このページのまとめ
- 造船業界とは、船舶を建造する産業全般を指す
- 日本の造船業界は、世界のマーケットにおいて3位のシェアを誇る
- 造船業界の市場規模は中長期的に見て拡大傾向にあるが、二酸化炭素排出量の削減が課題
- 造船業界の主な職種は、「営業」「設計」「研究開発」「製造」「資材調達」など
- スケールの大きな仕事であることや、安定的に働きやすいことが魅力
日常生活にあまり馴染みがない造船業界。「業界で働く自分の姿がイメージできない…」と感じている就活生は多いでしょう。
このコラムでは、造船業界で活躍する職種や、その仕事内容を解説します。また、業界の現状や課題についても触れているので、業界研究の参考にしてみてください。
造船業界志望の方もそうでない方も、業界の魅力を深く知り、就活に役立てましょう。
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造船業界とは
造船業はその名のとおり、船舶を造る産業です。周囲を海に囲まれている日本にとって、船は大切な輸送手段。国際貨物輸送のおよそ9割を占めるため、私たちの生活に必要なものが揃うのは、造船業があればこそともいえるでしょう。
また、船にはコンテナ船だけでなく、旅客船や船艇などほかにもさまざまな用途があり、荷物の運搬や観光、国の防衛など多様な面で活躍しています。そのほか、海の観測や調査、研究などにも欠かすことのできない存在でしょう。
造船業のはじまり
造船業が日本に広まったのは、黒船来航のあった幕末のころです。当時、造船で世界のトップを走っていたイギリスから技術を学び、日本の造船業がスタートしました。船を造るために必要な部品の製造によって、鉄鋼、機械、電機などほかの産業も発展。日本の近代化、工業化に造船業は多大な影響を与えました。
海運業界については「海運業界の仕事とは?ビジネスの特徴や求められるスキルを解説」も参考にしてください。
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造船業界の現状と課題
この項目では、造船業界が置かれている現状と、これからの課題について詳しく説明します。
市場規模は拡大傾向
国土交通省の「造船業の現状と課題」によると、世界の造船市場は、中長期的に拡大傾向にあります。
しかし、2008年に起きたリーマンショックや、2014年の船内騒音規制による駆け込み需要などによって、2016~2017年は大きく低迷しました。国内では、1950~1960年代の高度経済成長に大きく貢献した一大産業でしたが、2000年代に入ってからは中国や韓国に押され気味のようです。
業界全体としては回復傾向にありますが、リーマンショック前の大量発注による影響が長引いていることもあり、需要と供給のバランスが取れていないのが現状といえるでしょう。
世界のマーケットにおいて日本は3位のシェア
日本の造船業は、世界でも第3位のシェアを誇る大きな産業です。中国と韓国に続き、世界の造船業主要3カ国の1つとして大きな役割を果たしています。
先に述べた2カ国と渡り合うため、国内大手企業では、分社化や業務提携などを図る動きが増加。分業による生産コスト削減のほか、大型船や高い燃費性能を搭載した船舶など、高付加価値船舶の開発も行われているようです。
また、造船は規模が大きくなるほど受注量も増え、費用も抑えられます。今後は企業同士の統合も進み、世界での競合優位性を高めようとする動きは加速していくでしょう。
二酸化炭素の排出量削減が課題
多くの船は重油を燃やすことによって動いているため、大量の二酸化炭素を排出しており、環境問題への対応が造船業界にも求められています。二酸化炭素の排出量削減には、技術革新が必要です。
先んじて日本が技術革新を起こせれば、中韓に対抗できる可能性も高まるでしょう。
参照元
国土交通省
造船業の現状と課題
航空業界については「航空業界の現状と今後の見通しは?特徴・職種・仕事内容・就職事情も解説」も参考にしてください。
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造船業界の就労者の内訳と年齢構成
造船市場の現状によると、造船業界の就労者は、2017年の時点で8万1,437人。15年間に渡って、約7~8万人前後と、ほぼ横ばいで推移しています。その内、現場で働く「技能者」は約8割、設計や研究開発を行う「技術者」は約2割です。
下記にそれぞれの就労者数の内訳、年齢構成をまとめましたのでご覧ください。
就労者の内訳
・技能者:6万5,507名(社内工1万9,255名、社外工4万6,252名)
・技術者:1万5,930名
社内工とは、造船所が雇用している方を、社外工とは下請で雇用している方を指します。
年齢構成(社内工)
・~19歳 :6%
・20~29歳:29%
・30~39歳:29%
・40~49歳:18%
・50~59歳:6%
・60歳以上:12%
およそ10年前までは、若手よりも40代以上の年齢層が割合の多くを占めていましたが、近年は50代より20~30代の若手が多く、業界全体で若返りが進んでいます。検討会の設立や産学官の連携体制により、採用活動や人材育成・確保など、政府主導の取り組みが効果を発揮しているようです。
一方で、60代以上の割合も1~2割ほどと、高い技術力のあるベテランを頼りにしている企業の存在も読み取れます。知識とスキルを身に付ければ、長く活躍できる業界ともいえそうです。
参照元
国土交通省 海事局
造船市場の現状 平成29年12月
物流業界については「物流業界とは?楽しいといわれる理由や今後の動向を解説!」も参考にしてください。
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業界平均年齢と給与
令和元年の賃金構造基本統計調査によると、輸送用機械器具製造業で働く方の平均年齢は41.1歳で、勤続年数の平均は15.4年。1つの企業に長く勤める方が多い傾向にあるようです。
また、月収と賞与額の平均を基に計算すると、平均年収は約579万円となりました。
これらの数値は、統計データから「輸送用機械器具製造業(自動車、船舶、航空機、鉄道車両などの製造)」の数値を引用しているため、造船業以外も含みます。あくまで目安程度ですが、参考にしてみてください。
参照元
厚生労働省
賃金構造基本統計調査 / 令和元年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業中分類
※平均年収は「きまって支給する現金給与額」×12+「年間賞与その他特別給与額」で算出
業界ごとの平均年収については「20代の平均年収はいくら?年齢や業界ごとの詳細を紹介」も参考にしてください。
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造船業界の主な4つの職種
この項目では、造船業界の具体的な職種と仕事内容について紹介します。
造船業界は、規模の大きいクライアントに関わる機会も多いため、大きなやりがいを感じられるのが魅力。また、技術職であれば、ものづくりの技術が身に付くのもうれしいポイントです。高い技術力を持っていれば評価されやすく、安定して働きやすいでしょう。
1.営業/マーケティング
営業は、クライアントに対して時代や経済状況に合った船舶を提案し、建造契約をするのが仕事です。マーケティングは、提案の基となる経済状況、資源や製品の輸送状況、エネルギー開発の動向について調査します。
クライアントとなるのは、国内外の海運会社や石油会社、総合商社など。計画中の船舶について情報収集を行い、船種や大きさ、速力など、クライアントの建造予定にフィットするような自社の船舶を提案します。提案に必要な基本計画の策定には、設計部門を中心とした技術者の力も必須。関係部署と調整しながら、クライアントと何度も打ち合わせを行い、契約のために必要な条件と船価(船の値段)を決定します。
時流を見極めながら発想する力や、多様な立場の方とコミュニケーションを取る力が必要な仕事です。
2.設計/研究開発
建造する船に必要な要素を設計図面に落とし込むのが設計の役割です。設計作業を大きく分けると、船全体と根幹となる部分を設計する「基本設計」、船体各部分に必要なパーツや加工方法を設計する「詳細設計」の2つがあります。
設計者は、営業部門が顧客と話し合いながら作成した、基本計画をベースに図面を作成します。作業では2D・3DCADを使用するのが一般的です。
研究開発は、今まで蓄積した経験やデータから、新しい船舶を開発するのが仕事。
特に、近年は燃費性能や環境に配慮した高付加価値船舶の開発に力を注いでいる企業が多いため、力学のほかITや化学、環境分野などの知識も求められる傾向にあります。コンピューターを使った模型テストや実験も主な業務の1つ。電機や機械メーカー、製鉄所などと共同開発・研究をするケースもあるようです。
また、船は、国連組織の国際海事機関(IMO)の国際ルールに適合していなければ実用化はできません。設計・研究開発部門では、逐一、国際ルールの動きや変化を敏感に察知する必要があります。
3.製造/管理
製造は、設計図に基づいて船舶を建造するのが仕事です。
以前と比べると、各製造工程で機械化やロボット化が進んでいます。しかしその一方では、手作業が必要となる工程も。経験を積むことで熟練の技を身に付けていけるのも、この仕事の醍醐味です。高品質な船舶の建造ができるかどうかは、製造部門の技術者にかかっているともいえるでしょう。
管理は、各工程の製造スタッフに指示を出すのが仕事。生産部門の工程については以下のとおりです。
・船体ブロックの建造:船体を構成するブロックに必要なパーツを、鋼板から切り出す
・組み立て:パーツを組み立ててブロックを作る
・ブロック搭載:重機でブロックを組み上げ、船舶を形造る
・塗装:腐食防止、水との摩擦軽減などの効果がある塗料を塗る
・進水:船舶の外形が完成した後、実際に水に浮かべる
・艤装(ぎそう):内装工事、必要な機器などを取り付ける
・試運転/引き渡し:設計どおりの性能で動くかどうかテスト運転し、問題がなければ引き渡す
管理を行う技術者は、計画どおりに建造を進めるための司令塔的な役割を果たしています。
4.資材調達
資材調達は、船の建造に必要な材料を仕入れる業務です。
仕入先の選定や価格交渉、数量管理、検品など、その仕事は多岐に渡ります。社内のみならず、社外の人とも数多くのやり取りが発生するため、コミュニケーション力が重要視される仕事といえるでしょう。
資材調達は船の品質やコストに大きく影響を及ぼすため、重要な業務の一つです。
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本記事の監修者
淺田真奈(あさだまな)
大学時代は接客のアルバイトを3つかけもちし、接客コンテストで全店1位になった経験をもつ。新卒では地方創生系の会社に入社をし、スイーツ専門店の立ち上げからマネジメントを経験。その後、レバレジーズへ中途入社。現在はキャリアチケットのアドバイザーとして、学生のキャリア支援で学生満足度年間1位と事業部のベストセールスを受賞し、リーダーとしてメンバーのマネジメントを行っている。