内定取り消しは違法?新卒が知るべきケースや判例・対処法を解説

このページのまとめ

  • 内定取り消しは正当な理由のない限り違法であり、滅多に起こることではない
  • 内定取り消しが正当な理由とされるのは、「単位不足による卒業不可」「経歴詐称」など
  • 不当な内定取り消しに遭ったら、証拠を揃えて専門機関に相談しよう

「内定を取り消されたらどうしよう…」と不安を感じる就活生は少なくありません。しかし、原則として企業の都合による一方的な取り消しは違法であり、解雇と同等に厳しく制限されています。そのため、実際に発生するケースは稀です。

この記事では、内定取り消しが違法となる基準や認められる正当な理由を、最新の統計や判例とともに解説します。万が一の際の対処法も紹介するので、不安を解消したい方は参考にしてみてください。

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目 次
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内定取り消しとは?内定の概要とともに解説

内定取り消しとは、企業が一度出した採用内定を入社前に一方的に取り消すことです。内定の時点で労働契約が成立しているため、法律上は「解雇」と同様の扱いとなり、客観的に合理的な理由や社会通念上の相当性が求められます。

就活において、実際に内定を取り消されるケースは極めて稀といえるでしょう。企業側の都合のみによる一方的な取り消しは、法律によって厳しく制限されているからです。

ここでは、内定の法的な位置づけや取り消し行為の定義についてまとめました。万が一の事態にも冷静対処できるよう、まずは法律上の基本的な考え方を押さえておきましょう。

内定取り消しとは?内定の概要とともに解説のイメージ

内定とは正式な採用通知を受け取った状態のこと

内定とは、企業から学生へ「内定通知書」などの正式な案内が届き、学生側が「入社承諾書」を提出して意思表示を行った段階を指します。

採用選考における一つの大きな区切りであり、単なる合格通知にとどまるものではありません。法律上においても「労働契約が成立した」とみなされる、非常に重要な意味をもつフェーズです。

「内定とは?内々定との違いや新卒の場合の獲得から入社までの流れを解説」の記事でも内定の意味を解説してるので、あわせてチェックにしてみてください。

企業が内定を出した時点で労働契約は成立している

企業から内定通知を受けた時点で、法律上はすでに労働契約が結ばれた状態になります。具体的には、「始期付解約権留保付労働契約」と呼ばれる、「入社日(始期)が決定している、特別な理由がない限り勝手にはキャンセル(解約)できない契約」です。

つまり、内定通知を受け取った時点で、内定者は「将来その会社で働く労働者」としての権利を得ています。そのため、企業側が「やっぱり採用をやめた」と気まぐれに契約を取り消すことはできない仕組みになっているのです。

内定取り消しは「解雇」と同等に扱われる

内定を出した時点ですでに労働契約が成立しているとみなされるため、内定取り消しは法律上「解雇」と同等の扱いを受けます。そのため、内定が取り消される場合は、「労働契約法第16条」における「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」というルールが適用されるでしょう。

一度成立した契約の破棄には非常に高いハードルが課されているため、正当な理由もないのに容易に取り消される心配はありません。

参照元
e-Gov法令検索
労働契約法

「内々定」の取り消しは原則として違法ではない

「内々定」の取り消しは、「内定」と比べると企業側の自由度が高いとされています。一般的に、内々定は労働契約が成立する前の「内定の予約」のような段階であり、まだ雇用関係が成立していないためです。内定に比べると法的な保護は限定的なので、内々定を得たあとも油断せず、気を引き締めて残りの大学生活を送りましょう。

ただし、内々定であっても自由に取り消せるわけではありません。特に、企業が採用を確約するような言動をとり、学生側がそれを信じて他社の選考を辞退するなど準備を進めていた場合などは、取り消しの理由に妥当性がなければ違法と判断される可能性があります。

就活では、内定が出たあとも「承諾すべき?」「辞退を伝えにくい」などと悩む人もいるでしょう。就活でよくある悩みと解消法については、「就活の悩み20選|悩むのは当然!あるある別の解消法を解説」の記事をご参照ください。

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正当な理由のない内定取り消しは違法

法律で厳しく制限されている以上、企業側としても安易に取り消しを行うことはできません。万が一不当な理由で内定を取り消した場合、企業側はさまざまな社会的・法的なリスクを負うことになるからです。

ここでは、企業が内定取り消しを行う際のリスクや違法性の判断基準、実際の発生頻度について詳しく見ていきましょう。

違法な内定取り消しは企業側もリスクを負う

企業が違法な内定取り消しを行った場合、その企業はペナルティやリスクを負うことになります。主なリスクは以下の3点です。

違法な内定取り消しを行うデメリット

  • 慰謝料や就活再開費用、不支給給与などの損害賠償を請求される
  • SNSなどでの拡散による不買運動や採用不振、業績悪化につながる
  • ハローワークによる指導や、悪質な場合の社名公表が行われる

厚生労働省の「令和8年3月新卒者採用内定取消し等の状況を公表します(p.7)」によると、新卒者の内定を取り消す企業は、あらかじめ公共職業安定所(ハローワーク)に通知しなければなりません。さらに、2年度以上連続や同一年度内に10名以上の取り消しなど、一定の要件に当てはまる場合は企業名が公表されることもあります。

このように、違法な内定取り消しは企業にとって重大なリスクとなるため、多くの企業はこれを避けます。しかし、なかには法的リスクや倫理を顧みず不当な内定取り消しを行うような「ブラック企業」が存在するのも事実です。

トラブルを回避し後悔のない就活を進めるためにも、こうした危険な企業を見極めるコツをあらかじめ押さえておきましょう。ブラック企業の見分け方は、「ブラック企業の見分け方は?危険な会社とホワイト企業を見極めるコツを紹介」の記事をご覧ください。

参照元
厚生労働省
令和8年3月新卒者採用内定取消し等の状況を公表します

内定取り消しには基準となるルールがある

内定取り消しが違法かどうかは、「解雇権濫用法理」と呼ばれる基準に基づいて判断されます。具体的には、「取り消しの理由に客観的な合理性があるか」「その理由に見合った重大さがあり社会通念上相当といえるか」という、2つの観点から判断されます。

内定取り消しには基準となるルールがあるのイメージ

このどちらか一方でも欠けていると判断されれば、その内定取り消しは違法となる可能性が高くなるでしょう。理由自体に一定の合理性があっても、「その程度で内定を取り消すのは重過ぎる」と判断されれば、相当性を欠き、違法となるケースもあります。

新卒採用における内定取り消しは滅多にない

内定取り消しは多くの就活生が心配になるものです。しかし、新卒採用で内定取り消しが発生する確率は、極めて低いため、過度に不安になる必要はありません。

実際、厚生労働省の「令和8年3月新卒者採用内定取消し等の状況を公表します」を見ても、2026年3月に卒業した新卒者のうち、内定取り消しになった人は全国で80人でした。その内、大学生等(大学生や短期大学生、専修学校生など)は66人です。

卒業年月 内定取り消しの合計人数 大学生等の人数
2024年3月 47人 31人
2025年3月 34人 15人
2026年3月 80人 66人

参照:厚生労働省「令和8年3月新卒者採用内定取消し等の状況を公表します(p.6)」

2023〜2025年は年間30〜50人程度で推移していたものの、2026年3月卒は80人と前年から増えています。取り消しの理由で最も多かったのは「経営の悪化」で、80人中34人が該当しました。

とはいえ、毎年何十万人もの学生が就活を行っていることを考慮すると、内定取り消しが極めて限定的なケースであることに変わりはないでしょう。

参照元
厚生労働省
令和8年3月新卒者採用内定取消し等の状況を公表します

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内定取り消しになるケースは?5つの正当な理由

一方的な内定取り消しは法律で禁止されているものの、どんな場合でも取り消しが無効になるわけではありません。前述したとおり、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」を備えている場合に限り、例外的に正当な取り消しと判断されます。

正当とみなされる主な理由は、単位不足や不祥事といった「学生側の要因」と、業績悪化をはじめとする「企業側の要因」の2種類に大きく分類できるでしょう。

それぞれの事由について、内定取り消しを認められやすい例と認められにくい例の概要を、一覧にまとめました。

  認められやすい例 認められにくい例
学生側の理由 ・卒業できない
・重大な経歴詐称
・犯罪行為
・業務ができないほどの健康状態の悪化
・結婚
・身元保証人の有無
・軽い健康数値の異常
・選考時に分かっていた事情
企業側の理由 ・整理解雇の4要件を満たすほどの深刻な経営悪化 ・業績予測の甘さ
・単なる売上の減少
・主観的な印象

ここでは、内定取り消しが正当と認められる5つの具体ケースについて、それぞれの背景や注意点を解説します。

1.卒業単位が不足して大学を卒業できない

大学を卒業できないことは、内定取り消しの正当な理由として認められます。新卒採用では基本的に、「△年△月に大学を卒業して入社できること」が前提条件となっているためです。

そのため、単位不足で留年が確定したり、卒業が9月に延期になったりした場合、入社時期に企業が求める学歴要件を満たせなくなります。これは採用の前提条件が崩れることを意味し、学生側の責任(契約不履行)として内定取り消しが有効と判断されやすくなるでしょう。

企業によっては例外的に「秋入社への変更」を認めてくれたり、翌年の採用で一部選考を免除してくれたりといった配慮をしてくれるケースもあります。しかし、基本的には自己責任の世界なので、予定どおり卒業できるよう全力を尽くしましょう。

2.履歴書や面接の内容に嘘が発覚した

選考時に提出した書類や面接での発言に、採否を左右するような重大な虚偽があった場合、内定取り消しの正当な理由になります。これは、経歴詐称が企業との信頼関係を根本から破壊する行為と判断されるためです。

たとえば、以下のような虚偽は、内定取り消しに直結する可能性があります。

虚偽の種類 具体例
出身大学や学部・学科の詐称 実際とは異なる大学名や存在しない学部を記載するなど
取得していない資格の虚偽記載 実際は500点なのに「TOEIC850点」と申告するなど
重大な経歴の隠蔽・改ざん 過去の退学歴・処分歴や犯罪歴を隠して提出する

「自己PRの多少の誇張」程度であれば取り消しにまで至ることは稀ですが、上記のような重大な経歴詐称は別問題です。また、仮にこうした虚偽がバレることなく入社できたとしても、あとから発覚すれば懲戒解雇や手当の返還請求といった重大なペナルティを受けるリスクがあります。企業との信頼関係を失うだけでなく、自身のキャリアにも大きな不利益をもたらすため、選考段階での虚偽申告は絶対に避けましょう。

3.犯罪行為やSNSでの不適切な言動が発覚する

内定期間中に犯罪に関与したり、社会的に不適切な言動を行ったりした場合も、内定取り消しの要因になり得ます。企業のブランドイメージを著しく傷つける行為は、社員としての適格性を欠くと判断されるからです。

昨今では、SNSでの不適切な投稿が炎上し、投稿者や内定先企業に特定されて問題視されるケースが増えています。内定取り消しにつながりやすい素行不良の例は、以下のとおりです。

  • SNSへ不適切な動画(バイトテロなど)を投稿したことによる炎上
  • 他者への誹謗中傷や機密情報の漏洩、公序良俗に反する投稿
  • 飲酒運転や窃盗、傷害事件などによる逮捕
  • 内定者懇親会での過度な迷惑行為、重大なハラスメント

特に、SNSでの発信は自身の意図しないところで情報が拡散されるリスクを常に念頭に置き、細心の注意を払うことが重要です。

4.業務遂行が困難なほど健康状態が悪化する

怪我や病気によって、入社後に予定されていた業務の遂行が不可能になった場合、内定が取り消されることがあります。企業は労働力を提供してもらう対価として給与を支払うため、その提供が物理的に困難な場合には、契約の目的が果たせないと判断されるためです。

ただし、一時的な病気や企業側による業務内容の調整・合理的配慮によって就業が可能なケースであれば、直ちに取り消しが認められるわけではありません。医師の診断に基づき、回復の見込みがなく、長期にわたって働くことが極めて困難であると客観的に証明される必要があります。

5.整理解雇の要件を満たすほど経営が悪化した

学生側の落ち度ではなく、企業の業績悪化によって内定が取り消される事例も存在します。深刻な経営難に陥り、どうしても雇用を維持できない状況などがこれに該当するでしょう。ただし、「売上が少し落ちた」程度の理由で会社側が好きに内定を取り消せるわけではありません。経営悪化を理由とした内定取り消しには、いわゆる「整理解雇の4要件」と呼ばれる高いハードルが存在します

整理解雇の4要件は以下のとおりです。

・人員削減の必要性がある
・内定取り消しを避けるための努力を尽くした
・対象者の選定基準が合理的である
・手続きの妥当性(説明や協議が尽くされている)がある

参照:厚生労働省「知って役立つ労働法~働くときに必要な基礎知識~(p.59)」

実際に倒産寸前などの事由で取り消された場合、会社側に雇用を継続する体力は残っていません。法的な不当性を訴えることも権利ですが、現実的には速やかに気持ちを切り替え、新たな就職先を探すのが得策といえます。

内定取り消し後にとるべき行動については、「無い内定はやばい?陥りやすい人の特徴とすぐできる対策を27卒向けに解説」の記事で解説しているので参考にしてみてください。

参照元
厚生労働省
知って役立つ労働法~働くときに必要な基礎知識~

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内定取り消しが違法となる可能性が高い事例

前述の「正当な理由」に該当しない取り消しは、企業の権利濫用として違法とみなされる可能性が極めて高くなります。自分に非がないケースで不当な扱いを受けないよう、どのような事例が違法にあたるのかを知っておくことが大切です。

ここでは、具体的にどのような内定取り消しが違法と判断されやすいのか、代表的な6つの事例を解説します。

1.身元保証人がいないことを理由とする

身元保証人がいないことを理由とした内定取り消しは、公序良俗や解雇権濫用の観点から違法にあたる可能性があります。「親族がいない」などの事情は、内定者本人の責任や業務遂行能力とは直接関係がないため、「客観的に合理的な理由」とは認められにくいからです。

内定者に身元保証人がいない場合、企業側には保証人代行サービスの利用を案内したり、緊急連絡先の確保のみで入社を認めたりするなど、個別の事情に応じた柔軟な対応が求められます。

「身元保証人は誰に頼めばいい?入社時に必要な理由や困ったときの対処法」の記事では、身元保証人がいない場合の対処法を解説しているので、不安な方はご一読ください。

2.学生結婚など業務に無関係なことを理由とする

プライベートな結婚や既婚であることを理由とした採用内定の取り消しは、業務上の必要性が認められないため違法と判断される可能性が極めて高くなります。結婚や家族形態などのプライベートな選択は、個人の自由や基本的人権に関わる事柄であり、会社が干渉できる領域ではないためです。

業務を問題なく遂行できる状態であるなら、プライベートの生活状況の変化を理由に内定を取り消すことは許されません。婚姻の有無などを理由とした差別的な取り扱いを禁止している「男女雇用機会均等法」にも違反します。

3.健康診断での健康数値の異常のみを理由とする

入社前の健康診断で、「血圧が少し高い」「肝機能の数値が基準値を超えている」などの異常が見つかっただけで内定を取り消すことも違法です。

過去には、HIVへの感染を面接で伝えなかったことを理由に、病院から内定を取り消された男性が訴えを起こしました。2019年9月の判決で、札幌地方裁判所は内定取り消しを違法と判断しています。判決では、業務内容からみて感染の危険性は無視できるほど小さく、感染を告げる義務はないとされました。

医学的に業務が不可能だと証明されない限り、健康数値の異常のみを理由にした内定取り消しは認められないでしょう。

参照元
裁判所
裁判例検索「損害賠償請求事件」

4.企業の主観的・抽象的な判断で正当な理由がない

「なんとなく雰囲気が合わない」「社風に馴染めなさそうだ」といった主観的な印象による内定取り消しも、法的効力をもちません。内定の時点で一度評価を確定させている以上、重大な欠格事由がない限り、企業側の一方的な事情による心変わりは通用しないでしょう。

正当とは認められない内定取り消しの理由としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 当初の期待よりもスキルが低そうだと感じた
  • より優秀な応募者があとから見つかった
  • 印象が以前と変わった

一度成立した労働契約を解消するには、客観的にみても納得できる明確な根拠が必要です。企業側の身勝手な都合や曖昧な基準によって、内定者の法的地位が脅かされることはあってはなりません。

5.選考時に知り得た事情を後出しの理由にする

選考時にすでに知ることができた事情を、あとから取り消しの理由にすることも、違法と判断される可能性が高いといえます。「解雇権濫用法理」の要件の一つである「客観的に合理的な理由があること」を満たすには、内定当時には知り得なかった事実であることが前提となるためです。

たとえば、面接で申告していた持病を、入社直前になって企業側が問題視し、取り消しの理由に挙げるようなケースが該当します。当初は問題ないと判断して内定を出しておきながら、あとから撤回することは企業の都合とみなされ、正当な理由として認められる可能性は極めて低いでしょう。

内定取り消しを告げられた際は、それが選考時に企業側が把握できた内容でなかったか、振り返って確認することが重要です。

6.安易な経営不振や業績予測の甘さを理由とする

「売上が予想より伸びなかった」といった、企業の見通しの甘さや一時的な業績不振を理由とする内定取り消しも、違法となる可能性が高いといえます。経営悪化を理由に内定を取り消せるのは、前述した「整理解雇の4要件」を満たすほど状況が深刻な場合に限られるためです。

厚生労働省「令和8年3月新卒者採用内定取消し等の状況を公表します(p.7)」でも、事業活動の縮小を余儀なくされているとは明らかに認められない状況での内定取り消しを、企業名を公表できるケースの1つに挙げています。人員削減の必要性が客観的に示されていなかったり、役員報酬の削減や希望退職の募集などの回避努力をしていなかったりする場合は、不当な取り消しにあたる可能性があるでしょう。

経営悪化を理由に取り消しを告げられたときは、経営状況を示す資料や、取り消しを避けるための努力の内容について、企業に説明を求めることが大切です。

参照元
厚生労働省
令和8年3月新卒者採用内定取消し等の状況を公表します

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内定取り消しの判例|裁判で争われた2つの事例

内定や内々定の取り消しをめぐっては、過去に多くの裁判で争われてきました。実際の判例を知ることは、どのような行為が違法や不当と判断されるのかを具体的に理解する手掛かりになるでしょう。

ここでは、取り消しの違法性を判断するうえで重要な指針となっている「内定」と「内々定」に関する代表的な2つの判例をご紹介します。

1.大日本印刷事件|内定で労働契約が成立

大日本印刷事件は、新卒者の内定取り消しについて最高裁判所が判断を示した判例です(1979年7月20日判決)。大学の推薦を受けて応募し、内定通知を受けて誓約書も提出していた学生が、卒業直前の2月になって突然内定を取り消されました。

企業側は「陰気な印象で当初から不適格と思っていたが、それを打ち消す材料が出なかった」と主張しました。しかし最高裁は、内定を取り消せるのは、内定当時に知ることができず、知ることも期待できなかった事実を理由とする場合に限られると判断しています。印象は選考の段階で分かっていたことであり、取り消しは解約権の濫用にあたるとされました。

厚生労働省も、内定取り消しの有効性を説明する際にあわせて本判例を引用しています。前述の「選考時に知り得た事情を後出しの理由にする取り消しは違法になりやすい」という考え方は、まさにこの判例が根拠となっているわけです。

参照元
裁判所
裁判例検索「雇用関係確認、貸金支払」
確かめよう労働条件 労働条件に関する総合情報サイト
採用の内定・内々定について、取消や辞退する場合の注意点

2.コーセーアールイー事件|内々定の取り消し

コーセーアールイー事件は、新卒者の内々定の取り消しが争われた裁判です(2011年2月16日判決)。不動産会社から内々定を得ていた学生が、内定通知書の交付予定日のわずか2日前に、景気の悪化を理由として内々定を取り消されました。

裁判所は、この内々定の段階では労働契約は成立していないと判断しました。一方で、企業は取り消しの可能性を認識しながら、直前まで内定通知書の交付の日程調整を進めており、突然の方針変更についても説明していません。こうした対応が信義則に照らして不誠実だとして、企業に慰謝料などの支払いが命じられています。

このように、内々定は内定より法的な保護が弱いものの、企業の対応によっては損害賠償が認められる場合があります。内々定の取り消しについては、「【新卒】内々定取り消しの確率は低い!滅多にない理由や万一の対処法を解説」の記事をご確認ください。

参照元
裁判所
裁判例検索「損害賠償請求控訴事件,同附帯控訴事件(通称 コーセーアールイー採用内定取消)」

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泣き寝入りする前に!内定取り消しされたときの対処法

内定者の権利が法律で守られていても、不誠実な企業から突然の内定取り消し通告を受ける可能性はゼロではありません。その際は、パニックにならずに冷静に行動することが大切です。

ここでは、不当な内定取り消しを受けた際にとるべき具体策を6つのステップで解説します。自分の立場や権利を守るためにも、ポイントを押さえて迅速な行動へつなげましょう。

1.書面やメールで具体的な取消理由の開示を求める

内定取り消しを告げられたら、まずはその理由を客観的な証拠として残すために書面での開示を求めてください。口頭だけの説明では、あとから内容を覆されたり、言った・言わないのトラブルに発展したりするリスクがあるからです。

「労働基準法第22条」によると、労働者から請求があった場合、企業には退職や解雇の理由を記した証明書を遅滞なく交付する義務が定められています。内定取り消しにおいても同様の権利が認められるため、まずは冷静に証明書の交付を求めましょう。

証明書の依頼する際はメールや郵送などの残る形を使い、「内定取り消しの具体的な理由を記した文書の発行をお願いいたします」と誠実かつ明確に伝えるのがポイントです。

参照元
e-Gov法令検索
労働基準法

2.内定通知書ややり取りの履歴など証拠を残す

企業とやり取りしたすべての記録は、法的手段や交渉を行う際の重要な証拠になります。不当な内定取り消しを争うためには、前提として「内定(労働契約)が成立していた事実」を客観的に証明する必要があるため、以下の資料を整理して保管しておきましょう。

保管しておくべき資料チェックリスト

  • 内定通知書や採用内定承諾書(コピーも含む)
  • 内定後の研修案内や入社準備に関するメール
  • 内定取り消しを告げられた際の通話録音やメールの本文

内定通知書や採用内定承諾書がメールで届いた場合は、PDFだけでなく、送信元や日時が分かるメール本文をそのまま保存しておきましょう。これらは、自分自身の立場を守り、主張を裏付ける強力な武器です。

3.提示された条件や補償内容を確認する

企業が内定取り消しを行う際、お詫びとして金銭的な補償やほかグループ企業の紹介などを提示してくるケースがあります。まずは、これらの条件を鵜呑みにせず、自分にとって妥当な内容かどうかを慎重に見極めることが重要です。

提示された条件にその場で即答するのは避けましょう。一度「承諾」の意思を示してしまうと、「内定取り消しに合意した(契約の合意解約)」とみなされ、あとから不当性を訴えることが困難になるリスクがあるからです。

まずは「一度持ち帰って検討します」と伝え、信頼できる家族や専門家に相談する時間を確保しましょう。納得のいかない条件であれば、安易に署名や回答をせず、自分の権利を守るための姿勢を保ってください。

4.同意するか撤回を求めるか意思表明をする

提示された理由の妥当性や提示条件を十分に検討したうえで、自分が今後どうしたいのかを企業へ明確に伝える必要があります。単に返答するだけでなく、「解雇や内定取り消しの不当性を訴え、解決金を含めた法的責任を追及したいのか」あるいは「条件を整えて他社への切り替えを優先するのか」という自身の方向性を確定させましょう。

自分の意志を固めてから伝えることで、企業側との交渉をスムーズに進められます。もし入社を強く希望する場合は「内定取り消しの撤回」を求め、納得したうえで他社へ目を向ける場合は「条件面の最終合意」へと進むことになるでしょう。

今後の方向性が明確になれば、弁護士への相談や就活の再開といった、そのあとの具体的なアクションを迅速に開始できます。

内定が取り消されたあと、就活を再開する方は、「就活とは?いつから何をやる?基本の流れと今からできる準備を解説!」の記事を参考に、改めて就活の流れやスケジュールを確認してみてください。

5.専門機関に相談する

内定先企業と自分1人で対峙するのは精神的にも大きな負担となるため、労働問題の専門家へ相談するのがおすすめです。客観的なアドバイスを受けることで、現状が法的に見てどうなのか、今後どのような対策をとるべきかといった明確な指針を得られるでしょう。

内定取り消しをされた場合に頼れる相談先は、以下のとおりです。

総合労働相談コーナー ・各都道府県の労働局に設置されており、内定取り消しを含む労働問題全般の相談を無料でできる
・企業に対する助言や指導、話し合いによる解決を図る「あっせん」を行う
労働基準監督署 ・労働基準法違反(内定取り消しに伴う解雇予告手当の未払いなど)の疑いがある場合や、企業側への相談窓口として助言や指導を実施する
弁護士 ・法的な違法性を判断したうえで、企業との直接交渉や内定取り消しの撤回要求、損害賠償・慰謝料の請求手続きを代行する

専門機関へ相談するべきか迷ったり、いきなり連絡するのはハードルが高いと感じたりする場合は、大学のキャリアセンターに相談するのも一つの手です。キャリアセンターは、大学生にとって身近な相談相手であり、必要に応じて外部の適切な窓口を案内してくれるでしょう。

6.損害賠償の請求や内定取り消しの撤回を求める

内定取り消しに正当な理由がないと判断される場合、企業に対して慰謝料や損害賠償を請求できる可能性があります。内定を信じて引越し準備を進めていた場合や他社の内定を辞退していた場合などは、具体的な損害が発生しているとみなされるためです。

法的な対抗措置としては、「内定取り消しの撤回」と「不法行為・債務不履行に基づく損害賠償請求」があります。入社を強く望む場合は撤回を求めることになりますが、一度トラブルになった企業へ入社することへの精神的ハードルや職場環境への懸念から、損害賠償や解決金の支払いを求める学生は少なくありません。

ただし、裁判などの法的手段を講じるには相応の時間や費用、精神的パワーを要します。まずは労働問題に詳しい弁護士などの専門家に相談し、得られる補償や期待できる結果と、自分に掛かる負担のバランスを慎重に天秤にかけて判断しましょう。

損害賠償で請求できる3つの項目

内定取り消しが違法と認められた場合、企業に対して請求できる損害賠償や支払いは、主に次の3つに分けられます。

賃金相当額(履行利益の損害) 本来であれば入社日以降に得られるはずだった給与相当分(実際に働いていなくても、会社の都合で働けなかった期間の賃金支払いが命じられるケースがあります)
慰謝料(精神的損害) 内定取り消しによって生じた精神的苦痛に対する賠償金
実際の費用(信頼利益の損害) 内定を信じて行動したことで直接発生した実費(例:入社準備のための引っ越し費用や賃貸の解約違約金など)

どの項目がどの程度認められるかは、内定を取り消された時期や、そのあとの再就職の状況によって個別に判断されます。まずは発生した費用や経緯を整理し、弁護士や労働局などの専門家に相談する際の材料にしておくと良いでしょう。

和解金の相場

内定取り消しのトラブルが裁判外での話し合いで解決する場合、解決金が支払われることが一般的です。この金額は、企業の対応の悪質さ、内定者の精神的苦痛、および発生した実損害の大きさによって変動します。

内定取り消しに限った和解金の相場を示す公的な統計はなく、金額は事案ごとに大きく異なります。たとえば前述のコーセーアールイー事件では、内々定の取り消しについて高裁が認めた額は22万円でした。一方、すでに他社の内定を辞退していた場合など、就職先が決まるまでの期間が長引くと予想される事案では、賃金相当額が加わって金額が大きくなる可能性もあります。

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内定取り消し後に逆転内定を掴む方法

もしも不運に見舞われ、内定が白紙になってしまったとしても、あなたのキャリアがそこで終わるわけではありません。時期に応じた適切な戦略を立てれば、そこから「逆転内定」を勝ち取ることは十分に可能です。

ここでは、内定取り消しに遭ったあと、前を向いて再スタートを切るためのアプローチ方法を紹介します。

秋・冬採用や通年採用を狙う

内定取り消しを受けた時期が秋以降であっても、就職活動の選択肢が完全にゼロになるわけではありません。企業のなかには、内定辞退者の補充や追加募集を目的として、秋・冬採用を実施している企業が一定数存在するからです。

また、年間を通じて時期を定めずに採用を行う「通年採用」を導入する企業も増加傾向にあります。大手企業のグループ会社やベンチャー企業、優良中小企業など、幅広い視野で求人を探すことで、思わぬ好条件の企業に出会えるチャンスを広げられるでしょう。

「内定の取り消しで時期を逃した…」と諦めず、ターゲットを広げて積極的にアプローチすることが逆転内定を引き寄せる第一歩です。

通年採用を実施している企業の特徴は、「通年採用をしているのはどんな企業?特徴や内定獲得のコツを解説」の記事で解説しているので、こちらもあわせてご参照ください。

内定取り消しの事実をポジティブに語る

内定取り消し後に就活を再開する場合、面接で「なぜこの時期に就職活動をしているのですか?」と質問される可能性があります。その際は、ネガティブな印象を与えないよう工夫が必要です。事実を隠すのではなく、その経験から学んだことや成長した点を前向きに伝えましょう。

面接での回答例

なぜこの時期に就職活動をしているのですか?

以前、内定をいただいた企業があったのですが、業績悪化に伴い内定取り消しとなりました。突然のことで戸惑いもありましたが、この経験を通じて企業の成長性や安定性を見極める重要性を学びました。

また、状況を受け入れて前向きに行動する大切さを実感し、現在は気持ちを切り替えて就職活動に臨んでいます。御社の堅実な経営方針と将来性に強く惹かれており、これまでの学びを活かして長期的に貢献したいと考えております。

内定取り消しの理由が企業側の都合である場合は、その事実を客観的に説明し、自分に非がないことを明確にしましょう。内定取り消しを経験したことで、企業選びの視点が変わったり、自分の価値観が明確になったりした場合は、それらの気づきを積極的にアピールしてください。

就職エージェントを活用する

内定取り消し後に1人で就職活動をやり直すのが不安な場合は、就職エージェントのサポートを活用するのがおすすめです。就職エージェントでは、プロのキャリアアドバイザーが状況をヒアリングしたうえで、希望条件にマッチする求人の紹介や、選考対策のバックアップを行ってくれます。

特に、内定取り消しという予期せぬトラブルに見舞われた直後は、面接での内定取り消し理由の伝え方に不安を感じやすいものです。エージェントを利用すれば、企業に好印象を与えるアピール方法や面接での回答案を一緒に考えてもらえるため、自信をもって選考に臨めるでしょう。

精神的な支えを得ながら最短ルートで内定を目指せる点でも、就職エージェントは非常に頼もしい存在です。どのサービスを使うべきかでお悩みの方は、「就活エージェントおすすめ12選!27卒・28卒向けの選び方も解説」をチェックしてみてください。

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内定取り消しに遭うのが怖いと感じている方へ

内定取り消しへの不安を抱えている就活生は決して少なくありません。しかし、内定取り消しは、企業の業績悪化などのやむを得ない事情を除けば、発生することは極めて稀です。大学を無事に卒業し、提出書類などに虚偽がなければ取り消されるリスクは多くないため、過度に怯える必要はないでしょう。

万が一、取り消しに遭った場合でも、そのあとの選択肢や対処法を知っておくことで冷静に対応できます。「改めて就活をやり直したい」「卒業までに納得いく企業から内定が欲しい」とお考えの場合は、キャリアチケット就職エージェントをご利用ください。

キャリアチケット就職エージェントは、就活にお悩みを抱える学生のサポートに特化したサービスです。専属のキャリアアドバイザーが、あなたの不安や希望条件を丁寧にヒアリングし、一人ひとりに合った企業を紹介します。内定取り消しの理由の説明や、志望業界で評価されるコツなどもアドバイスしているので、限られた時間で効率的に内定獲得を目指せるでしょう。

内定後も入社までしっかりサポートするため、「また内定を取り消されたらどうしよう…」と不安な方にもおすすめです。サービスはすべて無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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内定取り消しに関するQ&A

最後に、就活生から寄せられる内定取り消しに関する疑問に、一問一答形式でお答えします。

企業が内定取り消しを行う予兆はありますか?

内定取り消しが行われる前には、以下のような予兆がみられることがあります。

・内定者懇親会が突然中止になる
・事前研修が予告なく中止される
・同期の内定者と比べて、自分にだけ入社手続きの案内が遅れている
・企業の経営不振や業績悪化に関するニュースが報道される

ただし、これらのサインが必ずしも内定取り消しに直結するわけではありません。単なる社内スケジュールの変更や連絡ミス、システムの不具合などの可能性もあります。不安を感じた場合は一人で悩まず、採用担当者に現在の状況を確認してみましょう。

企業はいつまで内定を取り消せる?

法律上、企業が内定を取り消せる期限は定められていません。内定から入社予定日までの「内定期間」中であれば、入社直前に取り消しを告げられることもあり得ます。

ただし、新卒者の内定を取り消す企業は、あらかじめハローワークなどに通知することが定められています。取り消しの時期が入社直前であるほど他社への切り替えは難しくなるため、万が一告げられた場合は、本記事で紹介した対処法を参考に早めに相談窓口を頼りましょう。

入社に必要な書類が間に合わないと内定取り消しになる?

単なる提出遅れだけで直ちに内定が取り消されることは考えにくいでしょう。ただし、留年によって卒業証明書が提出できないケースなどは、採用の前提条件を満たさなくなるため、正当な理由として内定が取り消される可能性があります。

一方で、マイナンバー関係書類や住民票などの書類であれば、あらかじめ遅れる理由と提出見込み日を連絡しておけば、柔軟に対応してもらえるのが一般的です。

とはいえ、期限を守る姿勢は社会人としての信頼に直結します。万が一遅れてしまう場合は放置せず、速やかに連絡しましょう。

承諾期限の延長を依頼すると内定を取り消される?

原則として、承諾期限の延長を相談しただけで内定を取り消されることはありません。企業の採用計画の都合で延長を断られる可能性はありますが、誠実に理由を話し、回答期限を明確に伝えれば、多くの企業は柔軟に対応してくれるでしょう。

仮に、延長を相談したことだけを理由に内定を取り消された場合は、合理的な理由を欠く取り消しとして違法となる可能性もあります。

ただし、あまりに長い延長や不誠実な態度はマイナスな印象を与えかねません。内定承諾期間の延長については、「内定承諾期間は延長できる!目安期間と依頼マナー・例文を解説」をご確認ください。

学生側からの内定取り消しはいつまで可能?

学生側からの内定辞退は、「民法第627条」の規定に基づき、入社日の2週間前までであれば可能です。企業側からの内定取り消しには厳しい制限がありますが、学生側からの辞退の自由は法律で守られています。

ただし、直前の辞退は企業側に多大な迷惑を掛けるため、辞退を決意した時点で1日でも早く、誠実にお詫びの連絡を入れるのが社会人としてのマナーです。内定辞退を伝える際のマナーについて詳しくは、「内定辞退はいつまで?新卒向けに承諾前・承諾後の期限や電話・メールの例文を解説」の記事をご覧ください。

参照元
e-Gov法令検索
民法

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本記事の監修者

淺田真奈(あさだまな)

大学時代は接客のアルバイトを3つかけもちし、接客コンテストで全店1位になった経験をもつ。新卒では地方創生系の会社に入社をし、スイーツ専門店の立ち上げからマネジメントを経験。その後、レバレジーズへ中途入社。現在はキャリアチケットのアドバイザーとして、学生のキャリア支援で学生満足度年間1位と事業部のベストセールスを受賞し、リーダーとしてメンバーのマネジメントを行っている。

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