡率は実際よりも高めに設定してあるため、契約者が納めた保険料は保険会社が支払う保険金よりも多くなります。この差が、死差益です。危険差益ともいいます。

費差益(ひさえき)

会社の運営に必要な経費における予定と実際の差額が費差益です。事業費には、営業活動費や広告宣伝費、人件費などが含まれています。予定事業率とは、予定の費用を算出する値です。

利差益(りさえき)

保険会社は、契約者から預かったお金を運用しています。利差益とは、想定した運用利益と実際の運用利益の差額をさす言葉です。運用利益の総定額は、予定利率により算出されます。

 

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保険業界の課題と将来像

業界研究において、業界の将来像を考えることは重要です。今の保険業界が抱える課題と、今後について説明します。

国内新規開拓が難化、海外進出へ

日本国内では少子高齢化が進んでおり、生産労働人口の割合が減ってきています。したがって、生命保険に加入する層が減少し、国内での保険需要が増えなくなってきているようです。また、自動車保有台数も減少しており、損害保険でも国内市場は伸び悩んでいます。
そのため、各社は新興国など保険加入率の低い国へ事業を展開しはじめました。今後は、海外を視野に入れた活躍ができる人材が望まれていくでしょう。

販売チャネルの多様化

保険の契約といえば、各社の代理店に来店するか、営業担当者が顧客の自宅などに訪問する形が一般的でした。しかし、近年は来店型保険ショップの普及やインターネットで申込が完結する保険契約も増えており、販売チャネルは多様化しています。直接保険会社の社員が説明しなくても契約が入るようになっているようです。より分かりやすい商品内容と、さまざまな販売形態に対応できる柔軟さが重要といえるでしょう。

新商品の開発

少子高齢化や長寿化の流れで、死後に保険金が受け取れる生命保険よりも、生前に給付を受けられる医療保険や介護保険のニーズが増えているようです。つまり、第1分野よりも第3分野の保険が主力化してきていて、保険は「生きるための商品」に変わりつつあります。時代のニーズを読み取り、最適な保険商品を開発していくことが求められているといえるでしょう。

 

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本記事の監修者

淺田真奈(あさだまな)

大学時代は接客のアルバイトを3つかけもちし、接客コンテストで全店1位になった経験をもつ。新卒では地方創生系の会社に入社をし、スイーツ専門店の立ち上げからマネジメントを経験。その後、レバレジーズへ中途入社。現在はキャリアチケットのアドバイザーとして、学生のキャリア支援で学生満足度年間1位と事業部のベストセールスを受賞し、リーダーとしてメンバーのマネジメントを行っている。

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